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October 26, 2025
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カテゴリ: 特撮関連書籍
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光線を描き続けてきた男 飯塚定雄
飯塚 定雄/松本 肇【著】
洋泉社(2016/01発売)


巨大怪獣が現実世界に出現することはありません。
しかし、あたかもそれが現実に起こったかの如く目の当たりにできるのが特撮映像です。
特撮の魅力は、実写映像で超現実を見せてくれるところだと思います。

この特撮は、日本のお家芸といえるのではないでしょうか。
そうした特撮映像を制作した方々の中でも、光学合成、特に光線の分野で大きな実績を残したのが飯塚定男氏です。

特撮で、例えば都市の実景に怪獣が出現した場面は、光学合成が行われます。
こちら側には建物の下で逃げる人々がいて、向こう側に建物の背後に怪獣が暴れているとします。
この場合は、マスクをつかって(それぞれの一方を隠して)二つの場面をひとつのフィルムに焼き付けて合成するわけです(固定マスク)。
例えば、『モスラ(1961年)』の小美人と他の登場人物が対話する場面など。
そこでは、フィルムの1秒間のコマ数が24コマなので、24コマ✕時間(秒数)のマスクがつくられることになります。
しかも、当時のテクノロジーでは、なかなかスムーズにはめこめない。
ところが、そうした状況にもかかわらず、光学合成において飯塚氏は粘り強さや職人芸を発揮し、あの特撮の神様、円谷英二特技監督をして、「お前は移動マスクの名人だ」と言わしめるほどの高クオリティの映像をつくりだしたとのこと。(120P)

さらに、怪獣が吐く光線などの合成では、アニメーションの技術も用いなければなりません。
それも、簡単にできあがるものではありません。
「モスラの繭を焼いた原子熱線砲の線画には、アニメーション素材を三つ作っているんだよね。一つ目は外側のボケ素材、二つ目はその中を走る光線、三つ目は真ん中の電球から出る一番強力な芯というつもりで分けたんだ。もちろん全部のカットでだよ」(105P)
正直言って、光線を描くのに、そこまで手の込んだ作業をしているとは知りませんでした。



説得力のある光線を描くためには、質と量の両面をこれでもかというほど充実させなければなりません。
よりよい映像表現をめざした成果として、キングギドラの引力光線の表現については、「光線までもが演技をしている」(P164)と評される域にまで達したのです。
なにせ、キングギドラの三本の首から、手当たり次第にジグザグ光線が放たれるのです。
しかも、スクリーンの右から左、あるいは左から右という光線ばかりでなく、奥から手前に襲ってくるものもあるのです。

三大怪獣 地球最大の決戦【Blu-ray】 [ 夏木陽介 ]

我々は、ともすると特撮映画について、神様円谷英二特技監督の名前が大きすぎて、特撮のすべて取り仕切っていると思いがちです。
しかし、この本を読んでいると、必ずしもそうではないと読み取れます。

「『怪獣総進撃(1968年)』でゴジラが港に来て熱線をバァーッと吐くカットがあったんだけど、港がバァンって爆発した瞬間にゴジラが下向いちゃってるんだよ。口の向きと火薬の爆発の位置が全然合わないんだよ。「オヤジさん(円谷特技監督)、合わない」って言ったら、「そんなもんうまく合わせろ」って。しょうがないから、水面を這わすようにして曲げたんだ。そんなのもあった」(P162)

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こうしたやりとりからは、円谷特技監督が、自分のイメージを映像化するにあたって、飯塚氏にまかせて大丈夫という心持があったことが分かります。
円谷特技監督が無理難題を投げてきても、飯塚氏は、創意工夫と熱意でなんとかしてしまう。
だから、円谷特技監督は、飯塚氏を厚く信頼していたのでしょう。

また、飯塚氏も、円谷特技監督を深くリスペクトしていたと感じられます。

飯塚氏の懐古に「(『モスラ』の原子熱線砲は)よく見ると、そのライトが点くタイミングと、線画が出るタイミングがずれているんだよな。ずれたんじゃなくて、(中略)点きました、出ましたじゃないんだよな。熱線砲のランプがファッと点いたら、エネルギーが集中するまでの間を持たせて、バッと出るっていうようなことを(円谷特技監督は)考えているんだよ。ほんのちょっとしたタイミングなんだけど、こういうことが大事なんだよな。(P106)」というものがあります。

