10:LA編・悪夢3~暴徒~

10:LA編・悪夢3~暴徒~ 


めざせオレンジカウンティー!!
と気合いを入れ直し、俺はとにかく道を戻った。

手元にあるのは、友人Yが書いてくれた高速に乗る入り口の名前と、
降りる出口の名前とを直線一本でつないである地図のみ。

実はこの時、頭の中に・・・・


思い切って 『帰る』



・・という選択肢も、もちろん浮かんだのだが・・・・
ここで逃げたら末代までの恥と自分に言い聞かせ、俺はゴールを目指した。

諦めないであがく事。
それを教えてくれた新宿警察署のおまわりさんの為にも。(その2参照)

初めて走る異国の地で、地図が無い事がどれ程きつい事か・・・

前アナハイム、右ロングビーチ、左レイクウッド、後コンプトン
なんて標識に書いたって、
何がなんだか~あははははって感じだ。 



さすがにちょっと無謀すぎたな・・・と軽く後悔したが、
正直言って全然遅かった。




とりあえず、来たと思われる道を戻り(それでも一時間位は走った)
やっと俺は元気を取り戻す。


そして、アクセルべた踏みで進む!!
ここからなら一時間弱で到着できるはず!
注意してGoldenWestという標識を見落とさぬようにするだけ!

簡単じゃないか!

そして俺の楽しいドライブも一時間を経過し、そろそろ終焉を迎える・・・


はずなんだけどな~~
そろそろ着くはずなんだけどな~~
どうしたのかな~~
いつまでたってもGoldenWestという名の標識が出てこないな~

なんとなく胸騒ぎがしたものの、俺は正しい道を走っているのだから、
いずれゴールがやってくる。

このまま進めばいいんだ!

そう自分に言い聞かせ、
たまに現れる馬鹿でかいカジノの本当に映画のようなきらびやかな照明やら、
凄まじい数の車がディスプレイされている3Km位の長さの車屋やら、
日本では見る事のできない規模の物を見ながら、
自分の進んでいる道はあっているんだ!と言い聞かせ、
ひたすら我が道を150km/h程で直進する。 




しかしそのまま走る事、なんだかんだで更に1時間経過。
まだ標識は現れない。 



そして・・・
気のせいか車内の気温が上がってきたのを感じる。
冷房が効かなくなってきた・・・・・

おんぼろ車め・・・と、つぶやいたその時・・・

俺は恐ろしい事に気がついてしまったのだ・・・・


まさか、外の気温が上がってる?


もしかして暖かい地域まで来ちゃった?



つまり、アメリカ南部の方まで来ちゃったって事? 


確かにいくら何でもおかしい。

スタート地点から片道二時間で着くと言われたのに、
この高速だけで三時間以上走っているのだ・・・
しかも友人Yの二時間は、
安全運転で二時間であってメーターを振り切るスピードで二時間ではないだろう・・・ 



もしかして、やばいんじゃないか? 



サンタモニカを出発して、はや五時間。
ずっ~と飛ばしてたから、かなりの距離を走ったはずである。

俺は走りながら、GoldeWest以外の地名に興味をもたずに読み流していたのだが
なんせ150キロのスピードで後ろに標識は流れていくのである。
全部英語だし、早くて読んでもわからないから・・・ 


そして減速して注意して標識を読みとった俺は,
またとんでもない事に気がつく!


俺が目にした標識には、次の出口は「カミノリール」と書いてあったのだ!!
ご存知の方もいると思うが、カミノリールとはテキーラの銘柄にもある名前なのである! 



ここってメキシコ?



もしかして、いつのまにか国境を越したのか?

いくらなんでも、それはないにしろ~
地名の感じからいって相当、南に来てしまった事には変わりない。
目に入ってくる単語が全部、英語ではなくメキシコっぽい単語ばかりなのだ!


そんな俺にとどめの一撃。


道の名前がルート405からいつのまにルート5に変わっていたのである!
いつのまに?!
さぁ大変だ!!俺はいったいどこにいて、どこに向かっているんだ?


その時の時刻は22時すぎ・・・やばい地域は十分やばい時間帯である。
これって本当にまずいかもしれない。


とりあえず、高速を降りて、もう一度Yに電話して道を聞こう!
こんどは地名もちゃんとわかるんだし。 

そうだ、喉もカラカラだ。
高速下りて、一番近いガソリンスタンドによって電話をかけよう。
コーラも売ってるだろうし、安全なはずだ!

こうして、俺は一番近い出口(ラコスタ)から高速を下りて、ガソリンスタンドを探す。


すぐに見つかる!
ちょっと中を覗く。
やばそうな人はいない。
メキシカン一人と黒人の男女が大きな声で話をしているだけだ。
三人とも犯罪をしそうには見えない。

無人よりは安全だろうから・・・・
よし、ここのスタンドにしよう。

俺は、黒人の車から少し間をあけて車を止めた。

ここは、世界地図でいうとどの辺にあたり、宿はどっちの方角で、
どの道を行けば帰れるのかすら、その時の俺にはまったくわからなかったのだ。


とにかく電話をしよう。
すぐそばの電話ボックスに行く。

小銭がない。
売店でコーラ買ってくずそう。

さっきまで、仲良しそうに話をしていたカップルと・・・
あれ?メキシコ人がいつのまにか3人に増えているぞ・・・

電話ボックスから彼らの距離まで20~30メートル位。

俺は売店に行く。しかし・・・



あれ?この売店・・・・入り口が・・・ない・・・!!


ん???



ぐるりと正方形の売店を回ってやっと気がついた。
確かにこの売店には入り口がないのだ。
三面は壁。そして、一面は・・・・ 

透明な板をはさんで、こちらと、向こう(中にいる店員)にマイクが出ていて・・


マイクに向かってコーラくれと言う→
下のある引き出しが飛び出てくる→
その中に金を入れる→ 引き出しが閉まる→
向こう側にいる売店のおやじが、引き出しから金を取る→
冷蔵庫からコーラを取り出し、おつりとコーラを引き出しに入れて向こうが閉める→

こちらの引き出しが手前に出てきて、そこからつりとコーラを受け取るシステムなのだ



まさにパチンコ屋の換金所だ。


なんで、
こんなにめんどくさいシステムになっているか?



馬鹿な俺でも、これはすぐにわかった。



















この地域は治安が悪いから、
売店がこんなシステムになっているのだ。






コーラを飲みながら怖い怖いと、
他人事のようにアメリカの治安の悪さについて考えさせられたのであった。



俺は電話して、道を聞いて帰るだけ。そう思い電話に戻ろうとすると・・・

メキシコ人の数が、なぜか5人!!になっている・・・


しかも、仲良く話しているどこではない!



むなぐらをつかみ合っているのだ!



アメリカ人(特に黒人)はとにかくオーバーアクションで、
仲が良いのか悪いのか会話を聞かないと良くわからない事が多いのだ。
だから、はじめは三人が仲良く会話をしていたから安心していたのであるが・・・

こんな治安の悪い所で、黒人2人とメキシコ人5人がむなぐらのつかみ合い・・・



もしかして、
俺はとんでもない場面に
遭遇しているのかも、 という事に
ようやく気が付いたのであった・・・・







俺の不幸はまだまだつづく・・・


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