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2008.01.11
テーマ： 最近、読んだ本を教えて！(24648)
カテゴリ： どきどきミステリー
加納朋子の短編集だ。1999年刊行なので，少し古い。
○ストーリー
大きな会社に勤める一樹は，重役の娘と結婚をし，同期の中で少しだけ昇進をしている。大きな工場のある土地に転勤をし，社宅で暮らし始めたが，同僚にも彼をやっかむ者がおり，一樹はどうしても考えてしまう，「もし，あのまま彼女と結婚をしていたら」と。そんな中，転校で友達のできていなかった一人娘の和子が，不思議な少女・沙羅と遊び始めた。沙羅は一体どこから来て，どこへ去っていくのか？そして和子までが・・・
－－－－－－－－－－－－－－－－－－
いろいろな長さ，いろいろな語り口の短編が10編収められている。どの作品も大なり小なり謎があるが，超自然的な現象が起きる作品と，現実の中に留まる作品が混ざっている。最初は混乱したが，読んでいて「この状況ってどうやって説明されるんだろう？合理的に，それとも別のロジックで？」と迷うというのもなかなか面白い経験だ。
そういう意味で興味深かったのが「天使の都」だ。主人公以外の目には映らない少女の謎とは・・・という展開で，なかなか楽しめた。
ただし，全体に詰めが甘いという印象が強い作品集だ。
－－－－－－－－－－－－－－－－－－
この中で，表題の作品は，講談社ミステリーランドに収められた「ぐるぐる猿と歌う鳥」とよく似た設定，背景の作品だ。繊細な「沙羅は」の世界と，やや乱暴だが前向きな「ぐるぐる猿」の世界では，だいぶ雰囲気が違い，それぞれの結末を読み比べることで加納朋子のスタンスの違いが明確になる。
各編について簡単に述べる。
「黒いベールの貴婦人」：入院している子どもが死んでしまったことで，廃ビルとなってしまた病院を僕は訪れる。そこであった少年と少女とは・・・やや安易だが，エンディングに救われる作品だ。
「エンジェル・ムーン」：伯父は，亡くした妻が少女の頃に通ったという喫茶店を再現する。ある日，そこを訪れた少女は・・・甘いけど，いい雰囲気だ。
「フリージング・サマー」：いとこがアメリカで暮らす間，彼女の部屋を借りた私のもとに，一羽のハトがたどり着く・・・うーん，甘すぎる。
「天使の都」：夫が単身赴任をしているタイを訪れた麻里子は，亡くした娘とよく似た年頃の少女を見るのだが，この少女は彼女以外の目には映らないらしい。果たしてその真相は・・・これも甘いけど，ちょっとドキッとするあたりがいい。
「海を見に行く日」：女が小説を書くために逗留したのは小さな漁港だった。その優しい町で，彼女が経験したのは・・・ユーモア小説風だが，最後に一ひねりが効いている。
「橘の宿」：昔々男が山中で一夜の宿を借りたところ，そこには美しい女が暮らしていた。・・・昔語りのように，ぷつんと終わるのがいい。
「花盗人」：祖母が大切にしている庭は花がいつも咲いている。たまには花が盗まれる時もあったが，祖母は気にしなかった。ある時，逆に花が増えていたのだが・・・ちょっとシニカル。
「商店街の夜」：活気のない古い商店街のシャッターに，男が絵を書き始めた。やがて出来上がった林の風景から，小さな奇跡が起き始める。・・・ありきたりなんだけど，なかなか楽しい作品だ。
「オレンジの半分」：双子の妹である私が，紹介してもらった男性との待ち合わせに行ってみると，その人は私とそっくりの女性と歩いていた。・・・うーん，どこへ行こうとしているのだろうか？ドロドロかと思えば・・・
「沙羅は和子の名を呼ぶ」：ストーリー紹介をした作品。この作品でも”失われた少女”がモチーフとなっている。
○ストーリー
大きな会社に勤める一樹は，重役の娘と結婚をし，同期の中で少しだけ昇進をしている。大きな工場のある土地に転勤をし，社宅で暮らし始めたが，同僚にも彼をやっかむ者がおり，一樹はどうしても考えてしまう，「もし，あのまま彼女と結婚をしていたら」と。そんな中，転校で友達のできていなかった一人娘の和子が，不思議な少女・沙羅と遊び始めた。沙羅は一体どこから来て，どこへ去っていくのか？そして和子までが・・・
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いろいろな長さ，いろいろな語り口の短編が10編収められている。どの作品も大なり小なり謎があるが，超自然的な現象が起きる作品と，現実の中に留まる作品が混ざっている。最初は混乱したが，読んでいて「この状況ってどうやって説明されるんだろう？合理的に，それとも別のロジックで？」と迷うというのもなかなか面白い経験だ。
そういう意味で興味深かったのが「天使の都」だ。主人公以外の目には映らない少女の謎とは・・・という展開で，なかなか楽しめた。
ただし，全体に詰めが甘いという印象が強い作品集だ。
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この中で，表題の作品は，講談社ミステリーランドに収められた「ぐるぐる猿と歌う鳥」とよく似た設定，背景の作品だ。繊細な「沙羅は」の世界と，やや乱暴だが前向きな「ぐるぐる猿」の世界では，だいぶ雰囲気が違い，それぞれの結末を読み比べることで加納朋子のスタンスの違いが明確になる。
各編について簡単に述べる。
「黒いベールの貴婦人」：入院している子どもが死んでしまったことで，廃ビルとなってしまた病院を僕は訪れる。そこであった少年と少女とは・・・やや安易だが，エンディングに救われる作品だ。
「エンジェル・ムーン」：伯父は，亡くした妻が少女の頃に通ったという喫茶店を再現する。ある日，そこを訪れた少女は・・・甘いけど，いい雰囲気だ。
「フリージング・サマー」：いとこがアメリカで暮らす間，彼女の部屋を借りた私のもとに，一羽のハトがたどり着く・・・うーん，甘すぎる。
「天使の都」：夫が単身赴任をしているタイを訪れた麻里子は，亡くした娘とよく似た年頃の少女を見るのだが，この少女は彼女以外の目には映らないらしい。果たしてその真相は・・・これも甘いけど，ちょっとドキッとするあたりがいい。
「海を見に行く日」：女が小説を書くために逗留したのは小さな漁港だった。その優しい町で，彼女が経験したのは・・・ユーモア小説風だが，最後に一ひねりが効いている。
「橘の宿」：昔々男が山中で一夜の宿を借りたところ，そこには美しい女が暮らしていた。・・・昔語りのように，ぷつんと終わるのがいい。
「花盗人」：祖母が大切にしている庭は花がいつも咲いている。たまには花が盗まれる時もあったが，祖母は気にしなかった。ある時，逆に花が増えていたのだが・・・ちょっとシニカル。
「商店街の夜」：活気のない古い商店街のシャッターに，男が絵を書き始めた。やがて出来上がった林の風景から，小さな奇跡が起き始める。・・・ありきたりなんだけど，なかなか楽しい作品だ。
「オレンジの半分」：双子の妹である私が，紹介してもらった男性との待ち合わせに行ってみると，その人は私とそっくりの女性と歩いていた。・・・うーん，どこへ行こうとしているのだろうか？ドロドロかと思えば・・・
「沙羅は和子の名を呼ぶ」：ストーリー紹介をした作品。この作品でも”失われた少女”がモチーフとなっている。
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