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きっとどこかの物語
詩 2007後半
母の手を握ろうとしたら
振りほどかれてしまいました
子供は途方に暮れ
振りほどかれた手を追って
母のあとを追いかけます
母の顔を覗こうとしたら
そっぽを向かれてしまいました
子供は悲しみに耐え
そっぽを向かれた顔を見ようと
必死に母を覗き込みます
母の背中をぎゅっと抱きしめたら
腕はかすかに震えてしまいました
子供は泣き声をおしころしましたが
大きな背中が泣いていることに気付きました
はっとしました
母の笑顔を見ようとしておどけたら
母はもっと泣いてその子を抱きしめました
かすかに声が聞こえます
あやまっている声が聞こえます
お礼をいっている声が聞こえます
その意味に次の日気付くのでした
いつもどおり子供は母に会いに病院にきました
母はうっすらと笑いながら
美しい顔で寝息を立てずに寝ていました
子供は全てを知り
母の愛と優しさを胸に抱き
強く泣くのでした
__________________________________
ひとつの連鎖映像。
とても高い塔の上で、女の子が立っていたら
ふわりと風が吹きました。
その風はその塔から見下ろすことのできる
木をゆらしました。
木の葉が落ちそれは木の目の前を流れる
川へダイブして
その葉のいきついた先はとある海の
浜辺です。
すると浜辺の清掃員がその砂をかきだし
その砂ごとゴミ処理。
__________________________________
気分上昇
何も不安と感じなければ、
今ならなんでもできると進んでいける自分に気付いた
このままの状態が遥か先未来に続かないことは
百も承知
だからこそ今このときにやらなくてはならないことを
やるまでだと進んでいく
そんな自分でありたいと願った
不安が消え去れば
希望がともるのだ
理由付けや論理付けをしたくはない
感覚で覚えたいことだと望んだ
言語や論理でいえることはたくさんあるが
感覚でしかわからないものがある
それを大切にしたいのだ
__________________________________
光の取っ手
今ここに光があるかといえばそうではなくて
しかし闇があるのかといえばそういうことはない
ただ太陽の出る日にカーテンの中に隠れているような
そんな暗さと明るさがある
言い方をかえるとするならばあえて安易に
二つのドアがあると提示しよう
そのどちらかが光へそのどちらかが闇へ
導く扉なのだが
光へ入る扉を開こうとしてもこれがまた中々開かず
ただ闇への扉が迫ってくる
しかし幾度もそれを避ける
しかし光の扉も己から逃げるように遠のくのだ
しかしこのまま光の取っ手を掴むために走り続けていれば
そのうち追いつくような気がして
まだ己は走るのか
どんなに暗中模索の
限りなく闇に近づいても
まだあの光を追い求めている
__________________________________
いつかの娘
こんにちは
おててをつないで
ありがとう
優しい御子よ
母を想うのは最後にしなさい
それでも母を想うというのなら
幸せになりなさい
母が願うのはそれなのです
面に微笑みと
心に美しさと
手に優しさを添えなさい
貴方の瞳に光るが宿るように
傍らに居る光を見つけなさい
遠くにある闇を遠ざけなさい
いつか生まれる子供を想いなさい
そして貴方が大人になり
傍らの光が闇を纏ったのなら
貴方の中にあった光をすべて出し照らしなさい
そして傍らの光の顔をしっかり見て微笑みなさい
母は貴方の微笑みを命の誇りにします
どうかその心よ
永遠の美しさを
どうかその微笑みよ
永遠の優しさを
母は貴方のことが大好きですよ
光を常に忘れないでいてください
いつかの娘よ
__________________________________
いつかの坊や
お腹に力を入れて
背筋をのばして
まっすぐ前を見据えて
貴方の心に曇がかからないように
母は願います
どうかこの闇を見ても、纏ってしまったとしても
また貴方がまっすぐ立ち上がれるように
どうか闇を、振り払う殿に
強さを身に纏う人間に
心優しき光を見る男に
母は貴方の全てを願います
