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2008年02月15日
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吉永小百合主演の「母(かあ)べぇ」を観た。それは1940年2月、東京で暮らす家族が楽しい夕食を囲んだ翌早朝、ドイツ文学者である夫が治安維持法違反で検挙され、残された母娘の波乱の日々が始まる…。のだが、此処まで観たとき全く同じ場面を体験した方がいて、その方から生々しい話を聞いた時のことを思い出していた。山岳俳句で有名な俳人「石橋辰之助」の奥様からであった。その話を聞いたのがかれこれ、10年ほど前の事なのにまるで昨日のことのように蘇った。京大俳句事件、俳句弾圧があったという。

「…昭和15年5月3日でございました。朝の4時半、戸を開けようとする音がしました。余りにも早い訪問者ですから、もしや?という気持ちで鍵を開けようとすると、その鍵が落ちるか落ちないかという間に、向こうからぱっと開けて特高4人が土足で入ってまいりました。その内の2人は主人の書斎へ、後の2人は寝ております主人の頭の上にまいりまして「起きたまえ!」そう言っていました。そのうちに書斎の中の本がバタバタと倒れる音がしました。その音を聞き主人は、特別に本を大事にしていた人でしたから「君達は何をするんだ!君達が読んで解る本など一つもない!」と申しましたが、そんなことには耳も貸しません。…そして全部の本を出して、その本を荒縄で縛って、担ぐのは主人でした。…そのまま連れて行かれて…その後の様子は全く分かりませんでした。」と。

80歳はとうに過ぎているという千鶴枝夫人は、凛として静かに当時のことを話してくださったが、私たちには余りにも衝撃的なことばかりで、まるで凍り付いたように誰もが押し黙って聞いていた。俳句を作っていただけなのに、なんという時代だ!。戦時下でマインドコントロールされた婦人運動家たちも、贅沢品撲滅運動とやらを真剣に行っていたという。何もかも狂っていた時代ではなかったのか。現在も先の見えない不安の時代ではあるけれど、私はこの映画の主人公「野上佳代」役の吉永小百合と、俳人・石橋辰之助の奥様の立ち振る舞いとが重なって、熱い思いが何度も込み上げてくるのをどうすることもできなかった。どのくらいの人々がこの「特高」の為に理不尽な苦しみを味わったことだろうか。もう二度とこのようなことがあってはならない!「母べぇ」を見終わって出口に並んだが平日のせいもあってか、若者は一人も居なかった。

映画館を出て繁華街を通り、ゲームセンターでたむろしている若者達を見て「もし、この母べぇを観ても彼らに理解が出来るだろうか?」、「特高」という言葉が耳について離れないまま、ふと、そんなことを思った。

             戦争が廊下の奥に立ってゐた   渡辺白泉

蝋梅。.jpg






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最終更新日  2008年02月16日 11時58分15秒
コメント(9) | コメントを書く


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特高  
山句都 さん
りんどうさん!!!。今晩は。
石橋辰之助さんの奥さまをご存じであったとは、びっくりもし感激でもあります。私も俳句に入るきっかけは登山であったので、石橋先生の俳句の感化が心に残っていてます。福田蓼汀さんに心服して俳句を始めた私です。りんどうさんは私の大先輩なのですねーー。
心安く話し始めてしまったのが恥ずかしいです。
許してください。
土曜教室のメンバーなのでしたか?。私は今年研修通信俳句会に入会した初心者です。
これからもよろしくご指導お願いいたします。 (2008年02月16日 20時18分27秒)

Re:特高(02/15)  
りんどう21  さん
山句都さん、いらっしゃい!

