きっとどこかの物語

詩 2007後半




母の手を握ろうとしたら
振りほどかれてしまいました
子供は途方に暮れ
振りほどかれた手を追って
母のあとを追いかけます

母の顔を覗こうとしたら
そっぽを向かれてしまいました
子供は悲しみに耐え
そっぽを向かれた顔を見ようと
必死に母を覗き込みます

母の背中をぎゅっと抱きしめたら
腕はかすかに震えてしまいました
子供は泣き声をおしころしましたが
大きな背中が泣いていることに気付きました
はっとしました

母の笑顔を見ようとしておどけたら
母はもっと泣いてその子を抱きしめました
かすかに声が聞こえます
あやまっている声が聞こえます
お礼をいっている声が聞こえます
その意味に次の日気付くのでした

いつもどおり子供は母に会いに病院にきました
母はうっすらと笑いながら
美しい顔で寝息を立てずに寝ていました
子供は全てを知り
母の愛と優しさを胸に抱き
強く泣くのでした




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ひとつの連鎖映像。


とても高い塔の上で、女の子が立っていたら
ふわりと風が吹きました。
その風はその塔から見下ろすことのできる
木をゆらしました。
木の葉が落ちそれは木の目の前を流れる
川へダイブして
その葉のいきついた先はとある海の
浜辺です。
すると浜辺の清掃員がその砂をかきだし
その砂ごとゴミ処理。




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気分上昇


何も不安と感じなければ、
今ならなんでもできると進んでいける自分に気付いた
このままの状態が遥か先未来に続かないことは
百も承知
だからこそ今このときにやらなくてはならないことを
やるまでだと進んでいく
そんな自分でありたいと願った

不安が消え去れば
希望がともるのだ
理由付けや論理付けをしたくはない
感覚で覚えたいことだと望んだ

言語や論理でいえることはたくさんあるが
感覚でしかわからないものがある
それを大切にしたいのだ



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光の取っ手


今ここに光があるかといえばそうではなくて
しかし闇があるのかといえばそういうことはない
ただ太陽の出る日にカーテンの中に隠れているような
そんな暗さと明るさがある

言い方をかえるとするならばあえて安易に
二つのドアがあると提示しよう
そのどちらかが光へそのどちらかが闇へ
導く扉なのだが
光へ入る扉を開こうとしてもこれがまた中々開かず
ただ闇への扉が迫ってくる
しかし幾度もそれを避ける
しかし光の扉も己から逃げるように遠のくのだ

しかしこのまま光の取っ手を掴むために走り続けていれば
そのうち追いつくような気がして
まだ己は走るのか
どんなに暗中模索の
限りなく闇に近づいても
まだあの光を追い求めている




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いつかの娘


こんにちは
おててをつないで
ありがとう

優しい御子よ
母を想うのは最後にしなさい
それでも母を想うというのなら
幸せになりなさい
母が願うのはそれなのです

面に微笑みと
心に美しさと
手に優しさを添えなさい
貴方の瞳に光るが宿るように

傍らに居る光を見つけなさい
遠くにある闇を遠ざけなさい
いつか生まれる子供を想いなさい

そして貴方が大人になり
傍らの光が闇を纏ったのなら
貴方の中にあった光をすべて出し照らしなさい
そして傍らの光の顔をしっかり見て微笑みなさい
母は貴方の微笑みを命の誇りにします

どうかその心よ
永遠の美しさを
どうかその微笑みよ
永遠の優しさを
母は貴方のことが大好きですよ
光を常に忘れないでいてください
いつかの娘よ



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いつかの坊や


お腹に力を入れて
背筋をのばして
まっすぐ前を見据えて

貴方の心に曇がかからないように
母は願います
どうかこの闇を見ても、纏ってしまったとしても
また貴方がまっすぐ立ち上がれるように

どうか闇を、振り払う殿に

強さを身に纏う人間に

心優しき光を見る男に

母は貴方の全てを願います
母が貴方にあげられるものは少ない
ただ
貴方が悪へ進むというのなら
この生命全てをかけてでも
貴方の悪の根を止めるでしょう

お腹に力を入れて
背筋をのばして
まっすぐ前を見据えて

お腹に宿るこの命よ
どうか
どうか
貴方の生命を
貴方の思うものに捧げなさい
いつかの坊やよ




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黒に住む民(ごちゃ詩)