母が貴方にあげられるものは少ない
ただ
貴方が悪へ進むというのなら
この生命全てをかけてでも
貴方の悪の根を止めるでしょう
お腹に力を入れて
背筋をのばして
まっすぐ前を見据えて
お腹に宿るこの命よ
どうか
どうか
貴方の生命を
貴方の思うものに捧げなさい
いつかの坊やよ
__________________________________
黒に住む民(ごちゃ詩)
遠く遠く落としてきた
希望の欠片を
拾い集めもう一度
この場所に埋めたい
どこまでも暗く狭い場所に落ちてしまうの
このままどこへでも行けそうと
その闇を進んだ
そこには希望の文字はなく
黒い想いだけが蹲り
人が来ると人を食らう
そこに一人の勇者こそいれば
助かるものだけれど
この世にもう勇者などいないと
飲み込まれた人が呟いた
そこにすむ人々は
涙も出ることはない
黒くくすんだ心のフィルターが
不安を覆い隠すから
その住民は
今もどこかで
黒いフィルターをつけて
笑顔を繕い
黒さを纏い
悲しくこの世に生を成す
生きることが辛いといいながら
死ぬことは選べない
ただただ「いない」といった勇者を求めて
__________________________________
人間みんないつかは死んでいくのに
次へ渡すために歴史を残していく
でも一番 渡さなくちゃいけないのは 命なはず
自然を守ってください。
-自然保持呼びかけ-(サイトTOP)
__________________________________
無題
その星には人がいませんでした
しかし家と道路がありました
その世界には思いがありました
しかし人も生き物もいませんでした
片方がいないからといって
片方はないとは限らず
片方はあるからといって
片方があるとは限りません
そこにあるのは
矛盾をした上でおきた矛盾の形でした
__________________________________
スクリーンスター
十七年生きたあの日
変わっていくものを見て
変わるのが辛く思えた
十七年も変わらなかった日々を送った
そう、十七といえば、十七歳の彼には
全ての年月の数
それを今変えようというのだから
少年は怖くて怖くてたまらなかった
しかし変わらなければならないときがくる
自分にそのときがやってくるなど
思いもしなかったのに
変わるとは一言で言えば簡単なのに
こうも難しく
こうも昔が捨てがたく
こんなにも自分に固執していたのかと思い知らせる
少年の決断
一歩さきへ進むには
変わらなければならない事実
高慢欺瞞
自分の無知を察し
次へ進むことがこんなにも怖い
その恐怖を知ったものだけが進む次への段階
少年は顔をあげた
その表情は
今までにないものだった
この扉の向こうに
何万人もの観客がいる
__________________________________
死を恐れるその者の結末
ひとつ命の終わりがありました。
それははかなく優しいものでした。
ただ生きていたとき、とても死ぬのが怖かった者がいました。
それはとても想像におよばないほどの恐怖で
その者は、そのほんの一瞬やってくる終末に、ただぶるぶると震えていました。
怖かったのです。
とても、怖かったのです。
だからその者は気付きました。
今この瞬間この刻に。
世界中どこかでこの恐怖に耐えようとしている者がどれだけいるか。
今この瞬間この刻に。
悲しく終わりを迎えようとしている者がどこかにいる。
だからその者は思ったのです。
今この瞬間この刻に
救わなければならない者がいる。
死の恐怖を知っていたからこそ
それ以上に悲しい終わりなどしてほしくないと。
あの者は世界中を回り、色々な人々の死を見取り
生きたいものには、必死で生命の延長の手を探ります。
あの者は、悲しいものを、どれほど救ったのでしょう。
しかしその者にも、終わりがきました。
いつでも世界をまわっていたから、彼の親類など、誰一人いません。
誰にも見取られず、それはとても悲しい死でした。
その者が灰になる日、
誰も葬儀をしないその者のもとに花束が届きました。
その花はまた一束、また一束と増えていきます。
いつだったかその者が漏らした「みかんが好きだな」という言葉。
一度しか言わなかったその言葉を