>りんどうさん!!!。今晩は。
>石橋辰之助さんの奥さまをご存じであったとは、びっくりもし感激でもあります。私も俳句に入るきっかけは登山であったので、石橋先生の俳句の感化が心に残っていてます。福田蓼汀さんに心服して俳句を始めた私です。りんどうさんは私の大先輩なのですねーー。

◇まあ!思わぬところで知り合いで光栄です。石橋辰之助という俳人は私は写真でしか知らないのですよ!奥様に会えた切っ掛けは、私の先生の先生、古沢太穂先生(7年前に83歳でお亡くなりになりましたが)が親しい間柄だったそうで「会ってその当時のお話を聞く」ことになったのです。思い出話をとつとつと、悲しみを堪えながらお話ししてくださったのですが、物静かで凛として素敵な方でした。

辰之助は投獄されたけれど後に帰されたそうです。その間、可成りひどい思いをしたようですが、そのときの事をとうとう話そうとしなかったそうです。

けれどもその頃から常に何かを考え、苦悩しているようだったとのこと。その後戦争が激しくなり、自分達は疎開をし離ればなれで暮らし、東京からの電報で呼ばれ17日間の看病の末40歳でお亡くなりになったという事でした。私はそのとき、一回だけお目に掛かったのですが忘れることが出来ない方です。
(2008年02月16日 21時05分51秒)

俳句も川柳も  
まろ0301  さん
 俳句も川柳も、もちろん小説も哲学も教育も、本当にあらゆる分野が戦争中に「危険思想」として弾圧されています。
 特高の後ろにいるのは、「思想検事」と呼ばれる人たちなのですが、彼らは自分の全能力を駆使して、国家にとっての危険思想(平和を望み、戦争を嫌い、命をいとおしむ)を嗅ぎだし、逮捕者リストを作成しています。
 映画の中では吹石満さんが演じていた人物です。
 「非常時」となって、人々は検閲をはばかって「奴隷の言葉」で書こうとしますが、その中からさえも「危険思想」の匂いを嗅ぎつける・・・なんという「能力」「学力」なのでしょうか。
 ちなみに、彼ら思想検事たちは戦後もほとんど罪に問われていません。
 あの映画、じっくり観れば観るほど怖ろしい映画なのですが。ベルリンで賞を逃したのは残念でした。
 「きっこのブログ」というブログの2005年8月18日の項で、「京大俳句事件」を取り上げています。 (2008年02月17日 16時29分10秒)

Re:俳句も川柳も(02/15)  
りんどう21  さん
まろ0301さん、おいで頂き有り難うございました。

>俳句も川柳も、もちろん小説も哲学も教育も、本当にあらゆる分野が戦争中に「危険思想」として弾圧されています。

◇そうだったと、俳句をやっていて初めて知ったことばかりです。「危険思想」とは誰の指示だったのでしょう。きっと「特高」という地位を利用して天狗になっていた奴らでしょう。そんな輩が戦後何の罪にも問われず巧く泳ぎ回っていたのでしょうね。

思えば本当に悔しいです。戦犯とは「特高」という名の奴らを裁かないでなんとする。「国の為に死ぬ」ことが立派だと教育された時代!!ああ、言葉になりません。

>「きっこのブログ」というブログの2005年8月18日の項で、「京大俳句事件」を取り上げています。

◇この件ではもっと知りたい!と思っていました。本当に有り難うございました。

(2008年02月17日 22時16分45秒)

京大俳句事件。  
りんどう21  さん
まろ0301さんへ追伸。

◇さっそく「きっこのブログ」へ入り8/18日の「京大俳句事件」を読みました。このブログはコメントを書き込むことが出来ないのですね。一方的に読むばかりでしたが、それでも沢山のことを知りました。

(2008年02月17日 22時55分35秒)

