第3回オフ会 後藤臼杵市長のお話


      2 平成15年11月29日(土)10:00~12:00
○場 所:1 臼杵市ふれあい情報センター
      2 丸毛家屋敷
○講 師:大分県臼杵市 後藤國利市長  
○テーマ:「『臼杵』に夢中の市役所づくり」~なぜ、短期間に 
      市が変わったか~   
○内 容:以下のとおり(文責 山路)

<講話1>
・臼杵市は変わったと自負している。住民に市への信頼感を感じる。
ハードも整備した。7年前に始めた祭りも東九州を代表する祭りに
成長しつつある。住民が中心となって支えるようになった。
 市役所職員もボランティアとして協力している。自主的な参加だ。
・臼杵市役所は変わった。象徴的なのは、挨拶と電話の対応だ。
クレームに対する迅速な対応に象徴されるように行動が格段に早く
なった。職員が精鋭化しているが、全員が精鋭化しているわけでは
ない。1/3はよくやっており、1/3はつきあい程度で1/3は横を向いて
いる。
・デビューしたばかりの俳優は幼く見えても、見られることによって
次第に磨かれていくように、市の職員も市民の目を意識して磨かれ
てくる。
市民の動きについては今ひとつと感じている。
・「市長は市民の回し者」と思っているのでおかしいことは市民にチク
ルこともある。
・私は臼杵に首ったけである。夢を持っている。職員も同じ思いを持
った同志である。自分の夢を実現しようとする「カリスマ職員」が次々
と登場したことが私の自慢である。
・ユニークな採用試験を行っている。つてなどない。一緒に夢を見れる
職員がほしい。カリスマ職員に一緒に「人となり」を見てもらっている。
・自分の得意分野を登録してもらい、それについて作文を提出させる
のが一次試験。実地試験もやるが、そのでき具合が採用を決定する
わけではない。
・自転車が得意で庁舎に持ち込んでも会場まで「ここは自転車に乗る
ところではない」という理由で降りて押してきた人は合格になったが、
汚いままの自転車を持ち込んだ人は採用されなかった。
・同じ「改革」でも「縮める改革」はニセモノだ。形式的で、職員を萎縮
させる。否定的なものに未来を切り開く力はない。実質的で、自由闊
達で、全方位的で、建設的な改革こそホンモノの改革である。
・ニセモノの改革の構図は、前例・先進例・マニュアル等を前提として、
事務局やコンサルタントがまとめた答申を審議会が答申として追認し、
人・モノ・組織の削減や限定的な改革をアリバイ的に行うものだ。
・一方、真の改革の構図としては、「改革の三種の神器」(勇気・イメー
ジ力・ こころざし)を前提として、成功のホウ・レン・ソウ(方向付・連携
協働・総括)によって「実行の三大ポイント」(PLAN・DO・CHECK)を行
い、「3つの壁」(人・モノ、仕組み、こころ)を打ち破ることである。
・大分県の行財政改革委員会のメンバーになっているが、定数の削減
だけを打ち出しているだけでは県民の目からの視点が感じられないと
言った。
・カエルはゆっくりと茹でられると、状況変化を感じない。変化への意識
を敏感にして、変化を感じればすぐに行動しなければならない。何もし
なければ、そのまま茹でられるだけである。大事なのは、自覚して飛び
跳ねることである。行動を起こさないことには状況は変わらない。
・行政改革3点セットを入れ替える必要がある。「シーリング」を「残高シ
ーリング(人・モノ改革)」に、「定数削減」を「しくみ改革」に、「機構改
革」を「意識改革」に変えることである。
・改革三種の神器は、「勇気(ハラ)」「イメージ(夢)」「こころざし(信
念)」である。
・こころざしとは、本当に大切なものを見極め、どんなにつらくとも信念を
まげないことである。英語ではLittle Money(人は金だけのために生きる
に非ず)である。チャップリンの「ライムライト」の訳ではよくSome Money
を「少しの金があればいい」と解するが、少しの金に惑わされてはいけな
い。
・勇気(ハラ)づくりは、くさいものに蓋をしないこと。決断、決行し、人の
批判を甘んじて受けることである。
・本当に大切なものは説明できないものである。
・改革に求められるのは「ホウ・レン・ソウ」であり、現場に求められる「ホ
ウ・レン・ソウ」は「報告・連絡・相談」であり、システムを動かす「ホウ・レ
ン・ソウ」は「方針・連携・総括」である。
・改革は、85点を目指すのが次の改革につながるコツである。完璧主義
は無理が生じる。途中段階での適度な達成感が極めて重要である。
・やったことすべてがうまくいったわけではないが、イチローも3割で褒めら
れている。欲張らずほどほどに、決まりをきつくしすぎず、いいことも言い
すぎてはいけない。
・臼杵市は味噌の産地であり、大きな味噌屋が3つある。そのうちの一つ
が手前みそである。
・ホンモノの改革は、全方位のはずである。中京大学の日比野教授の指
導を受け、ブレイクスルー思考で課題解決に全方位的にあたっている。
・財政改善のため、「予算は余産」ということで余らせるようにしているが、
余っても恩典はない。
・教育長は全国PTA連合会会長をしていた方にお願いして心の教育をし
ている。