一度しか会わなかった者が覚えていたのでしょう。
1箱、2箱、3箱と、全て送りもとの違うところからみかん箱が届きました。
手紙もたくさん届きました。
その者が静かに眠っている部屋は、手紙に埋め尽くされました。
もう入らないほどの手紙とプレゼントが部屋に届いた頃
外から声がしました。
「ありがとう」
言う声は泣いていました。
そしてまた違う声が
「ありがとう」
泣き崩れ嗚咽を漏らす声が
誰かが大声で感謝を表しました。
そしてその声はだんだんと広まり
窓の外からも聞こえました。
いつでも世界を回っていた者は
いつでも世界を回っていたから親類はできませんでした。
しかし
いつでも世界を回っているその者を
いつでも世界を回って探し続けていた者たちがいたのでした。
あの者が灰になる日
ただの黒の小さい車で送られたとき
数え切れない手が、あの者を見送りました。
あの者は
とても、幸せでした。
__________________________________
貴女を取り巻く
過去の因果だろうか
微笑む女性に黒い影
うずまく呪いが彼女を取り巻く
幸せになどさせぬと囁く声
聞こえてしまう
ぼくは聞こえてしまう
遠く離れた彼女は友人達と笑い合う
黒い呪いを纏いながら
彼女には見えない
彼女には聞こえない
だけど見えるし聞こえてしまう
その黒いものの正体は
貴女の近くにいる者のものだと
ねたみそねみひがみ全てが歪み
そこに集っていた
形にはならずとも
音など持たずとも
見えてしまう聞こえてしまう
__________________________________
名のつく場所
生まれていく絶望が
おのの憎悪を結露させていく
この醜いものまで凍らせてしまうのなら
いっそそれでいいと
ただ色のない黒だけが広がる野原を
彼女は歩いていく
どこまでもどこまでも原は続き
牛も花もなく
おのずと少女は無を悟る
ここは無限地
どこというものはない
歩こうが走ろうが
名のつく場所には行けぬ
__________________________________
ただ在った頃の
雑音と鮮やかなクラシックが一度に流れいてる日、また虚無がきた。
自分には何もなくて、
ただ今ここにいることだけがしっかりとわかる。
喜びはないが恐怖もない
その虚無はどこまでもぼくを、
肉体もなかった頃のぼくに戻していく。
懐かしい記憶がただ
安らぎとなりぼくを満たす
笑顔などこみあげることはなく
悲しみなどない
情熱などおこることはなく
焦りなどない
ただ安心だけが虚無の中に広がり
ぼくを
もとの姿に戻していく
人の形を持たなかった頃のぼくに
ただ存在していた頃のぼくに
__________________________________
少年1
いつか両手をあげて
その星をつかめると彼は信じた
どれほど自分がちっぽけなのか
どれほど自分が愚かなのか
彼は知っていたのに
いや知っていたからこそ
たったひとつの夢に
その命を込めた
彼の身長はちっぽけで
いつもからかっていた
彼の背中は心細かった
いまに両手をこぶしに変えて
壁をぶちやぶってやるって
彼はむくれながらいった
あれから夏がきて秋がきて
彼の身長が私を越して
大きな悪いものが私を喰らいにやってきたとき
助けにとびこんできた彼の背中は
たくましくて
その心は勇敢で
星を掴むにはあまりにも
彼がひとつの星かと思うほど
まぶしかった
__________________________________
ひとつの盲目の時期
怖いものに追われるより
怖いもの
昨日あったものが
今日は消えるかもしれない
昨日なかった悪が
今日は生まれるかもしれない
そうやって植えつけられた恐怖
時が過ぎることに
おびえつづけてる君
絵を描く手が震え
涙が出て描写できない対象物
__________________________________
少年の荷物
少年は
歩いていった
いろいろな町を回り
いろいろな人を見る
大きな荷物をせおっているはずの少年の足は軽く
いく先々で荷物の心配をされたが
少年は笑って
平気だと答える
この荷物の重さは
もう とうに
感じなくなったのだと
少年は幸せそうに笑ってそう言った
父の怖い顔と
母の泣き顔
全てが重かったあのときの荷物はこれよりも小さかった