遠く遠く落としてきた
希望の欠片を
拾い集めもう一度
この場所に埋めたい

どこまでも暗く狭い場所に落ちてしまうの
このままどこへでも行けそうと
その闇を進んだ

そこには希望の文字はなく
黒い想いだけが蹲り
人が来ると人を食らう

そこに一人の勇者こそいれば
助かるものだけれど
この世にもう勇者などいないと
飲み込まれた人が呟いた

そこにすむ人々は
涙も出ることはない
黒くくすんだ心のフィルターが
不安を覆い隠すから

その住民は
今もどこかで
黒いフィルターをつけて
笑顔を繕い
黒さを纏い
悲しくこの世に生を成す

生きることが辛いといいながら
死ぬことは選べない
ただただ「いない」といった勇者を求めて



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人間みんないつかは死んでいくのに


次へ渡すために歴史を残していく


でも一番 渡さなくちゃいけないのは 命なはず


自然を守ってください。


-自然保持呼びかけ-(サイトTOP)

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無題


その星には人がいませんでした
しかし家と道路がありました

その世界には思いがありました
しかし人も生き物もいませんでした

片方がいないからといって
片方はないとは限らず
片方はあるからといって
片方があるとは限りません

そこにあるのは
矛盾をした上でおきた矛盾の形でした


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スクリーンスター


十七年生きたあの日
変わっていくものを見て
変わるのが辛く思えた
十七年も変わらなかった日々を送った
そう、十七といえば、十七歳の彼には
全ての年月の数

それを今変えようというのだから
少年は怖くて怖くてたまらなかった
しかし変わらなければならないときがくる
自分にそのときがやってくるなど
思いもしなかったのに

変わるとは一言で言えば簡単なのに
こうも難しく
こうも昔が捨てがたく
こんなにも自分に固執していたのかと思い知らせる

少年の決断
一歩さきへ進むには
変わらなければならない事実
高慢欺瞞
自分の無知を察し
次へ進むことがこんなにも怖い

その恐怖を知ったものだけが進む次への段階
少年は顔をあげた
その表情は
今までにないものだった

この扉の向こうに
何万人もの観客がいる



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死を恐れるその者の結末


ひとつ命の終わりがありました。
それははかなく優しいものでした。

ただ生きていたとき、とても死ぬのが怖かった者がいました。
それはとても想像におよばないほどの恐怖で
その者は、そのほんの一瞬やってくる終末に、ただぶるぶると震えていました。
怖かったのです。
とても、怖かったのです。

だからその者は気付きました。
今この瞬間この刻に。
世界中どこかでこの恐怖に耐えようとしている者がどれだけいるか。
今この瞬間この刻に。
悲しく終わりを迎えようとしている者がどこかにいる。

だからその者は思ったのです。

今この瞬間この刻に

救わなければならない者がいる。

死の恐怖を知っていたからこそ
それ以上に悲しい終わりなどしてほしくないと。
あの者は世界中を回り、色々な人々の死を見取り
生きたいものには、必死で生命の延長の手を探ります。
あの者は、悲しいものを、どれほど救ったのでしょう。

