お水の裏街道

お水の裏街道

売り飛ばした男



どこで知り合ったか忘れたが

当時の私は 悪っぽい男が好きだった。

何やらかしたか しらないけど ある日 呼び出された

まとまった金がいる それ詰めないと 殺される

そう青い顔をして 「どうしよう・・・」

せっぱつまった感じだった。

どうせヤクザが絡んでいるんだろうと思った。

そして「○○・・・俺のために沈んでくれ!」

「必ず 金作ったら迎えに行くから・・・」

この沈むって意味は 売り飛ばすという意味

私を担保に 前借する どうせヤクザに言い含められたんだろう

案の定 いく場所も 置屋も 段取りは出来ていたみたいだ

○○温泉 枕芸者で 有名な花街だった

置屋の 女将さんと 契約書を交わし 300万借りて

順平へ渡した「恩にきる・・・必ず迎えに来るから間馬鹿な事考えるなよ」

馬鹿の事とは逃げるなよって意味だ 

順平が迎えに来ることは 期待していなかった。

このダメな甲斐性なしと これでサヨナラ出来る そう思った

置屋での芸者としての登録に2日かかった。

女将が 「おまんさんなら300万なんてあっというまに返せるよ」

そう言った 結局は芸者は たてまえで 体を売るのが仕事らしい

ほとんどの女は売られてきている そして体売って

返済しているらしい 中には男が迎えに来ると信じて

待ちつづけている女もいた。

慣れるまで女将の家に 住み込みすることになる

逃亡防止の為だろう 置屋で 着物を着せてもらい 

ホテルの宴会へ行く 客たちは 宴会後のことを誘ってくる

当然のように それがここの温泉場の 決まりのように

私は 300万 ポォ~ンと払ってくれる 人を探した。

この日から宴会場で客の物色に目を光らせた

だって細々と毎日何人もの男と寝て 小銭を稼ぐことに抵抗があった

「一発 勝負しよう」そう思っていた

宴会だけ済ませて 花代だけの仕事を2週間過ぎた頃

置屋の坊ちゃんが 東京から休みで帰ってきていた

大学生らしい。 私に興味があるらしい 

利用できるかも・・・そう思った

なかなか 水上げしてくれるような 上客に 巡りあえなかった

でも順平のことは 恨んでもいなかった

興味深々な スリルのある毎日を過ごしていた  

その後 順平から1度電話が入った

そして逢いたいと 今近くまで来ていると言う

お座敷での仕事の後 町外れで待ち合わせた

そしてホテルへ 「元気そうだな・・・」

「とりあえず生きているみたいだ」そう嫌味っぽく答えた

「売れっ子なんだってな女将が言ってたぞ」

「まぁ~ね」 順平が聞きたかったのは そんな事では無い

「毎日いろんな男に抱かれているのか?」そう聞きたいのだ

言葉にしなかったがそう顔に書いてある

私はその事に答えたくなかった

自分は誰とも寝ていないと言いたくなかった

そして後ろから抱きしめてきた 首筋に顔うずめて

なにも言わずに 強く抱きしめている順平

そして抱かれた・・・

なぜか 涙がこぼれる 抱かれながら 枕をぬらした

こんな最低な男に 惚れた私に泣いたのか

その流れる涙を順平は唇で 確かめた なにも言わずに

他の男に抱かれたかもしれない体を順平は

なにかを確かめるかのように 激しく抱いた

それが順平との最後の夜になる

そのことは私だけが知っていた。もう逢う事はない。

次の日女将が 「麗華ちゃん いいお客から指名が入ったよ」

麗華とはお座敷での名前 女将がつけてくれた

不動産屋の社長は一人で来ていた 3度目の指名だった

以前から 見受けしてくれると言っていた

置屋にいくら借金があるのかと 聞かれていた

そしてこの日 朝までいてくれと言われた

「社長 私を500万で買ってくださいますか」

社長は何も言わずに小切手を切って差し出した

「麗華 着物脱いでくれないか」

帯止めを外す私のては震えていた

そしてこの男に囲われる事になる 

置屋へは次の日 300万返した。もう自由の身だ

でも直ぐに芸者をやめようと思わなかった

社長は辞めてくれと言ったが お座敷での仕事は楽しかった

もちろん体を売るつもりもなかった

社長が借りてくれたアパート でも彼は滅多に繰ることは無い

それから1ヵ月後 社長は自殺した

かなりの借金があり ノイローゼ気味だったらしい

でも私と居る時には そんなの感じなかった

物静かで おおらかな性格の人だった

あの人が自殺するとは思えなかった ホントに自殺なのか

葬式にはいかなかったが 彼がお骨になったころ

この街をでた たった2ヵ月半の出来事だった


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