【成果主義の目的】



成果主義とはなんなのだろうか。この問いを人事部の方に投げかけると、ほ
とんどの場合、返ってくる答えは「賃金に格差をつける」とか、「成果に合わせた
評価や賃金」とか、評価や賃金に関連した答えが多い。多少考えている場合も
「賃金や評価に格差や変動を導入して、インセンティブを与える方法」ぐらいで
ある。
 こうした概念を流通させることになった原因として、マスコミの責任も大きい。
たとえば新聞記事などで成果主義が紹介されるときに、それが「同一企業内
で社員の能力や実績に応じて支給額に差をつけたり、業績に応じて金額を増
減する動き」と紹介されるようなことが多い。そうしたことの結果として、成果主
義という言葉は、評価や処遇制度の変更として考えられがちになる。
 だが、こうした考え方に共通した問題は、賃金に格差を導入するにしても、
賃金や評価を成果に準拠させるにしても、それがなんのためなのかが議論さ
れていないということであろう。
                    (中略)
 戦略と個人の行動を結びつけていくための考え方と方法論として、成果主義
を考えていくことが望ましい。つまり成果主義とは、単に評価や処遇の問題で
はなく、戦略をベースにした期待、成果期待を従業員に対して明確化し、その
期待に従って成果・貢献を上げる人にインセンティブを与え、さらにそうした人
材を戦略的に重要なポストに育成・配置していくための考え方なのである。重
要なのは、戦略やビジョンなどの経営の方向性と個人の貢献を一致させてい
くことであり、そのための方法論が成果主義である。

 (「会社元気は人事がつくる」金井壽宏、守島基博、高橋潔著 
日本経団連出版より)

 ~~~~~~~~~~~~ここまで引用~~~~~~~~~~~~~~

 手段と目的をはき違えるのは、どんな場面でもありがちですが、成果主義に
関してもそのきらいがなきにしもあらずではないでしょうか。
 究めて短絡的に「これまでの年功序列ではなく、働きによって賃金や待遇に
差をつける」とだけしか考えないから、その賛否に関しても先進的に導入した
富士通の後退(実際には後退ではなく見直し)を例に出したりして、オール・オ
ア・ナッシングの意見しか出てこないのでしょう。
 成果主義に関しても本質と目的を見据えた議論をしていきたいと思います。 



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