ランスの日記

ランスの日記


「着いたよ。」
小一時間近くたっただろう。僕を抱きかかえたまま、歩き続けている。
途中で休むこともなかった。
「大丈夫?痛むんだったら、休むけど、どう?」
「僕は大丈夫です。あなたは歩き続けていますが平気ですか?」
遠慮がちに言った。これ以上わがまま言ってはいけないと思ったからだ。
「私は平気。慣れてるから気にしないで。」
そう言うが、疲労しているのだろう。呼吸が荒くなっている。
いきなり彼女が叫んだ。
「クイ~。どこ?ちょっと来て。」
足音がする。「おかえり、レイナ。」
優しい声。この人も女性のようだ。
「どうしたの?その子。」どうやら僕のことのようだ。子ども扱いされている。少し悲しかった。そして追い討ち。
「拾ってきた。」
さすがにこのときは落ち込んだ・・・僕は猫や犬と同じ扱いをされているようだ・・・。
「あの・・・僕は、犬や猫じゃないんですけど・・・」
少し笑いながら、冗談だから、と言われた・・・
「で、どうしたの?」少し笑いながら聞く。
「魔物に襲われてから助けたのよ。」つまんなさそうに答える。
いきさつを説明すると、クイと呼ばれた女性が言った。
「足か・・・レイナもよく怪我してたね。」笑いながら言った。
「ちょっとまってね。今治すから。」
治してくれると聞き、ほっとしたが、すぐ疑問が生まれた。
「治す?手当するの間違えじゃないんですか?」
そうよ、と軽く言うと、何か唱え始めた。そして・・・
「・・・この者の傷を癒せ・・・ヒーリング!」
暖かいものを感じたかと思うと、痛みが無くなっていく。
「これでよしっと。もう立てるはずよ。」
そう言われたので、立ち上がった。動かない足が動いた。
「治ってる。なんで、なんで治ってるの?」ストレートに聞く。
「私、魔法が使えるから、これくらいは、ね。」
魔法・・・物語の中だけだと思っていた。ずっと・・・。
そして確信した。ここは・・・ここは僕のいた世界じゃない。
本当に、願いがかなってしまった。
「とりあえず、顔についた血、洗い流そうか。」
近くに小川があるらしい。
「案内するからついてきて。」
足音がする。先に歩きだしたようだ。僕は、気付いたことを言った。
「あの・・・前見えないんで・・・どこにいるか、わかんないんですけど・・・」
みんなして笑った。手を引っ張ってもらい、小川に行き、顔を洗い流した。

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