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2011.02.04
テーマ： 最近、読んだ本を教えて！(24648)
カテゴリ： がちがちハードボイルド
逢坂剛が得意とするスペインを舞台にした活劇サスペンスの短編集を読んだ。
○ストーリー
ギター修行のためにスペインで暮らしている柏木は，列車爆発事故に巻き込まれ，サント・ドミンゴ病院に入院をする。だがそこには国会占拠を行いクーデターを起こそうとした男も移送されていた。その男を利用しようとする者，亡き者にしようとする者。謀略が渦巻く病院で，事件に巻き込まれた柏木の運命は？
－－－－－－－－－－－－
逢坂剛のスペイン冒険譚は，第二次大戦直前の内戦時代を引きずったものが多いが，これは1980年代の作品発表時代の現代を舞台にしたものだ。
もう30年近く前になるわけだが，まあ僕を含め，多くの人にとっても実感のある「現代」だと思う。ところがその頃のスペインの政情不安には驚かせられた。
なにしろフランコ総統後の体制支配を狙って，王党派，労働党，軍部，バスク独立を主張する派閥，極右，極左が争っている。司法機関も，市警察と治安警察が分かれていて信用できないという状況。
いやはや，これが現代のヨーロッパの国のつい最近の姿だったんだ！びっくりだ。この作品は，そうしたスペインの実情を伝えるルポルタージュという意味もあったに違いない。
－－－－－－－－－－－－
短編集なので，逢坂剛の名前を知らしめた作品のようなスケール感はない。一方で，一部の逢坂作品のような過剰なロマンティシズムも無い。どの短編も，無駄が無く小気味が良い。甘みは無いが，シッカリとした味付けの小料理，とでも言った短編たちだ。
デビューして3年程度で，このレベルに達していたとは！さすがに職人芸の作家だ。
－－－－－－－－－－－－
各編について簡単に述べる。
「暗殺者グラナダに死す」：グラナダを訪れた〈わたし〉は，ヒターノ（ジプシー）の親子と知り合いになる。だが〈わたし〉は警察官殺人の容疑で捕まってしまう。ヒターノたちはなぜグラナダに来たのか？そして警察官を殺めたのは誰か？・・・主人公たちのピンチを救うのがなんと？伏線がうまく効いた作品だ。
「コルドバの女豹」：レポーターの〈わたし〉は，コルドバで出会った女性と共に，ある老人を保護する。だが〈わたし〉たちは，その老人だけが知る謎を巡って，極右と極左，そして治安警備隊に追われることとなる。・・・〈わたし〉と堂々と渡り合うマリアが魅力的だ。
「グラン・ピアの陰謀」：日本から来た報道写真家のクニコは，内務大臣との単独インタビューの約束を取り付ける。だがその場所となった理髪店では，危険な罠が待っていた。・・・少し同じパターンが続き過ぎかなあ？クニコと内務大臣の対話は，ひじょうに情報量が多くためになった。結末はちょっと・・・
「サント・ドミンゴの怒り」：ギター修行のためにスペインで暮らしている柏木は，列車爆発事故に巻き込まれ，サント・ドミンゴ病院に入院をする。だがそこには国会占拠を行いクーデターを起こそうとした男も移送されていた。謀略が渦巻く中，柏木の運命は？・・・柏木とガールフレンド，そして治安警備隊の大尉が，いがみ合いながらも協力する状況が面白い。いかにもいかにもだが，うまくまとまっている。
「赤い熱気球」：スペインでは新型と見られる肺炎が流行し，多くの命が失われていた。その病気に疑問をいだいたマドリード大の客員教授の中津は，独自の調査を始める。感染ルートと思われるものにたどり着いた時，彼の前に暗殺者が立ちはだかった。・・・「外交官・黒田康作」か？？？前半の医療サスペンスと後半の熱気球活劇アクションの組合せが面白い。この短編集の主人公にしては頼りない感じでハラハラした。
○ストーリー
ギター修行のためにスペインで暮らしている柏木は，列車爆発事故に巻き込まれ，サント・ドミンゴ病院に入院をする。だがそこには国会占拠を行いクーデターを起こそうとした男も移送されていた。その男を利用しようとする者，亡き者にしようとする者。謀略が渦巻く病院で，事件に巻き込まれた柏木の運命は？
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逢坂剛のスペイン冒険譚は，第二次大戦直前の内戦時代を引きずったものが多いが，これは1980年代の作品発表時代の現代を舞台にしたものだ。
もう30年近く前になるわけだが，まあ僕を含め，多くの人にとっても実感のある「現代」だと思う。ところがその頃のスペインの政情不安には驚かせられた。
なにしろフランコ総統後の体制支配を狙って，王党派，労働党，軍部，バスク独立を主張する派閥，極右，極左が争っている。司法機関も，市警察と治安警察が分かれていて信用できないという状況。
いやはや，これが現代のヨーロッパの国のつい最近の姿だったんだ！びっくりだ。この作品は，そうしたスペインの実情を伝えるルポルタージュという意味もあったに違いない。
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短編集なので，逢坂剛の名前を知らしめた作品のようなスケール感はない。一方で，一部の逢坂作品のような過剰なロマンティシズムも無い。どの短編も，無駄が無く小気味が良い。甘みは無いが，シッカリとした味付けの小料理，とでも言った短編たちだ。
デビューして3年程度で，このレベルに達していたとは！さすがに職人芸の作家だ。
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各編について簡単に述べる。
「暗殺者グラナダに死す」：グラナダを訪れた〈わたし〉は，ヒターノ（ジプシー）の親子と知り合いになる。だが〈わたし〉は警察官殺人の容疑で捕まってしまう。ヒターノたちはなぜグラナダに来たのか？そして警察官を殺めたのは誰か？・・・主人公たちのピンチを救うのがなんと？伏線がうまく効いた作品だ。
「コルドバの女豹」：レポーターの〈わたし〉は，コルドバで出会った女性と共に，ある老人を保護する。だが〈わたし〉たちは，その老人だけが知る謎を巡って，極右と極左，そして治安警備隊に追われることとなる。・・・〈わたし〉と堂々と渡り合うマリアが魅力的だ。
「グラン・ピアの陰謀」：日本から来た報道写真家のクニコは，内務大臣との単独インタビューの約束を取り付ける。だがその場所となった理髪店では，危険な罠が待っていた。・・・少し同じパターンが続き過ぎかなあ？クニコと内務大臣の対話は，ひじょうに情報量が多くためになった。結末はちょっと・・・
「サント・ドミンゴの怒り」：ギター修行のためにスペインで暮らしている柏木は，列車爆発事故に巻き込まれ，サント・ドミンゴ病院に入院をする。だがそこには国会占拠を行いクーデターを起こそうとした男も移送されていた。謀略が渦巻く中，柏木の運命は？・・・柏木とガールフレンド，そして治安警備隊の大尉が，いがみ合いながらも協力する状況が面白い。いかにもいかにもだが，うまくまとまっている。
「赤い熱気球」：スペインでは新型と見られる肺炎が流行し，多くの命が失われていた。その病気に疑問をいだいたマドリード大の客員教授の中津は，独自の調査を始める。感染ルートと思われるものにたどり着いた時，彼の前に暗殺者が立ちはだかった。・・・「外交官・黒田康作」か？？？前半の医療サスペンスと後半の熱気球活劇アクションの組合せが面白い。この短編集の主人公にしては頼りない感じでハラハラした。
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