しかしその者にも、終わりがきました。
いつでも世界をまわっていたから、彼の親類など、誰一人いません。
誰にも見取られず、それはとても悲しい死でした。

その者が灰になる日、
誰も葬儀をしないその者のもとに花束が届きました。
その花はまた一束、また一束と増えていきます。
いつだったかその者が漏らした「みかんが好きだな」という言葉。
一度しか言わなかったその言葉を
一度しか会わなかった者が覚えていたのでしょう。
1箱、2箱、3箱と、全て送りもとの違うところからみかん箱が届きました。
手紙もたくさん届きました。
その者が静かに眠っている部屋は、手紙に埋め尽くされました。
もう入らないほどの手紙とプレゼントが部屋に届いた頃
外から声がしました。
「ありがとう」
言う声は泣いていました。
そしてまた違う声が
「ありがとう」
泣き崩れ嗚咽を漏らす声が
誰かが大声で感謝を表しました。
そしてその声はだんだんと広まり
窓の外からも聞こえました。
いつでも世界を回っていた者は
いつでも世界を回っていたから親類はできませんでした。
しかし
いつでも世界を回っているその者を
いつでも世界を回って探し続けていた者たちがいたのでした。

あの者が灰になる日
ただの黒の小さい車で送られたとき
数え切れない手が、あの者を見送りました。

あの者は
とても、幸せでした。



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貴女を取り巻く


過去の因果だろうか
微笑む女性に黒い影

うずまく呪いが彼女を取り巻く
幸せになどさせぬと囁く声
聞こえてしまう
ぼくは聞こえてしまう

遠く離れた彼女は友人達と笑い合う
黒い呪いを纏いながら

彼女には見えない
彼女には聞こえない

だけど見えるし聞こえてしまう

その黒いものの正体は
貴女の近くにいる者のものだと
ねたみそねみひがみ全てが歪み
そこに集っていた

形にはならずとも
音など持たずとも
見えてしまう聞こえてしまう




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名のつく場所


生まれていく絶望が
おのの憎悪を結露させていく
この醜いものまで凍らせてしまうのなら
いっそそれでいいと

ただ色のない黒だけが広がる野原を
彼女は歩いていく
どこまでもどこまでも原は続き
牛も花もなく
おのずと少女は無を悟る

ここは無限地
どこというものはない
歩こうが走ろうが
名のつく場所には行けぬ



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ただ在った頃の


雑音と鮮やかなクラシックが一度に流れいてる日、また虚無がきた。
自分には何もなくて、
ただ今ここにいることだけがしっかりとわかる。
喜びはないが恐怖もない
その虚無はどこまでもぼくを、
肉体もなかった頃のぼくに戻していく。
懐かしい記憶がただ
安らぎとなりぼくを満たす

笑顔などこみあげることはなく
悲しみなどない
情熱などおこることはなく
焦りなどない

ただ安心だけが虚無の中に広がり
ぼくを
もとの姿に戻していく
人の形を持たなかった頃のぼくに

ただ存在していた頃のぼくに

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少年1


いつか両手をあげて
その星をつかめると彼は信じた
どれほど自分がちっぽけなのか
どれほど自分が愚かなのか
彼は知っていたのに
いや知っていたからこそ
たったひとつの夢に
その命を込めた

