忘れられないお客さん・7



このお客さんたちは2件目のお店ではなく、私が3件目に働かせてもらったお店のお客さんです。
3件目は銀座の美容院でした。
銀座って・・・・。ちょっと一種独特なんだよね。
普通の美容院と違って、メインがセット、しかもお客さんの99%は銀座のお姉さんたち。
ってことで、営業時間も昼の1時から夜の9時まで。
しかも、実際客が入るのは夕方の4時・5時くらいからなので、実質半分は遊んでる計算になる。
1時に店に入って、掃除して、ゴハン食べてそのあとは各自練習したり、本読んだり、博品館に遊びに行ったり、ちょっと足を伸ばして数寄屋橋の阪急に行ったり、とけっこうやりたい放題でした。

銀座のホステスと、他のエリアのホステスの決定的な違い。
それはやはり、銀座のホステスさんは必ず、髪の毛を毎日美容院でするところにあるのではないでしょうか。(渋谷のキャバクラとかの子なんて絶対そんなことしないでしょ。新宿でも池袋でもそういじゃないのかな?)
新人さんが入ると、ママがその子を連れてきます。
そして、自分のご贔屓の技術者に頼んで帰るんですね。その子には「毎日ここに来てこの○○さんに頼むのよ!いいわね!」と念を押して・・・。
まぁ、毎日のことなので、髪型はそれぞれみんな決まっています。
若い姉さんは大半がカールスタイルでした。(洋服なので・・・。和服の時はまた違ったけど)
しかし、これが初めてみた時の私にはカルチャーショック以外の何者でもなかった。
とにかくでかいんである。仕上がったアタマが・・・。
前髪は10~15センチほども立ち上げられ、カールもこれでもか~!と利かせて逆毛をバリバリ立ててボリュームを出す。まさにライオン丸状態である。
「前髪の高さがプライドの高さ」なんて話も良く聞いたが、これには驚きました。
銀座独特のセットの仕方、というのをここでは学びました。

ここのお姉さん(オバサンももちろんいるけど、そんな呼び方はご法度である。)たちのすごいところは、化粧化け。
正直、慣れるまでは使用前・使用後の区別がつかないくらいにすごかった。
誰だ、これ、きたねーなぁ、などと思っていた人が帰りにはものすっごいゴージャスな銀座の女に変身しているのである。(いや、もともとキレイな人もいっぱいいるけど・・・・)

忘れられないのは80歳に手が届こうかと言うママ。
それでも現役なのである。
毎晩必ずやってきて、角の席に座り、丹念に化粧をする。
驚いたのは、彼女は口紅をアイシャドウ代わりに使うことだった。
濃いピンク色が彼女の目を彩る。
まぁ、暗い店内ではこれくらいしないと化粧がわからないのかもしれない。

また、別のママは決して自分ではシャンプーをしない人だった。
そんなのは美容師の仕事なんだそうだ。
でも、毎日洗わせてくれるわけではないので、当然、臭う。
毎日、前日の髪が乱れたそのままできて、それを強引にブラッシングしてもう一度カーラーを巻いてドライヤーに入れるんだけど・・・。(でも、自分で洗うけど毎日じゃないって人は結構多かった。みんな前日のスプレーとか付いたまま来ちゃってた。)
暖めると店中に異臭が放たれる。
これが姉さん方の香水や化粧品の香りと相成って何とも言えない異常な空間になるのである。まぁ、臭いって慣れるのでしばらくするとそれすら気付かなくなるんだけど、毎日毎日つらかったです。あれは・・・・。



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