けどまた新しくもっと大きいのが入った
父の強き優しさと
母の美しい笑顔
これは大きい荷物なはずなのに
あの重い荷物を軽くしてくれるんだと
少年は幸せそうに笑ってそう言った
それを知らせるために色んな町を歩いているんだと
胸をはって誇らしげした
この世界にはひとつの言い伝えがある
ある男の子が通った町は必ず
愛を忘れない大人がいる町になると
__________________________________
いつかのこの地
遠い場所につながる一本道
ぼくらは皆これでむすばれている
そう思ったって
いいじゃないか
たとえ今のこの世の全ての地に
平和が広がっていないとしても
あらそいのたえない地のほうが
多いとしても
ぼくは信じる
いつか君に空を見て思ってほしい
この空のすごいところは
広いだけじゃないということ
きっと君なら
見つけることができる
いつか君に地を踏み信じてほしい
この地はぼくらよりはるかに昔の人が踏み
さらに未来の人がふんでいくということ
その人たちが
優しく笑って歩いているということ
たとえば世界中の人が手に手を取り合って
輪をつくろうって言い出したなら
ひとりも嫌な顔をしないんだ
だけど悲しそうな顔をしている人がいる
手が不自由な人たちだ
そしたらぼくらはその手になる何かを
必死で探すんだ
その人もお礼に笑ってくれる
そう信じたって いいじゃないか
__________________________________
その海の地底
とどまることを知らない波が
ぼくをせかしあげる
波に乗るのが面倒くさくて
ぱちゃぱちゃと当たる水面が煩わしくて
その波に乗らずにいたら
海の中にもぐりこみ
空が見えなくなった
空気が吸えず
深海さらに深く
光が届かない水底へ
堕ちた
感じた温度が
まことかどうか
足が何かにあたった
平らな
久しぶりの
__________________________________
その山の頂上
「ぼくは上に進む」そう言って
君の前から立ちあがり姿を消したけど
大きな間違いがそこにあった
小さなものをずっと見据えていた君がいたこと
上へ進むことそのことだけに
とらわれて全てを否定していた
否定することそれが頂点になれる
近道だとずっと思っていた
けれど世界で一番高い山の頂上には
誰もいなかった
最高の高さと孤独だけが待っていたんだ
ぼくが望んだ頂上は
こんなに悲しくも儚い場所で
ぼくは顔を隠すこともなく泣いていた
ここまでのぼりつめた者たちの死体を横に
ここで生きることは怖くてできず
もどることも水はもうあとをつき
ただただ足が震えるだけで
ただただ君を思い出すだけ
思い返すこともなかった過去を
今どうして思い出すのだろう
君はあのとき手をひいて止めた
必死に涙を流して訴えた
あなたの進むところは絶望なのだと
それが最も美しいものだと気づきもせず
君を否定しただ上を見ていた
__________________________________
この国に生きる貴方だからこそ出来ること
想像してみてください。
貴方は右手が不自由で
親とは幼い頃に別れました。
貴方の目にはとても栄えている街が広がりますが
貴方はぼーっとうつろに街を見ているだけです。
貴方の横にはとても綺麗な服を着た人たちが楽しそうに歩きますが
貴方は泥と血にまみれ、その人たちから避けられて歩かれます。
貴方はふと思います。
ここは地獄だ。
感情はもう沸いてきません。
けれど目は腫れる程、涙を流します。
勝手に喉がしゃくりあげ
貴方の呼吸を難しくさせます。
そのうち食べることをやめます。
空腹で、何も入れていないはずの胃の中から
胃液だけ込みあげてきます
苦くて
また吐き気を催します
そのうち心臓が
これは
現実にいる子供のお話です。
どうか
その手を
その心を
__________________________________
6
ちょっと前までは
簡単にウソをついて
簡単に危険回避して
安心のために人を愚弄した
すごく居心地がよかった
誰かの血を浴びても
返り血だからしょうがないって
割り切れたからだ
けれど今ぼくは
誰かのために土を耕し
ぼくを知らない者のためにも
草木を育て
たとえぼくを楽しそうに罵倒する奴らにも