彼の身長はちっぽけで
いつもからかっていた
彼の背中は心細かった
いまに両手をこぶしに変えて
壁をぶちやぶってやるって
彼はむくれながらいった

あれから夏がきて秋がきて
彼の身長が私を越して
大きな悪いものが私を喰らいにやってきたとき
助けにとびこんできた彼の背中は
たくましくて

その心は勇敢で
星を掴むにはあまりにも
彼がひとつの星かと思うほど
まぶしかった




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ひとつの盲目の時期


怖いものに追われるより
怖いもの

昨日あったものが
今日は消えるかもしれない
昨日なかった悪が
今日は生まれるかもしれない
そうやって植えつけられた恐怖
時が過ぎることに
おびえつづけてる君

絵を描く手が震え
涙が出て描写できない対象物








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少年の荷物

少年は
歩いていった
いろいろな町を回り
いろいろな人を見る

大きな荷物をせおっているはずの少年の足は軽く
いく先々で荷物の心配をされたが
少年は笑って
平気だと答える

この荷物の重さは
もう とうに
感じなくなったのだと

少年は幸せそうに笑ってそう言った

父の怖い顔と
母の泣き顔
全てが重かったあのときの荷物はこれよりも小さかった

けどまた新しくもっと大きいのが入った

父の強き優しさと
母の美しい笑顔
これは大きい荷物なはずなのに
あの重い荷物を軽くしてくれるんだと

少年は幸せそうに笑ってそう言った
それを知らせるために色んな町を歩いているんだと
胸をはって誇らしげした

この世界にはひとつの言い伝えがある
ある男の子が通った町は必ず
愛を忘れない大人がいる町になると




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いつかのこの地


遠い場所につながる一本道
ぼくらは皆これでむすばれている
そう思ったって
いいじゃないか

たとえ今のこの世の全ての地に
平和が広がっていないとしても
あらそいのたえない地のほうが
多いとしても
ぼくは信じる

いつか君に空を見て思ってほしい
この空のすごいところは
広いだけじゃないということ
きっと君なら
見つけることができる

いつか君に地を踏み信じてほしい
この地はぼくらよりはるかに昔の人が踏み
さらに未来の人がふんでいくということ
その人たちが
優しく笑って歩いているということ

たとえば世界中の人が手に手を取り合って
輪をつくろうって言い出したなら
ひとりも嫌な顔をしないんだ
だけど悲しそうな顔をしている人がいる
手が不自由な人たちだ
そしたらぼくらはその手になる何かを
必死で探すんだ
その人もお礼に笑ってくれる

そう信じたって いいじゃないか




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その海の地底


とどまることを知らない波が
ぼくをせかしあげる
波に乗るのが面倒くさくて
ぱちゃぱちゃと当たる水面が煩わしくて
その波に乗らずにいたら
海の中にもぐりこみ
空が見えなくなった

空気が吸えず
深海さらに深く
光が届かない水底へ
堕ちた
感じた温度が
まことかどうか

足が何かにあたった
平らな
久しぶりの










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その山の頂上


「ぼくは上に進む」そう言って
君の前から立ちあがり姿を消したけど
大きな間違いがそこにあった
小さなものをずっと見据えていた君がいたこと

上へ進むことそのことだけに
とらわれて全てを否定していた
否定することそれが頂点になれる
近道だとずっと思っていた

けれど世界で一番高い山の頂上には
誰もいなかった
最高の高さと孤独だけが待っていたんだ

ぼくが望んだ頂上は
こんなに悲しくも儚い場所で
ぼくは顔を隠すこともなく泣いていた
ここまでのぼりつめた者たちの死体を横に

ここで生きることは怖くてできず
もどることも水はもうあとをつき
ただただ足が震えるだけで
ただただ君を思い出すだけ

思い返すこともなかった過去を
今どうして思い出すのだろう
君はあのとき手をひいて止めた
必死に涙を流して訴えた

あなたの進むところは絶望なのだと

それが最も美しいものだと気づきもせず
君を否定しただ上を見ていた




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この国に生きる貴方だからこそ出来ること


想像してみてください。
貴方は右手が不自由で
親とは幼い頃に別れました。
貴方の目にはとても栄えている街が広がりますが
貴方はぼーっとうつろに街を見ているだけです。
貴方の横にはとても綺麗な服を着た人たちが楽しそうに歩きますが
貴方は泥と血にまみれ、その人たちから避けられて歩かれます。
貴方はふと思います。
ここは地獄だ。

感情はもう沸いてきません。
けれど目は腫れる程、涙を流します。
勝手に喉がしゃくりあげ
貴方の呼吸を難しくさせます。
そのうち食べることをやめます。
空腹で、何も入れていないはずの胃の中から
胃液だけ込みあげてきます
苦くて
また吐き気を催します
そのうち心臓が




これは
現実にいる子供のお話です。

どうか
その手を
その心を





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ちょっと前までは
簡単にウソをついて
簡単に危険回避して
安心のために人を愚弄した

