西門で待ってる

西門で待ってる

RBBR(さりげなく更新w)

RBBR



―春。


桜舞う季節。


惰性に満ちた日々を送る学園に、
一つの狂気が舞い降りた―。







『!警告!』



この小説は大体R15指定です。
趣味で作られたものなので特にそういう面にこだわってはいませんが、
趣向にそわなさそうなお方は読むのをお控え下さい。

『おもしろき こともなき世を おもしろく』
の精神に基づき(ぇ?)、主にRONINSを中心として
惰性に満ちた高校時代に綴られたギャグメインのリレー小説
『 RBBR 』。
なお、登場する名前、団体などは全て架空の物であり、
万が一似たような物が存在していても、それは全く別の物です。
執筆に当たって、高見広春の『バトルロワイアル』を
参考にしています。
















『3―B  生徒一覧』


集合写真





一  番   青島政弘(あおしま・まさひろ)

二  番   池畑孝治(いけはた・たかはる)

三  番   稲穂昇(いなほ・しょう)

四  番    井ノ頭祥介(いのがしら・しょうすけ)

五  番   梅迫大祐(うめさこ・だいすけ)

六  番   浦島景太郎(うらしま・けいたろう)

七  番   大久保良太(おおくぼ・りょうた)

八  番   織田慶二(おだ・けいじ)

九  番   小谷翔太郎(おたに・しょうたろう)

十  番   折原浩平(おりはら・こうへい)

十 一 番   加賀正午(かが・しょうご)

十 二 番   荷嶋寛(かしま・ひろし)

十 三 番   賀里弁蔵(がり・べんぞう)

十 四 番   川田耕次郎(かわた・こうじろう)

十 五 番   北川大祐(きたがわ・だいすけ)

十 六 番    木月和久(きづき・かずひさ)

十 七 番   鬼頭聡(きとう・さとし)

十 八 番   金正日(きむ・じょんいる)

十 九 番   木村拓哉(きむら・たくや)

二 十 番    桐原和博(きりはら・かずひろ)

二十一番   剣持祐介(けんもち・ゆうすけ)

二十二番   鈴木一郎(すずき・いちろう)

二十三番   涼宮悠(すずみや・はるか)

二十四番    染井芳之(そめい・よしの)

二十五番   平慎二(たいら・しんじ)

二十六番   田中正義(たなか・まさよし)

二十七番   手塚龍太郎(てづか・りゅうたろう)

二十八番   東芝文彦(とうしば・ふみひこ)

二十九番   長森雅史(ながもり・まさし)

三 十 番   丹野昌宏(にや・まさひろ)

三十一番   根岸千宏(ねぎし・ちひろ)

三十二番   橋本慎之介(はしもと・しんのすけ)

三十三番   馬場健太郎(ばば・けんじろう)

三十四番   陽ノ下光(ひのした・ひかり)

三十五番   藤島康介(ふじしま・こうすけ)

三十六番   藤林椋(ふじばやし・りょう)

三十七番   古河秋彦(ふるかわ・あきひこ)

三十八番   柾木彰宏(まさき・あきひろ)

三十九番   三井真也(みつい・しんや)

四 十 番   御堂豪鬼(みどう・ごうき)

四十一番    宮本浩(みやもと・ひろし)

四十二番   村田正和(むらた・まさかず)

四十三番   夜神月(やがみ・らいと)

四十四番   山科敦(やましな・あつし)

四十五番   矢中アキラ(やなか・あきら)

四十六番   吉野作三(よしの・さくぞう)

四十七番   李小狼(り・しゃおらん)






学  長   犬飼彰

新 担 任   藤田浩之

学長側近   相楽左ノ介

元 担 任   押尾三郎

学年主任   武井源三

講  師   武藤義満










  1  序章





そこは大きな部屋だった。
照明は落とされ、月明かりだけが窓から差し込み部屋の中をほのかに照らし出す。
部屋の中央には円卓があり、そこに幾人かの影が見えた。
その中の一人がおもむろに口を開いた。
前髪は無いが後ろ髪は異様に長いという奇妙な老人だった。