木の実をやるような生活をしてる
すごく
居心地が悪いんだ
けれど前の生活にはもどれない
なんのために生きているかわからなかった頃には
もどりたくない
人は変わっていく
それでいいと思ってる。
ぼくが何かに費やすことで
少し
小さな世界が変わるなら
__________________________________
この国の悪魔
薬を大量に飲む少女
腕に傷のある少年
ビルの屋上に立った貴方
この世でちっぽけな一人だと
わかっていたとしても
認められない現実
避けたいの
逃げたいの
どうかその手を取れるなら
貴方からその手段を奪えるなら
私は何だってする
禁じられたことだって
簡単なのよ
その薬を捨てて
どうか手首をなでてあげて
そんな高いところにいかないで
どうかどうかたった一人の
貴方を愛してる者が現れること
信じてずっと信じて
私がここにいること
貴方がしないなら
私がしてあげる
この国の法を犯すことくらい
簡単なことなのよ
__________________________________
君の部屋のさがしもの
散らばった部屋の中でさがしものをして
ないなんて諦めちゃだめだよ
きっとまだ探してないところに
ひっそり隠れているんだ
必ずある
昔つかってた手提げの中とか
ちょっと暗い場所とか
忘れないで
ないなんて言わないで
ほら
君のその手にあったものは
大切だったでしょ?
それをまた見つけることに
またお気に入りにすることに
「なくしちゃうかも」って恐怖は捨てちゃって
また手にするんだ
ほら
暖かい
また安心して眠れるよ
__________________________________
少年は優しい瞳をしていた
昔あれほど
ないと思っていた物があって
その焦りが少年に暴力という道を与えた
粗末な裏路地で
がむしゃらに誰かを殴りつけて
何倍も殴り返された
そのときの瞳は
死に物狂いの兵士のようで
今 風に吹かれながら
おだやかな草原に
少年はたたずんでいた
昔あれほど
ないと思っていた物
それを生まれたときから持っていたと気付いてしまった
自分がおろかだったことを知った
体中に治らなかった傷の痕
彼の治らない傷あとを心配創に見つめる
二人の年老いた女性と男性
彼らを見る少年は
優しい瞳をしていた
__________________________________
すべての美しきもの
雑音を鎮めて
空気を吸って
美しき花を見る
それらが私に安らぎを与えてくれる
次不幸がこようとも
大地を蹴って
太陽を浴びて
美味なるものを食べる
それらが私に力をくれる
次悲しみがこようとも
うたを歌って
絵をえがいて
おどりを踊る
それらが私をはずませる
次沈みがこようとも
全ての美しきものは
私にプラスをくれていることを
忘れてはならないと
今ここに書き記す。
__________________________________
夢を見てた
どしゃぶりの中
何時なのかわからないくらい暗い路上で
独り立っている自分
雨に濡れてびしょびしょで
体が冷たくて
でも
目頭だけ熱くて
そんな中
もう意味ないのに
かさが現れる
振り向くと
誰かがこの寒い中
白い息を忙しく吐き出しながら
探した
そうつぶやく
そういう夢を見てた
いつかこのどしゃぶりの中
見返りをもとめないままに傘をさしてくれる人が
現れるんじゃないかって
息を切らしながら
私なんかを探しに
必死になってくれる人が
現れるんじゃないかって
そういう夢を見てた
目が覚めるとからっぽで
涙も出なかった
__________________________________
生きるって、すげえ怖い
生きるって、すげえ怖い
“いつか死ぬ”って爆弾を抱えて
歩いていくんだ
死ぬより辛いことって
なんだろう
腕がなくなったり
女の子なら顔に傷がついたり
目が見えなくなったり
生きるって、すげえ怖い
“自分が消える”地雷が
明日に埋まってるかもしれない
生きることって
なんだろう
何かすごく大切なものを亡くしたりして
絶望を感じても
まだ死んでない
ここにいる
すげえ怖い
怖い
それでも
前へ進まなくちゃいけない
この中で
ほんのわずかでも光を見つけられたら
それに猛進しても
いいよね?