すごく居心地がよかった
誰かの血を浴びても
返り血だからしょうがないって
割り切れたからだ

けれど今ぼくは
誰かのために土を耕し
ぼくを知らない者のためにも
草木を育て
たとえぼくを楽しそうに罵倒する奴らにも
木の実をやるような生活をしてる
すごく
居心地が悪いんだ

けれど前の生活にはもどれない
なんのために生きているかわからなかった頃には
もどりたくない

人は変わっていく
それでいいと思ってる。
ぼくが何かに費やすことで
少し
小さな世界が変わるなら



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この国の悪魔


薬を大量に飲む少女
腕に傷のある少年
ビルの屋上に立った貴方

この世でちっぽけな一人だと
わかっていたとしても
認められない現実
避けたいの
逃げたいの

どうかその手を取れるなら
貴方からその手段を奪えるなら
私は何だってする
禁じられたことだって
簡単なのよ

その薬を捨てて
どうか手首をなでてあげて
そんな高いところにいかないで

どうかどうかたった一人の
貴方を愛してる者が現れること
信じてずっと信じて
私がここにいること

貴方がしないなら
私がしてあげる
この国の法を犯すことくらい
簡単なことなのよ


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君の部屋のさがしもの


散らばった部屋の中でさがしものをして
ないなんて諦めちゃだめだよ
きっとまだ探してないところに
ひっそり隠れているんだ

必ずある
昔つかってた手提げの中とか
ちょっと暗い場所とか
忘れないで
ないなんて言わないで
ほら
君のその手にあったものは
大切だったでしょ?

それをまた見つけることに
またお気に入りにすることに
「なくしちゃうかも」って恐怖は捨てちゃって
また手にするんだ
ほら
暖かい
また安心して眠れるよ






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少年は優しい瞳をしていた


昔あれほど
ないと思っていた物があって
その焦りが少年に暴力という道を与えた

粗末な裏路地で
がむしゃらに誰かを殴りつけて
何倍も殴り返された
そのときの瞳は
死に物狂いの兵士のようで

今 風に吹かれながら
おだやかな草原に
少年はたたずんでいた

昔あれほど
ないと思っていた物
それを生まれたときから持っていたと気付いてしまった
自分がおろかだったことを知った

体中に治らなかった傷の痕
彼の治らない傷あとを心配創に見つめる
二人の年老いた女性と男性
彼らを見る少年は
優しい瞳をしていた





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すべての美しきもの


雑音を鎮めて
空気を吸って
美しき花を見る

それらが私に安らぎを与えてくれる
次不幸がこようとも

大地を蹴って
太陽を浴びて
美味なるものを食べる

それらが私に力をくれる
次悲しみがこようとも

うたを歌って
絵をえがいて
おどりを踊る

それらが私をはずませる
次沈みがこようとも

全ての美しきものは
私にプラスをくれていることを
忘れてはならないと
今ここに書き記す。



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夢を見てた


どしゃぶりの中
何時なのかわからないくらい暗い路上で
独り立っている自分
雨に濡れてびしょびしょで
体が冷たくて
でも
目頭だけ熱くて

そんな中
もう意味ないのに
かさが現れる
振り向くと
誰かがこの寒い中
白い息を忙しく吐き出しながら

探した

そうつぶやく
そういう夢を見てた

いつかこのどしゃぶりの中
見返りをもとめないままに傘をさしてくれる人が
現れるんじゃないかって
息を切らしながら
私なんかを探しに
必死になってくれる人が
現れるんじゃないかって

そういう夢を見てた

目が覚めるとからっぽで
涙も出なかった




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生きるって、すげえ怖い


生きるって、すげえ怖い
“いつか死ぬ”って爆弾を抱えて
歩いていくんだ

死ぬより辛いことって
なんだろう
腕がなくなったり
女の子なら顔に傷がついたり
目が見えなくなったり

生きるって、すげえ怖い
“自分が消える”地雷が
明日に埋まってるかもしれない

生きることって
なんだろう
何かすごく大切なものを亡くしたりして
絶望を感じても
まだ死んでない
ここにいる

すげえ怖い
怖い
それでも
前へ進まなくちゃいけない
この中で
ほんのわずかでも光を見つけられたら
それに猛進しても
いいよね?