この経験が、飯塚氏のつぎの実践につながるわけです。

飯塚氏は言います。
「それまでのコジラの光線っていうのは、火薬の爆発に向かってバアーって噴くわけだけど、上がりを見ててね、「当たりました、はい、ドカン」ってのは、ただ繋いだみたいで迫力がないんだよ。(中略)俺は巨大なモノがそんな一発で爆発するわけがねぇなって思ってたわけよ。光線が通ったらすぐにドンって爆発したんじゃ面白くねぇって。大砲の弾だったら分かるけど、光線っていうのは違うんだと。(中略)俺はそこが熱せられて爆発するわけだから、光線が当たってからほんの数コマの間を取ったあとに、ドンっていった方が「強い」って思ったんだ。それで、ほんの3コマぐらいずらして爆発したカットが、ものすごく強く感じたんだな。オヤジも認めてくれたよ。だから、キングギドラのときは、よく見れば分かるように、光線は爆発する3コマぐらい前に、バババって先行していくんだよ。オヤジがキッカケの編集を「お前やっとけ」って言ったのは、そういうタイミングを覚えたから任してくれたんだと思ってるよ」(P163)

これらの微妙な「間」が、特撮のリアリティにつながるわけです。
そうした円谷特技監督の繊細な「間」を読み取った飯塚氏もすごいと思います。
さらにそこから学んで、飯塚氏がご自身の表現につなげていったため、円谷特技監督は「お前やっとけ」と言ったのでしょう。

最後に、以下の飯塚氏の言葉について、とりわけ大きな感銘を受けました。
「確かに今までできなかったことがデジタルだったら簡単にできるわけだよ。その簡単にできすぎることが、かえって人間の知恵っていうのを閉じ込めているように思うんだな。今はコンピューターがあるために、逆にクリエイティブな面を出さなくったってできるっていう感覚があると思うんだよ。俺はそれが怖いわけ。やっぱり作るのは人間なんだと、使ってる道具がたまたまコンピューターなんだっていう感覚でやってほしいわけよ。フィルムのときは機械を仕切る人間の人智っていうのがあったと思うわけ、ところが今は先にデジタルありきで、機械がドンドン先行して人間がそのあとに付くようになっちゃったところがある。だけど、俺は口はばったいけど、そうじゃねぇだろってことを、とにかくデジタルやってるみんなに言いたいわけ。何でもできるからって、必ずしも良いものができるとは限んねぇ。」(P251)

円谷特技監督も、飯塚氏も、まずイメージがあり、それを表現していきました。
よりよい表現するために、機械設備も材料も乏しい中で、創意工夫を行いました。
そういったところに、特撮の凄味を感じるわけです。

加えて、目的と手段は別なものです。
フィルムを加工する技術やデジタルであるコンピュータグラフィックスは、手段なわけです。
目的は、イメージを映像化すること。
飯塚氏は、「俺は最初からデジタルを否定してないわけ」とおっしゃっています。
しかしながら、飯塚氏は、目的と手段を勘違いする状況があることを危惧しているのです。

「デジタルだったら簡単にできるわけだよ。その簡単にできすぎることが、かえって人間の知恵っていうのを閉じ込めているように思うんだな」
「コンピューターがあるために、逆にクリエイティブな面を出さなくったってできるっていう感覚がある」
ここで述べられているのは、「思考停止」状態のことだと思います。
例えば「思考停止」状態とは、いい学校に入るとか、いい企業に就職するとかについて考えてみます。
いい学校やいい企業とは、世間的に「名」があるということでありますが、つまりは文中の「デジタル」に相当します。
それらは生きるための手段なのに、目的化しているの実態があるのではないか?
そして、そこを勘違いしているのは、「思考停止」状態なのではないか?
そこに、飯塚氏の言う、「機械(世間的な名前)がドンドン先行して人間がそのあとに付くようになっちゃったところ」はないだろうか?
自分のやりたいこと(「クリエイティブな面」)があるのか?

昨今、「忙しいあなたに」と便利な(手を抜くための)商品、サービスなどを売りつけるビジネスが目に付きます。
「忙しい」ことが常態化していますが、なぜ、「忙しい=時間がない」ほうを疑ってみないのか?
「作るのは人間なんだ」
言い換えると、「生きるのは人間なんだ」​





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Last updated  November 21, 2025 09:00:12 AM
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