__________________________________
現在地2007.06.19
誰もぼくを見てなどいない
「それでもいい」と笑っていた
あの頃の無垢なぼくにもどりたい
いつからだろう人の羨望の目が
ほしくてたまらなくなったのは
いつだっただろう誰かの心が
ほしくて泣き崩れたのは
高慢になっていくぼくだけど
どうか笑って見ていてと
さらに欲をいいはじめて
取り返しのつかないことになっていた
「純粋なんて言葉は
ぼくに似合わなくて良い」
いつからかそんなことを口にしはじめた
そのときにはもうすでに
誰もぼくを愛してなどいなかった
ひとり ぽつんと
部屋にいた
明かりをつけるのさえ
わずらわしく感じた
このまま
もっと奥へ―
ある日きゅうに光がほしくなった
唐突だった
でもぼくの現在地は暗闇
誰かの優しさを欲したときには
誰がどこにいるのかわからなくて
やっと空虚に気づいた
そして心は悲しく
手が動かない
息をしていない
体は無感
声も出せない
けれどただ
涙だけは出ていた
そのうちこれが悲しいという感情だと気づいた
どうして悲しいのかは
わからなかった
心には悲しみだけが住み着いた
ここから逃げたいという思いが
そこから生まれた
そのうち動かなかったはずの手が
何かを欲し始めた
だけどまだ
動かなかった
体は死んでいた
息もしていない
それが妙に
悲しくて
一気に息を吸ってみた
久しぶりの空気
すごく体が痛くて
今までよりたくさんの涙が出た
そしたら体が少しずつ動き
そして心は
悲しくなかった
__________________________________
4人の人
小さいころのおろかさで
わたしはイエを壊してしまった
罪の意識は消えずに
今もまだこの胸に残ってる
父はわたしに死ねと罵った
母はわたしをいらないと言った
兄はわたしと喋らなくなって
わたしはひとりだれもいないところで懺悔した
みんなばらばらになった
それなのに
数年のときを経て
父はわたしを生かすために身を削り
母はわたしの帰りを待ち望んだ
兄は少しずつ口を開き
わたしをひとりになどしなかった
凍える冬
暖かいこたつに
4人やっと
そろう日がきた
ながかったねと心の中でつぶやき
ひとりかくれて涙を流した
もう一度おさないあの頃へ帰ろう
みんな一緒だったあのころへ
大切なあなたたちが居たイエへ
みんな同じ屋根の下
__________________________________
旅の序章
空は暗黒 少年は行く
この町に光などない
あるのは憎悪と気だるさと
金だけだ
空は暗黒 少年は笑う
悪いか?全て捨てるんだ
こんな醜いもの全て
捨ててやるンだ
空は明瞭 少年は怒る
ほらみろ
こんなにも
こんなにも
あの町と違う
空は明確 少年は笑う
手には荷物を
顔には笑みを
心には
勇気を
暗闇の町などとうに抜けた
さあ
旅のはじまりだ
__________________________________
死んだぼくの絵
ぼくは絵が描きたくて
一生それで生きていきたくて
ただそれだけを願ったかのように生まれてきたような気がして
生きてきた
親の罵声を浴びながら
反対を押し切って
絵の学校に入った
うれしくてうれしくて
たまらなかった
全てぼくの宝だった
ひとつひとつの色が
一本一本の線が
全てぼくの宝だった
学校の合間
親から罵声を食らう合間
唯一絵がかける時間
一本の線が命
動かないはずの絵が
昔はいつも動いてた
飛び跳ねたり笑ったり泣いたり怒ったり
つぼみの絵の花が明日は綺麗に咲くんだ
毎日毎日かいて
その暮らしが当たり前になった今
いつのまにかその気持ち 無くしてた
忘れてた
すごく悲しかった
なんて高慢になってしまったんだろうと
鼻がつんとした
さっきまで描いてた絵をみたら
その絵から
なんの感情も汲み取れないんだ
全く動かないんだ
なんだかぼくの絵が
死んだ気がした
大粒の涙があふれてきたんだ
ぼくがぼくの絵を
殺したんだ
上手く描きたい一心に
絵をただの紙としてみてた
ぼくがぼくの絵を殺したんだ