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現在地2007.06.19


誰もぼくを見てなどいない
「それでもいい」と笑っていた
あの頃の無垢なぼくにもどりたい

いつからだろう人の羨望の目が
ほしくてたまらなくなったのは
いつだっただろう誰かの心が
ほしくて泣き崩れたのは

高慢になっていくぼくだけど
どうか笑って見ていてと
さらに欲をいいはじめて
取り返しのつかないことになっていた

「純粋なんて言葉は
ぼくに似合わなくて良い」
いつからかそんなことを口にしはじめた
そのときにはもうすでに
誰もぼくを愛してなどいなかった

ひとり ぽつんと
部屋にいた
明かりをつけるのさえ
わずらわしく感じた
このまま
もっと奥へ―

ある日きゅうに光がほしくなった
唐突だった
でもぼくの現在地は暗闇
誰かの優しさを欲したときには
誰がどこにいるのかわからなくて
やっと空虚に気づいた
そして心は悲しく


手が動かない
息をしていない
体は無感
声も出せない
けれどただ
涙だけは出ていた

そのうちこれが悲しいという感情だと気づいた
どうして悲しいのかは
わからなかった

心には悲しみだけが住み着いた
ここから逃げたいという思いが
そこから生まれた

そのうち動かなかったはずの手が
何かを欲し始めた
だけどまだ
動かなかった

体は死んでいた
息もしていない
それが妙に
悲しくて

一気に息を吸ってみた
久しぶりの空気
すごく体が痛くて
今までよりたくさんの涙が出た
そしたら体が少しずつ動き
そして心は
悲しくなかった



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4人の人


小さいころのおろかさで
わたしはイエを壊してしまった
罪の意識は消えずに
今もまだこの胸に残ってる

父はわたしに死ねと罵った
母はわたしをいらないと言った
兄はわたしと喋らなくなって
わたしはひとりだれもいないところで懺悔した

みんなばらばらになった

それなのに
数年のときを経て
父はわたしを生かすために身を削り
母はわたしの帰りを待ち望んだ
兄は少しずつ口を開き
わたしをひとりになどしなかった

凍える冬
暖かいこたつに
4人やっと
そろう日がきた
ながかったねと心の中でつぶやき
ひとりかくれて涙を流した

もう一度おさないあの頃へ帰ろう
みんな一緒だったあのころへ
大切なあなたたちが居たイエへ
みんな同じ屋根の下



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旅の序章


空は暗黒 少年は行く
この町に光などない
あるのは憎悪と気だるさと
金だけだ

空は暗黒 少年は笑う
悪いか?全て捨てるんだ
こんな醜いもの全て
捨ててやるンだ

空は明瞭 少年は怒る
ほらみろ
こんなにも
こんなにも
あの町と違う

空は明確 少年は笑う
手には荷物を
顔には笑みを
心には
勇気を

暗闇の町などとうに抜けた
さあ
旅のはじまりだ






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死んだぼくの絵


ぼくは絵が描きたくて
一生それで生きていきたくて
ただそれだけを願ったかのように生まれてきたような気がして
生きてきた

親の罵声を浴びながら
反対を押し切って
絵の学校に入った
うれしくてうれしくて
たまらなかった

全てぼくの宝だった
ひとつひとつの色が
一本一本の線が
全てぼくの宝だった

学校の合間
親から罵声を食らう合間
唯一絵がかける時間
一本の線が命

動かないはずの絵が
昔はいつも動いてた
飛び跳ねたり笑ったり泣いたり怒ったり
つぼみの絵の花が明日は綺麗に咲くんだ

毎日毎日かいて
その暮らしが当たり前になった今
いつのまにかその気持ち 無くしてた

忘れてた
すごく悲しかった
なんて高慢になってしまったんだろうと
鼻がつんとした

さっきまで描いてた絵をみたら
その絵から
