臥雲県-ただ一つの森の中-

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番外編 1




6月20日。ラキの本当の誕生日から19日が経っていた。Dandy先生からマラソン大会の説明があった。
「・・・・・・説明ハ、以上ダ。みんなガンバッテクレ。」
Dandy先生は教室を出て行った。猫無のところにラキ、幽海、雪、が集まってきた。剣はのどかの腕を引っ張り近づいてきた。
「くう~こんなイベントがあったなんてね~」
寝ていた猫無は頭を上げる。
「ん?なんのこと?」
呆れ顔でラキと雪が同時に言った。
「「寝てんじゃねぇよ!!なっ!!声合わせんな!!!」」
ラキと雪のにらみ合いが始まる。そして、ラキと雪は同時に胸ぐらを掴んだ。
「はいはい終了~」
剣がラキと雪の間に入って止める。ラキと雪は剣に間に入られては、けんかをやめるしかなかった。なぜなら、剣がどんな大男より、Dandy先生よりも恐ろしいからだ。
「あ、あの・・・マラソン大会やるそうですよ・・・・・・」
のどかが間を見て、話に入る。
「マ、マ、マラソン大会!!!?何キロ走んだ!!?」
隣で寝ていた母樹がすべて聞いていたかのように、話始めた。
「10キロですよ。そんなことも知らないんですかぁ~?」
「知るわけねぇだろ!!」
猫無が母樹を殴ろうとしたとき、そのにぎった拳をいつの間にか入ってきていた村雨が止める。
「やめとけって。それより、猫無余裕だな。こいつ殴る時間があるんだったら、今から走りこんだほうがいいじゃねぇのか?」
「えっなんで?なんか罰があるってわけじゃねぇし・・・。」
寝ていたことを知らない村雨はあきれた。
「話聞いてなかったのかよ・・・。簡単に言うとだな、校長の言いなりになるらしいぞ。けど・・・・・・」
マラソン大会のことを知っているような口調で話していた母樹が驚く。
「えっ!!今すぐ帰って走らなくては!!」
母樹は村雨が話している途中で急いで教室を出て行った。
「なんなんだあいつ・・・いいかけたことなんだけど・・・全学年で下から10位以内に入った人までだからな。」
猫無は安心する。
「な~んだ。下から10位なんて取るほうが難しいじゃん。」
たしかに、猫無達がいる学年の人数は約240人そのなかで下から10位なんて、本当に運動オンチか、ペース配分が苦手な人か、スタミナがない人じゃないと不可能だ。猫無は帰り支度をし始める。
「「おいおい、なにやってんだ。てめっ!また!!!」」
ラキと雪がまたにらみ合った。その間に猫無は荷物をまとめ終わり、教室から出て行く。
「あ~あ、のどか~。帰っちゃったじゃん。今日こそはいっしょに帰るんだって約束したじゃん。」
「で、でも~、やっぱり部活に行かないのはよくないから・・・・・・」
「いいじゃん♪、一日くらい。ほら、追うよ!」
剣は無理やりのどかの腕を掴み、のどかの席に行き、剣がのどかの帰り支度をし、教室を出て行った。
「だ、だめだってば~」
のどかの声が聞こえなくなったころ、幽海は帰り支度をしはじめる。村雨も隣のクラスに戻り、帰り支度をし始めた。村雨が幽海を呼びに戻ってきた。
「幽海!帰ろうぜ!!」
「うん!」
ラキ、雪を教室に残し、幽海、村雨は帰る。
「「お、おい!!待てって!!!」」
ラキと雪はまた声がそろったにもかまわず、幽海と村雨を追っていった。もちろん、2人とも授業道具なんて持ってきていない。

・・・そのころ、母樹は・・・
家の庭で走っていた。
「ちくしょう!!なんで今まで走ってなかったんだ!!負けてたまるか!!!」
いつも車を運転しているお手伝いの男が走ってきた。
「おぼちゃま!!新しいマラソン大会についての情報を入手しました!!」
「なにっ!!ほかにも情報があったのか!!」
「その罰を受けるのは、全学年、下から10位までらしいです。」
母樹は急に走るのをやめる。
「どうしました?」
「や~めた。全学年下から10位なんて取るほうが難しいじゃないですか。」
猫無と同じ理由で練習をやめ、家に戻り、横になり、好物のうまい棒(チーズ味)をほおばり、テレビをつけた。

のどかと剣は猫無に追いつくが、いっしょに帰れずにいた。
「なにやってんのさ~!いくよ~!!」
「やっぱり帰ろうよぉ~」
剣はのどかを引っ張る。のどかは踏ん張った。しかし、剣の力にかなうはずがなく、とうとう猫無の前に姿をあらわす。
「ん?のどかちゃんと剣じゃん。のどかちゃんって、家、こっち方面だっけ?」
「えっ!あっ・・・あの・・・」
「今日は家に遊びに来るんだ!ねっ!」
「えっ!あっ・・・うん・・・じゃ、じゃあ!急ぐから・・・さようならっっ!」
のどかは剣の手を引っ張り、猫無が見えなくなるまで走った。
「はぁはぁはぁ」
「なんで走っちゃうのさ~」
「だ、だって~」