<質疑応答・意見交換1>
Q)後藤市長退任後も現状の改革が続けられるか
A)わからない。ただ人材は確実に育っている。期待している。
Q)改革への抵抗は強かったか
A)議会とは専決による市長給与削減の件で最初に対立したが、今はうま
 くやっている。組合は苦手だが、初登庁時職員への挨拶の時間を17時
10分にすると申し入れ、改革に対する理解をしてもらったことがよかった。
 組合は手ごわい反面、大きな力を持っているので一緒に頑張っていきたい。
 味方は増やす必要がある。
Q)自治体を渡り歩くプロ職員への考え方は?
A)まだ時期尚早ではないか。法律環境がそれを許さない。現在いる職員が
 成長することで人材確保できると考えている。
Q)改革を続けていくことで大切なことは?
A)ともかくみんなが楽しくやれるよう、盛り上がる雰囲気が大切だ。また、
  あきらめることなく小さなことを積み重ねることだ。
Q)臼杵市ぐらいの規模の自治体だから改革がやりやすいという声もある
 が、大きな自治体との違いは何か。
A)大きな自治体は人数が多いので優秀な職員がいる反面、組織に安住す
 ることができるが、我々は危機意識が強い。こうした意識を持ちつづける
 ことも重要である。

<講話2>
・戦略と戦術を組み合わせながら改革を進めていく必要がある。
・戦略とは、仕組みを知り、仕掛けを作ることであり、戦術とは仕掛け成功
の作戦のことである。戦略を立てるには空から見ることも大事である。
・仕組みを知るためには、広い知識・豊富な経験・第三者的な冷静な観察
力が重要だが、何よりも理解しようとする意欲が大切である。
・仕掛けづくりの要点は、キーマン・キーポイント・動機づけである。
・戦いに勝つためには味方を増やすしかない。そのポイントとして、1対1の
戦いを制するためには適当な敵を常に持つこと、人望のある味方を増やす
こと、偏った味方を持たないことである。無色透明の敵が一番困る。
・今、「うすきいろのカボス」のことで頭がいっぱいである。青切でない黄色い
カボスを臼杵のまちのまちおこしの起爆剤にしたいと考えている。
・カボスの皮を使ったチョコも「Usukiチョコ(ユー 好き チョコ)として売
り出していきたい。日本一高いもみの木をバレンタインまで飾り付けて、
恋人たちに臼杵を訪れてほしい。

<質疑応答・意見交換2>
Q)市町村合併の認識は?
A)合併しないと市町村はやっていけない。どうせ合併するなら人に相手を
 押し付けられるより一緒になりたいところと引っ付きたい。というのもこれ
 から大変な時期に苦楽を伴にしなければならないからである。
Q)職員への成果主義導入の是非は?
A)民間も含めて成果主義には懐疑的である。成果の測定が難しいためで
 ある。数字に現れなくても組織に貢献している人の存在意義も感じる。
 その人がいるだけで落ち着く職場もある。
Q)抜擢人事はどうか?
A)出世の方に目をやるよりも、仕事に関心を集中してほしいと思っている。
 現に、臼杵市の職員はそんなことをしなくとも仕事に頑張ってくれている。
 人は労働条件のことを考えて仕事をしているわけではない。
Q)市民の役所への評価や意識は変わってきたか?
A)変わってきたと感じている。市職員を揶揄する枕詞がなくなった。市民の
 意識の変化を表す言葉として市役所のことを「市役所の奴らは」から「よう
 やっちょる」になり、「俺たちもやろう」になってきた。
  職員がベストを尽くしていれば市民に自信をもって接することができる。
  感謝の声も聞く。祭りも自主的に開催してもらえるようになった。協働は
 課題である。住民にお任せできる分野があると感じている。
Q)企業再建と自治体再建はどちらが難しいか。また違いはあるか。
A)もちろん自治体再建の方が容易である。企業は売上を確保しなければ
 ならないが、自治体は税金という便利なものがあるので、身の丈で業務を
 やれば続けられる。
  財政再建の要諦は、収入に応じた自治体運営を実現するということでは
 ないか。(たとえば、職員の給料を半分にしてでもやっていけばよい)それ
 にしても、これから5年間で、収入は半分以下になるので、それに合わせる
 対応が必要である。
Q)地域経済の浮揚に実を挙げたか
A)よくわからない。造船業が好調なためあまり苦情をきかない。
Q)市長の人生の節目の中で、市役所改革を志すにあたって影響を与えた
 経験は?
A)私の人生経験の中で2つの事件が行動原理に大きな影響を受けている。
  1つは、中学の時にあまり準備もせずに生徒会の選挙に落ちた時にショ
 ックを受け、悔いが残るようならば、最善を尽くそうと考えるようになったこ
 とである。
  2つ目は、昭和45年頃セメント工場の誘致の話があり、問題意識は持って
 いたが傍観姿勢をとっていたところ、ある方から「あなたはセメント工場が出
 来て起こる問題点を知っていて、また臼杵市民であって何もしない。それで
 いいのですか」と言われて頭をガツンと一撃受けた。その足で本屋に飛び込
 みセメントに関する本を全て買って、反対運動を起こしたことである。
Q)市役所の職員の態度に対する非難についてどう思うか?
A)何といっても態度の悪い職員には、意識の高い職員が一番腹を立ててい
 る。一方で、極端な非難にはくみしない。非難されて当たり前の行動は、職
 員の思い上がり以外の何物でもない。
Q)市民の苦情への対応は?
A)苦情は「処理」してはならない。「対応」しなければならない。苦情対応
 は、市民と市役所が相互理解を進められる好機である。臼杵市の職員は、
 下を向くことなく苦情に立ち向かっている。自分たちに自信を持つ事ができる
  ようになった証左ではないか。

○感想
・「改革の手の内をすべて見せる」という言葉どおり、実際に行ったことをご自
身の口から、また、担当職員を指名して語らせてくれました。
・朴訥として語り口から参加したメンバーの中には「こんな改革ができるタイプ
に見えない」という声もありましたが、実績と信念があるから語り口は立て板に
水ではない方が真実味がわくと思いました。
・HP http://www.jititai.com/ から改革の内容はわかりますが、直接、フェ
イス・ツー・フェイスで聴くことでネットでは伝わらない情熱もいただきました。


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