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サユリ [ 白石晃士 ]
家族7人で念願の一戸建てに引っ越してきた神木家。しかし、そこは近所でもうわさのいわくつきの家だった。新しい生活を始めるやいなや、家族が一人ずつ死んでいく。長男、則雄は同級生の住田から警告を受ける。神木家を襲った怪異の正体は?残されたのは則雄と認知症を患う祖母、春枝。だがその春枝が突如覚醒し、往年のエネルギーと精進した太極拳のパワーとで則雄とともに怪異に立ち向かう。
夢や希望をもって中古住宅に越してくると、たいていその家族は怪異に襲われてしまいます。
例えば『死霊館(2013年)』でのペロン一家(やはり7人家族)は、田舎の屋敷を購入し移り住んだら、早々に様々な異変に苛まれました。まず、ペットの犬が家に入るのを拒み、引っ越した翌日に死にます。続いて家中の時計が3時7分で止まり、四女シンディが夢遊状態で歩き回ります。さらに、おかあさんの身体には痣が広がり・・・。
この事態に、ペロン家は、心霊研究家として名高いウォーレン夫妻に助けを求めました。
一般人においては、心霊現象に対抗する手立てなどありません。
そんなときに頼りになるのがプロフェッショナル、専門家です。
プロ、専門家は、ゴーストハンター、バンパイアスレイヤー、霊能者などと呼ばれたりします。
最も有名なのが、ドラキュラに対抗するヴァン・ヘルシング教授でしょう。
そして、実在の人物では先述のウォーレン夫妻です。
はたまた日本では、阿佐ヶ谷姉妹「ミホさ~ん」ではなくて、比嘉姉妹、『来る(2018)』の霊能者。
あるいは小説『営繕かるかや怪異譚』シリーズの営繕屋・尾端もそれに該当するでしょう。
いずれも、とても頼りになる方々です。
映画『サユリ』においても、専門家のように状況を理解し、見通しをもって対応策を立て、さらに怨霊に立ち向かう人がいました。
まさかの春枝ばあちゃんです。
映画の最初のほうでは、もしかしたら則雄の友達の住田さんが、ゴーストハンター的な役割をするのかと見ていました。
住田さんには霊感があるので。
そんな流れの中で、春枝ばあちゃんはまったくの予想外、まさに思わぬ伏兵現る、ですよ。
だって春枝ばあちゃんは認知症なのですから。
ところが、一家が全滅の危機に直面し、則雄は頼りにならない状況で、一番助けが必要だと思われた春枝ばあちゃんが、認知症から抜け出して力強い存在となったのです。
ヒーローというのは、二面性が効果的に作用するとじつに痛快です。
例えば、『アラン・ドロンのゾロ(1975年)』です。
剣の達人ディエゴ(アラン・ドロン)は、ニュー・アラゴンの総督職にありながら、普段はまったくの無能で臆病、なよなよしている。
しかし、ひとたび黒マスクに黒装束の快傑ゾロに変身すると、民衆を救うために無敵の強さで大活躍するのです。
無能と無敵の意外性や落差は、解放感を味わわせ、溜飲が下がります。
春枝ばあちゃんも、家族の手を煩わせる立場から奇跡の大逆転、酸いも甘いも嚙み分けた、力強く頼もしい女武芸者へ。
【中古】 アラン・ドロンのゾロ/ドュッチオ・テッサリ【監督】/アラン・ドロン【主演】
則雄に対して春枝ばあちゃんは、カラダを鍛え、しっかり食べることで生命を濃くするようさせ、軟弱なメンタルではとり殺されてしまうから勇敢に振る舞うようにさせて、怨霊に立ち向かえるよう導きます。
かのヴァン・ヘルシング教授も、ドラキュラから愛妻を守ることができるよう、夫のアーサーに「ここで弱気になってはいけません」と𠮟咤激励していました(『吸血鬼ドラキュラ(1958年)』)。
そうです。相手が怨霊、吸血鬼というはかり知れない魔物だからといって、恐れおののいていては、劣勢になるばかりです。
雀鬼、桜井章一氏も「負けの99%は自滅である」とおっしゃっています。
吸血鬼ドラキュラ [ クリストファー・リー ]
さて、この映画で猛威をふるうサユリの亡霊です。
怨霊というのは、古い怪談映画では、虐げられ、殺された女性がその恨みをはらしに出てきました。
「四谷怪談」のお岩さんや「番町皿屋敷」のお菊さんをはじめとして。
標的となったのは民谷伊右衛門であったり青山主膳だったり。
今回のサユリは、父親から虐待を受け、ひきこもり、そして家族に殺されてしまいます。
そして、住んでいた家に引っ越してきた他人の家族を取り殺したのです。
時代は変わっても、立場の弱いものの怨念は強すぎると感じざるをえません。
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