・・・そして、猫無は・・・
自宅に着き、キッチンに置いてあった好物のゆで卵と水を手に取り、部屋にこもっていた。
「ただいま~」
ラキが帰宅する。部屋に入り、制服からジャージに着替えた。
「んじゃ、走ってくっから。」
猫無はラキが着替えている理由を考えながらラキのことを見ていたが、その言葉におもわず飲んでいた水をふきだす。それをラキは避けた。
「えっ!!?なんで!?」
「うわっ!!あぶねっ!!そりゃあ・・・負けたくねぇんだよ。」
「誰にさ?」
「自分に。」
持っていたゆで卵を落とす。そして、猫無も着替え始めた。
「おれも勝ってみせるよ、自分に。」
「お、おう!!(ちょっと言ってみたかっただけなんだけどな)」
ラキがホントに勝ちたい相手は自分ではなく、雪で、こないだ見た漫画にあったから言ってみただけだった。
「なにボーっとしてんのさ!ラキ行くよ!」
「ん?お、おう!」
今夜、ラキが走った距離は約5キロ。猫無は約1キロだった。

幽海は、家のお好み焼の手伝いをしていた。
「あの~お好み焼ってどう焼くんですか?」
「少々お持ちください!」
幽海の仕事はお好み焼の仕方がわからない人に仕方を教えることと、それでもできないお客のお好み焼を焼くことだ。普段は居候の雪も幽海と同じ仕事しているが、今日は1人。雪はどこへ行ったのだろうか。
「はっ・・・はっ・・・あいつに勝つんだ!!」
ラキと同じように走りこんでいた。おそらくあいつと言うのはラキのことであろう。
「おれのほうが強いんだ!!」

村雨は、ある場所に向かっていた。ある場所とは・・・・・・
「秘密だ。」
・・・・・・残念。


そしてなんだかんだで、7月2日。
猫無はあの日以来走っていない。そして、あれだけ張り切っていたラキと雪は3日で走るのをやめていた。いわゆる3日坊主ってやつだ。
校長先生からの言葉が終わり、女子の4キロが始まった。その間男子はちょっと走って体を温めるもあり、寝るのもありという自由時間が与えられる。猫無は横になって寝ていた。そこに母樹がよって来る。
「練習しなくていいんですか~?」
猫無は体は動かさず、目と口だけを開けた。
「今から体力使ってどうすんだよ」
「校長先生の話を永遠と聞く練習ですよ。」
「それはてめぇにもいえることだろ~が!!」
「どうですかねぇ~」
ゴール地点で歓声が聞こえる。どうやら女子のトップが戻ってきたようだ。女子のトップは・・・剣だ。ほんの少しだけ息を乱している。剣にとって4キロはほんの少しだけつらかったようだ。のどかの結果は、一番帰ってくる人数が多い中盤で、いつの間にか帰ってきていたと言う、のどからしい結果だった。疲れきっているのどかに剣が近づいていく。
「おかえり~のどか。大丈夫?」
「はぁはぁはぁ・・・だ、大丈夫・・・はぁはぁはぁ」
剣はのどかを背負い、次始まる男子の観客席に向かった。女子が全員帰ってきて、とうとう男子の番がやってきた。
「男子集合!!」
どこにいたのか今までわからなかったラキが先生の一言で現れた。
「おっ!やっと出番か。」
猫無が驚く。
「うわっ!どこにいたんだよ!!」
「秘密♪」
そして、地獄のマラソンが幕を開けた。スタートの合図。
「「おらぁ!どけや!!」」
一番最初に飛び出したのは、ラキと雪だった。スタートの合図と共に短距離を走るかのように、全力なのかわからないが飛ばしていく。はじめてから6秒後にはスタート地点から約100m離れた場所にいた。ラキ、雪に続いているのは、猫無、母樹だった。おそらく猫無と母樹は全力で走っているであろう。全力にもかかわらずもともと足が遅い為、ペース配分している人より少し早いくらいだ。その間に村雨がいる。
「・・・馬鹿かあいつら。絶対バテる。」
幽海はというと・・・ずっと後ろのほうにいた。
「あせらない、あせらない。」
「「ぜぇぜぇ・・・し、死ぬ・・・」」
スタート地点から約100m先でもう肩で息をしている猫無と母樹がいる。ラキと雪はというと、まだ、ハイペースで走っていた。
「はぁはぁ・・・少しつらくなってきたんじゃねぇの?」
「はぁはぁ・・・はぁ?んなわけぇねぇだろ!ぜんぜんいける!ってか、余裕。」
そういうと、またラキと雪はペースを上げる。全力で走り始めた。ラキと雪はこのペースでもう2キロ走っていた。このペースに影響されたのか、速いペースで走る生徒が増え、幽海の周りには誰1人としていない。幽海がマイペースに走っていると前に疲れきった猫無と母樹がいた。
「くう、おおちゃん、先行くね。」
「「ぜぇぜぇ・・・まて~・・・ぜぇぜぇ」」
幽海は猫無と母樹を簡単に抜かしその後もゆっくりと走る。
「おっ!やっときたか。」
村雨が途中にあるベンチに座っていた。
「どうしたの?むらさん。むらさんもつかれたの?」
村雨が立ち上がる。そして、幽海の横を走り始めた。
「いや。1人で走っていてもつまんねぇなぁって思ってな。」
「そうなんだ~。じゃいっしょに走ろっか。」
「もう走ってるし!!」
「だねぇ~」
2人で並んで走り始めてから、40人以上の生徒を抜いた。どの生徒も最初に飛ばし、スタミナ切れで歩いている生徒だった。
「幽海と走っていて正解だぜ。」
村雨1人だと、ピッチを上げ、今頃疲れていたであろう。
ラキと雪はちょっとペースが落ちていた。しかし、全力で走ってからもう3キロものすごいスタミナだ。
猫無、母樹はというと、倒れていた。もう歩くことすらもままらなかった。