なんの感情も汲み取れないんだ
全く動かないんだ
なんだかぼくの絵が
死んだ気がした

大粒の涙があふれてきたんだ
ぼくがぼくの絵を
殺したんだ

上手く描きたい一心に
絵をただの紙としてみてた
ぼくがぼくの絵を殺したんだ

ごめん

ごめんね

そんなことをしたのにこの手が
まだ描きたいって言ってんだ
もっともっとたくさん描きたいって言ってんだ

もう一度 ペンをとってもいいかな
もう一度 線をひいてもいいかな

絵に命を吹き込む権利 ぼくに
まだあるかな

二度と命のない絵など描かないと誓うから
ぼくに
もう一度



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4は飛ばして5(かきたくなttry


一刻と過ぎていく寿命
近づく死
目の前の恐怖を
いま
振り払えるか

何も恐れることなく
どこまでも進んでいける勇気を
何よりも強い決意を



その恐怖に打ち勝つことくらい
簡単さなんて笑っていた
幼いころの自分を
いま
憎まないで進め

何も恐れることなく
どこまでも愛し合える心を
何よりも強い思いを

死ぬまでにこの恐怖に打ち勝ってやる
目を背けずに戦ってやる
運命(おまえ)になんか負けない





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17才の彼と風



複雑怪奇な17才の春
どこまでもカオスな心を持って歩く少年に
吹き付ける風が涼しくて
泣けちゃうんだ

「単純に見なきゃ
見えないものがあるんだ
複雑な心を持った今の僕じゃ
見えないかもしれない」

どこにだって気象がありゃ風が吹く
そんなの中学のとき習った
それでもこんな複雑怪奇な僕に
吹き付ける
ただそれだけの単純な風が優しかった

それだけなのに
泣けちゃうんだ
かっこ悪いって思っても
風に泣くんだ






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黒い奇術師


その体は踊るように舞い上がった
ただ一直線に光る目は先を見た
「夜など身を隠す道具にすぎない」
黒い奇術師は言った

誰も止めることのできない音速
優しさなどとうに捨てたと
彼は笑う
人の命など、こうも単純に―

その奇術は怪しげに光を放った
数人の男が倒れた
ほどなく動かなくなる

誰にも止めることのできない光速
暖かさなどはじめから知らないと
彼はあざ笑う
人の命など、こうも簡単に―

夜の闇に身を隠した黒の奇術師
朝日がのぼるころ
そこには血以外の水滴が残っていたという
いったいそれが何なのかは
誰も知らない






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どうか聴いてと(必死な人の言葉)


町の雑音の中にこだまする
子供の叫び声

満面の笑みのその子供
声は
叫んでる

聞こえますか
僕らの声

あたりに散らばる罵声のノイズに
かき消されてなければいいんだけど

聞こえますか
僕らの声

涙など
とうに枯れてしまう
のどは
もうつぶれてるんだ
だから聴いて

耳でじゃなくて

どうか

どうか

心で


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僕らの弾丸


強くなるために
ふにゃふにゃになりながらもがき戦う
その姿が醜いといわれても
僕は戦う

大事なものがあるから
ぐしゃぐしゃになりながら鞘から銃を抜こう
たとえ大切な人の涙を流すことになろうとも
僕は弾丸を奮う

次を戦うために
ぼろぼろになりながら立ち上がろう
その後ろにもまた
同じような姿で戦う友がいるから

その勇姿を誇りに
そのけたたましさを引き金に
僕らの弾丸は世界へ飛ぶ
千の銃をしまって億の弾丸を持つぼくら

その中で本物の銃を手にしてしまった人もいた
悲しき心の穴に
陥って出られずに



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