「我が響野学園は長年一流の進学校として名を馳せてきた…(クチャ)
しかし、最近の進学状況はどうだ…!去年など東大に50数人しか入っていない!(クチャ)」

老人はくちゃくちゃと音を鳴らしながら続ける。

「これは一体誰の責任だ!?…相楽よ!」

老人の声に怒気が篭った。

「は!それは当然生徒自身の責任です犬飼学長!!」

相良と呼ばれた男が即答する。
頭の半分以上がハゲていて、残った毛も全て白髪の体格のよい男だった。

「その通りだ相楽よ、全てはあのクズ共のせいだ…!(クチャ)
ではこの状況をどうしたら良いと思う…?…武井?」

犬飼は左に座る男に声を掛けた。

「は!やはり生徒一人一人に勉強するように勧告すべきっグアァア!?」

ガタンッと大きな音を響かせて武井と呼ばれた男が左手を押さえて椅子から転がり落ちた。
見れば武井の左手の甲には深々とナイフが突き刺さっている。

「な…!何を…!?」

武井は苦痛に顔を歪めながら言葉を搾り出した。

「そんなことであのクズ共を更正できると思っているのか…(クチャ)この痴れ者めが!」

犬飼は嘲りの表情を浮かべ侮蔑の言葉を吐き捨てた。

「な…らば…どうしようと…?」

武井は額に脂汗を浮かべながら問う。
床には左手から流れだした血が血溜まりを作っていた。


「殺し合いだ…!」


闇に犬飼の声が響く。

「なっ!今何と…!?」

武井の顔に驚愕の色が浮かんだ。

「生徒等に殺し合いをさせる。そして残った一人に東大への無条件合格の権利をやる…(クチャ)。
そうすれば生徒数も減り自動的に合格率も上がる…(クチャ)
相良よ…何処のクラスが最も堕落している?」

「それはやはり3-2組あたりかと!」

相楽が即座に答えた。が、犬飼は軽く笑う。

「普通科なら推薦が使える…。特進科はどうだ…?(クチャ)」

「それは…確実に3-B組でございます!」

相良がそう答えると闇から男の声が挙がった。

「お待ちください!」

闇から現れたのは髭面の太った男、3-B担任の押尾だった。

「彼等には未来があります!それを…一方的に奪ってしまうというのには賛成できません!」

「しかし他に方法がないのだ…(クチャ)、それに特進科は私が文部省に無断で作ったクラス。なんとでもなる…(クチャ)」

「ならば貴方を倒してでも止めてみせる!」

押尾はそう叫ぶと猛然と犬飼に襲い掛かった。

「ならばお前はもう終わりだ…(クチャ)…相楽!!」

犬飼が言うよりも早く相楽は行動に移していた。
瞬時に懐からリボルバー式の銃を抜き押尾に向かって弾丸を放つ。
弾は押尾の肩に当たり、逃げようとした押尾にもう一発。
次弾は後頭部に命中し押尾は血と脳しょうをぶちまけて絶命した。
しかし、相楽はさらに死体に向けて撃ち続ける。
目は狂気に光りその口からはぶつぶつと独り言が漏れていた。

「よくもよくも犬飼様に害をなしおって…このこのこの……」

口から泡を噴きながらなおも撃ち続ける相楽。
六発撃ち終わり、暗闇に撃鉄のカチッカチッという音だけが響いた。

「もうよい…お前の忠誠心は嬉しいがいささかやり過ぎだ…!(クチャ)」

相楽はハッと我に返り、そして深々と頭を下げた。

「もっ申し訳ございません!!頭に血が上ってしまいまして…!」

「よい…お前の態度、私は責めはせん…(クチャ)」

「はは!ありがとうございます!!」

「うむ…では藤田よ!」

闇の中からはっ!っという声が聞こえ、また一人男が現れた。
髪は殆ど無く、わずかに残った前髪をオールバックにして誤魔化そうとしているが全く隠せていない。

「何用でしょう?」

「うむ、お前はこれより押尾の代わりに3-Bの『担任』となり生徒の『引率』をせよ。(クチャ)すぐに行動に移せ!」

「…は!」

言うやいなや藤田は再び闇に消えた。

「次は…武井よ…!」

「は、はい…!」

武井の声が震える。押尾の惨殺死体を前に不安が隠せないようだった。
次は我が身かという恐怖が武井の体を支配する。

「お前は優秀な教師だ…殺しはせん…(クチャ)私に逆らえば別だがな…。」

「はい…!」

「お前には一つ仕事を頼もう(クチャ)。3-Bの生徒をホールに集めよ…!今すぐにだ!(クチャ)」

「…承知しました…」

顔に苦渋を滲ませながら武井は退室していった。


「これでよい…(クチャ)さぁ…宴の始まりだ(クチャ)」


暗く静かな部屋の中、犬飼の高笑いだけが響き渡った。




  2  ゲームスタート




4月20日、木曜日.
いつものように授業が終わり、皆HRが始まるのをガヤガヤと騒ぎながら待っていた。
突然天井のスピーカーからゴトゴトとマイクをセットする音が聞こえ、放送が流れる。

『え~高3のB組は全員カバンを持ってホールに集まってください、3-Bはホールに集まってください』

武井の声だった。

「え~」

「マジかよ!?」

「今から何やんだよ?3-Bだけ?意味分かんないし!」

クラス中からは不満の声が上がったが、サボると後々面倒なので皆しぶしぶカバンを持って移動を開始した。
ホールに着くと前から順に座るように指示があり、皆おとなしくそれに従い席に着く。

