お水の裏街道

お水の裏街道


知り合ったのは寒い頃だった

新小岩のバーガーショップで時間つぶしをしていた

退屈だったので携帯でチャットをして遊んでいた

たまにやっていたんだけどここのチャットは殆ど動いていなく

一人ごとのような感じだった

そして彼と初めての会話が「やっと捕まえた!」と入ってきた

前から気になっていたんだけど中々絡めなかったと彼は言っていた

それからチャットで何度も話すようになり

逢った事もないこの男に恋をした。

毎日のようにチャットをしていたバーチャルな恋

日曜日いつものようにチャットをしていたら

突然メールが入り「今・・近くにいるんだけど逢わないか?」

「え?マジで!」心は高鳴ったが逢うのが怖かった

でも逢ってみたい

30分後アタシは家を出た

待ち合わせ場所について直ぐに彼だと解った

想像していた彼そのものだった

そして居酒屋で「はじめまして!ってのも変だなぁ~」と乾杯をして

緊張しすぎて生ビールをグビグビ飲んじゃった

楽しい時間は凄い速度で進むもの

彼は車だったので家の近くまで送ってもらった

それから週に何度かドライブに行くようになる。

そしてチャットで違うHNで入ってきていた彼を発見

アタシも違うHNで入る

彼もアタシだと気づいていると思うが

そして彼が悩んでいるんだと言ってきた

今好きな人がいるんだけど自分には妻がいる

そして妻は妊娠しているんだけど

その彼女には言えないんだ

アタシはきちんと話せば解ってくれるわといった

そのチャットの最中にメールが入った

「ごめんな騙すつもりではなかったんだ」

そんな俺でもまた逢ってくれるかい?そんな内容だった

そんな事いわれても今更アタシの気持ちを止めることは出来ない

切ない恋の始まりだった。

店が終わり家に向かって歩いていると「これから逢えるか?」とメール

「うんいいよ~どこで待ち合わせる?」

家の近くのコンビニで彼の車を待つ

近くまで来ていたらしく5分ほどで彼は来た

「お!着物だったのか?」

「うん~ビックリでしょ」

そしてその日アタシ達は結ばれて

今までにない喜びを覚えることになる。

知らない世界へ導かれる

朝日が差し込む頃

乱れた髪を直し帯をしめホテルをあとにした。

家についてバスタブにつかり彼の余韻を感じる。

それから一日置きにアタシたちの密会がはじまる

朝からのデート9時に家まで迎えに来る

そしてコンビニで買い物をしてホテルへ入る

夕方まで二人の時間を過ごし4時ころ帰る

アタシは彼に溺れた

40歳を目の前にして初めて女になったのかもしれない

彼のことを思い出すだけで

子宮の奥が熱くなるような締め付けられるような感じを覚える


彼が迎えに来てくれる朝は

心も体も潤う

胸に顔をうずめ嫉妬する

この人が愛している女に

彼は甘い言葉を口にする事は無いが

体で話かけてくる

それをアタシは体で感じそれに答える

もうどうしょうもないエロスの渦の中に落ちる

深く落ちていく

もうこの人無しで生きていけない

でもそれは愛ではないと気づいている自分がいる

体だけがその男を求めている

肉体的な欲求にすぎない

その男には妻も子もいる

でも結婚したい対象ではない

お互い・・都合のいい相手だったのだ

欲望のままに

それを満たすために

彼が忙しくなったせいもあって中々逢えなくなった

そして彼のHPをこっそり覗いた

掲示板には女の子ばかりたくさんの書き込みがあり

その中の一人が「またエビフライ食べに連れてって」と書いてあった。

それを見て嫉妬し彼にメールした

「あの子ともあそこに行ったんだ?」

しかし返事はなかった。

もうこの男とは逢わない・・そう思う

色んな女と遊ぼうとアタシは束縛する気なんかない

でも掲示板にそんな事書かせるなんて許せなかった

所詮・・・こんなものなのかと

この程度なんだアタシ・・・

そして月日が流れ忘れかけ頃

「田舎に帰るんだって?」とメールがきた

そのメールだけでアタシの体の中の何かが甦る






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