ごめん
ごめんね
そんなことをしたのにこの手が
まだ描きたいって言ってんだ
もっともっとたくさん描きたいって言ってんだ
もう一度 ペンをとってもいいかな
もう一度 線をひいてもいいかな
絵に命を吹き込む権利 ぼくに
まだあるかな
二度と命のない絵など描かないと誓うから
ぼくに
もう一度
__________________________________
4は飛ばして5(かきたくなttry
一刻と過ぎていく寿命
近づく死
目の前の恐怖を
いま
振り払えるか
何も恐れることなく
どこまでも進んでいける勇気を
何よりも強い決意を
その恐怖に打ち勝つことくらい
簡単さなんて笑っていた
幼いころの自分を
いま
憎まないで進め
何も恐れることなく
どこまでも愛し合える心を
何よりも強い思いを
死ぬまでにこの恐怖に打ち勝ってやる
目を背けずに戦ってやる
運命(おまえ)になんか負けない
__________________________________
17才の彼と風
複雑怪奇な17才の春
どこまでもカオスな心を持って歩く少年に
吹き付ける風が涼しくて
泣けちゃうんだ
「単純に見なきゃ
見えないものがあるんだ
複雑な心を持った今の僕じゃ
見えないかもしれない」
どこにだって気象がありゃ風が吹く
そんなの中学のとき習った
それでもこんな複雑怪奇な僕に
吹き付ける
ただそれだけの単純な風が優しかった
それだけなのに
泣けちゃうんだ
かっこ悪いって思っても
風に泣くんだ
__________________________________
黒い奇術師
その体は踊るように舞い上がった
ただ一直線に光る目は先を見た
「夜など身を隠す道具にすぎない」
黒い奇術師は言った
誰も止めることのできない音速
優しさなどとうに捨てたと
彼は笑う
人の命など、こうも単純に―
その奇術は怪しげに光を放った
数人の男が倒れた
ほどなく動かなくなる
誰にも止めることのできない光速
暖かさなどはじめから知らないと
彼はあざ笑う
人の命など、こうも簡単に―
夜の闇に身を隠した黒の奇術師
朝日がのぼるころ
そこには血以外の水滴が残っていたという
いったいそれが何なのかは
誰も知らない
__________________________________
どうか聴いてと(必死な人の言葉)
町の雑音の中にこだまする
子供の叫び声
満面の笑みのその子供
声は
叫んでる
聞こえますか
僕らの声
あたりに散らばる罵声のノイズに
かき消されてなければいいんだけど
聞こえますか
僕らの声
涙など
とうに枯れてしまう
のどは
もうつぶれてるんだ
だから聴いて
耳でじゃなくて
どうか
どうか
心で
__________________________________
僕らの弾丸
強くなるために
ふにゃふにゃになりながらもがき戦う
その姿が醜いといわれても
僕は戦う
大事なものがあるから
ぐしゃぐしゃになりながら鞘から銃を抜こう
たとえ大切な人の涙を流すことになろうとも
僕は弾丸を奮う
次を戦うために
ぼろぼろになりながら立ち上がろう
その後ろにもまた
同じような姿で戦う友がいるから
その勇姿を誇りに
そのけたたましさを引き金に
僕らの弾丸は世界へ飛ぶ
千の銃をしまって億の弾丸を持つぼくら
その中で本物の銃を手にしてしまった人もいた
悲しき心の穴に
陥って出られずに
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ともぐい 河崎 秋子
(2024-12-03 13:03:05)
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(2024-11-14 14:54:38)
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(2024-12-03 08:16:40)
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