今、一番進んでいないのは、猫無、母樹の0.5キロ順位でいくと240人中239位と240位 次に幽海、村雨の2キロ順位は186位と187位 そして、ラキ、雪の5キロ順位は1位2位を争っている。 もう猫無、母樹の最下位は決まっているようなものだ。村雨はある決心をした。そして、ペースを上げ始める。
「あれ?むらさん行っちゃうの?」
「ああ、行けることまで行ってみるさ。」
ここから村雨が追い上げていく。前にいるたくさんの疲れきった生徒を抜き、一気に50位に。前には運動系の部活をやっている人だらけになり順位を上げにくく、これからが大変だ。村雨が順位を上げているとき、猫無と母樹が起き上がっていた。
「めんどくさいから歩くか。」
「いいですねぇ~」
ひさびさに意見が合う。歩くだけでも倒れている生徒がほとんどなので、簡単に順位を上げ、今現在200位。
村雨は前にいたはずの運動系所属の生徒達をだいぶ抜き、前には陸上部でもトップレベルの生徒だけだった。順位は8位。そしてまた一人抜く。
「おたく何位くらいの人?」
「ぜぇぜぇ、話かけんな!!」
「すんません・・・」
そして、また抜く。順位はもうトップ5に。残り4キロ。そのころ、ラキ、雪はスタミナ切れになったのか、歩いていた。
「はぁはぁ、疲れてなんかいねぇからな!!!」
「はぁはぁ、お、おれだって!はやく着いたって暇だから、他の人が来るのを待ってんだよ!!てか、おれのやさしさ。」
ラキと雪はもう7キロ地点まできていた。
幽海は、あいかわらずマイペースに走り、4キロ地点。
「ちょっとペースを上げるかなぁ。」
猫無、母樹は全力で走る。疲れたら、歩くをくりかえし、2キロ地点まできた。
そのころラキ、雪はコースから外れていた。それにもかかわらず、全力で走っている。
「負けねぇ!!」
「おれのせりふだ!!」
そしてとうとう、一位の選手が見えた。村雨が帰ってくる。
「キャー!!キャー!!村雨さまー!!」
忘れていたが、村雨はもてる。女子の声援がすごい。そして、歩いてゴールした。
その後陸上部の生徒が帰ってきて、幽海が帰ってきた。順位は16位。ラキと雪が帰ってきた。
「てめぇが道を間違えるからだ!!!」
「はぁ?先頭切ってたのはてめぇだろうが!!!」
殴り合いを始める。先生方が止めに入る。だが、普通の先生だとけんかは止まらず、Dandy先生が来たところでけんかが止まった。そしてぞくぞくと生徒が帰ってくる中、猫無、母樹がいまだ帰ってこない。残りの生徒数が20人となったところで、猫無が帰っていた。しかし、母樹はいなかった。
「くう~おおちゃんは?いっしょじゃなかったの?」
「あんなやつといっしょなわけがねぇだろ!!」
また母樹以外の生徒が帰ってきた。この時点で母樹のビートたけし愛好会入部は決定した。もう待ちきれず、表彰式を始めた。剣と村雨にダサい優勝メダルが首にかけられた。そして、校長先生の口からビートたけし愛好会入部者が発表された。校長先生が母樹の名前を読み上げた。そのとき、母樹が戻ってきた。
「あれ~?もしかして母樹コールですか~?」

地獄のマラソン大会 終了

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