平和  
たんぽぽ さん
私も「母べい」をみました。戦争は戦場の悲惨さだけではないのですね。今だったら当たり前の生活感覚が、戦時では異常な状態なんですね。そのなかで人間として正常な感覚を持てるかどうか・・・。母べいが疲労でたおれて町のお医者さんに診てもらった時、先生が「診療代はいらないよ。ご主人の御祝いだ。」と言って帰りました。どんなにか嬉しかったでしょうか。とにかく戦争は人を人でなくしてしまうところが、いち番恐ろしいところだと思います。山田監督も言っていました。今の世の中大変になってきているけれども、自由にものがいえる今のほうが何百倍もいい。決してあの時代に戻ってはならない、と。この映画を撮る事はご自身の使命、どうしても今言っておかなければという気持ちでつくられたようです。とにかく計り知れないほどの犠牲の上に築かれた平和をどこまでも大切にしたいと改めて思いました。 (2008年02月19日 22時07分42秒)

Re:平和(02/15)  
りんどう21  さん
たんぽぽさん、そうですね。

>私も「母べい」をみました。戦争は戦場の悲惨さだけではないのですね。

◇本当にそう思います。今は自由にものが言えて、品物が溢れていて「平和呆け」してしまった。あの頃の苦しい時代のほうが、助け合う暖かさがあった!ということも考えさせられますね。こんな時代があって、その上で現在の平和があるのですね。このことを決して忘れないでいようと思います。 (2008年02月20日 18時04分38秒)

心の自由  
浜の蛙 さん
私も見てきました。そして「日の丸・君が代」強制反対・神奈川こころの自由裁判があることを知り、傍聴に行きました。傍聴は人数制限でできませんでしたが、2月29日から3月23日まで、新宿の紀伊国屋ホールで「歌わせたい男たち」が再演されることを知りました。
2005年に初演されさまざまな賞を受賞した永井愛さんの作品です。
「日の丸・君が代」の強制を描いたこの作品は最初、イギリス・ロンドンの劇場で上演されるはずでした。しかしあらすじを聞いた劇場の支配人から、「これはいったい、何十年前の話ですか?」「もうちょっと普遍的なことが書けないでしょうか」「この芝居をロンドン市民に理解させることは不可能です」「この芝居は変だ」「もし学校でこんなことがあったなら、全国の先生がストライキをして国中が大騒ぎになるはずだ」「もっと文化的に越境が可能なコラポレーションをしましょう」などと言われ、この芝居は上演されなかったそうです。
日本国民とイギリス国民の自由への認識の差を思い知らされました。
私も母べえをみて二度とあんな時代に戻してはならないと思いました。
3月5日の入場券が取れました。どうやって「歌わせたい男たち」が私たちを取り込もうとしているのかじっくり見てきます。 (2008年02月26日 11時03分33秒)

Re:心の自由(02/15)  
りんどう21  さん
浜の蛙さん、初めましてようこそm(__)m

◇書き込み有り難うございました。

>私も見てきました。
>「日の丸・君が代」の強制を描いたこの作品は最初、イギリス・ロンドンの劇場で上演されるはずでした。しかしあらすじを聞いた劇場の支配人から、「これはいったい、何十年前の話ですか?」「もうちょっと普遍的なことが書けないでしょうか」「この芝居をロンドン市民に理解させることは不可能です」「この芝居は変だ」「もし学校でこんなことがあったなら、全国の先生がストライキをして国中が大騒ぎになるはずだ」「もっと文化的に越境が可能なコラポレーションをしましょう」などと言われ、この芝居は上演されなかったそうです。
>日本国民とイギリス国民の自由への認識の差を思い知らされました。
>私も母べえをみて二度とあんな時代に戻してはならないと思いました。
>3月5日の入場券が取れました。どうやって「歌わせたい男たち」が私たちを取り込もうとしているのかじっくり見てきます。

◇そうでしたか。私の知らないことばかりです。いろいろ教えていただき感謝しています。3月5日に「歌わせたい男たち」を見た後の感想など、また書き込んで頂けないでしょうか。同じ価値観でものを見て考えることの出来る方々に会えることを改めて幸せに思っています。本当に有り難うございました。<m(__)m>
(2008年02月26日 12時32分17秒)

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