「何だろな?」

「何かしたっけ?」

「てか帰りたいんだけど」

などと言いながらも全員が座席に着いた。

「全員…ここで待機していなさい…」

普段は明るい武井の声には元気がなく、顔は何か苦痛に耐えているように見えたがそれに気付いた者は皆無だった。
ここで誰か一人でも武井の左手の異常に気付いていれば後の惨劇を回避出来たのかもしれないが。
後の惨劇の中で染井(二十四番)はそう思うのだった。
だが現在それを予知できたものは誰もいない。


武井が退室してしまいやることがないので皆思い思いに寝たり話したりしている。
キワク(十六番)も

「(やることないし寝るか…)」

と考え、目を閉じた。





次に目を開けると何か様子がおかしいことに気付いた。
そう、妙に静かなのだ。

「えっ?皆寝てんの!?」

隣の池畑(二番)を見ると両目がしっかりと閉じ、規則正しい寝息を立てている。
周りを見渡すと全員がそうだった。

「え?何で?」

キワクは取りあえず手当たり次第に起こそうとするが、誰一人として反応が無い。
まぶたを無理矢理こじ開けるが白目が見えるだけで無駄だった。

「他の教師は…?」

体を半分起こしホールの入口を振り返る。
その瞬間、ゴッという鈍い音と突き抜けるような衝撃が頭を襲った。

「なっ…?えっ…!?」

意識が薄れていくのがハッキリと分かった。椅子に掛けた指から力が抜け足にも力が入らずフラフラと地面に伏す。
倒れ際にうっすらと見えたのはハンマーを手にした数学科教員、武藤義光だった。



再びキワクが目を開けると、そこはホールではなかった。古ぼけた机に中身は無いが規則正しく並んだ無数の本棚。
何処かで見た風景だなと思いよく思い出してみると、自分がよくサボりに使う施設に似ていることに気付いた。
―そう、図書館だ。
だがここはいつもの図書館と違い壁も床ボロボロで、もう何十年も使われていない寂れた雰囲気があった。

「ここは…?」

キワクが周りを見渡すと他の3-Bの面々が床に転がって寝ていた。
中には既に起きている者もいてキワクと同じように周りを見回して呆然としている。

「キワク?どうしたのその血?」

急に背後から声を掛けられキワクは驚いて振り向いた。
あまりに唐突だったため心臓がバクバクと波打っている。
ゆっくりと顔を上げると、そこには心配そうな顔をした馬場健太郎、通称ババケン(三十三番)が立っていた。
彼のあだ名は小学校の時から変わらないらしいが本人はあまり気に入ってはいないらしい。
ちなみにキワクは彼を普通に健太郎と呼んでいる。

「えっ、あっ、血…?」

思考がさっぱり纏まらない。健太郎が一体何を言っているのか分からなかった。

「え?ほらだって頭…」

え?っと思い頭を思わず頭に手を伸ばす。すると、ヌルッとした感触が指を伝った。

「ぅわあっ!?」

驚いて手を離す。
見ると、手には血がべったりと付着していた。

「な、ななな何でっ!?」

「でもその血はもうだいぶ固まってるから結構前に怪我したみたいだね。と言うか…痛そう…」

健太郎の言葉の通り、血はもう半分以上固まっていた。
しかし怪我に気付くと同時に傷が疼き始めた。血は止まっても痛いものは痛いらしい。

「何だっけ…?」

キワクはそう呟くと今までの事を思い返し始めた。

(え~と確か放送があってホールに集められて…
そうだ皆寝てて俺だけ目が覚めたんだ、そしたら…え~と誰かに頭を殴られて、誰だっけ?えっと~あっ!!!)

「義光ブッ殺す!!」

「えっええ~何で?」

健太郎が狼狽した声を上げた。これは彼の口癖でもある。
健太郎は何かある度にその言葉を口にするのだ。彼の性格を如実に体現しているといえよう。

「この傷は義光にホールで殴られた傷なんだよ!マジありえねぇ!」

「そういやホールといえば、俺達は何でこんなとこにいるんだろ?ホールに集められてから記憶が無いんだけど…」

健太郎が顔に不安の色を滲ませていた。

「皆寝てたからな。俺も義光に殴られて気絶して、目が覚めたらここだった」

ん~…と喉元に手を当てて考え込む健太郎。
気のせいか、カツッと妙な音が聞こえた気がした。

「あれ?」

「どうした?」

キワクが尋ねるが、それにも関わらず健太郎はしきりに喉に手を当てている。

「何か輪っかが付いてる…」

「え?輪っか?」

キワクが健太郎の首を覗き込むと何やら金属製らしき輪っかが健太郎の首にはめられていた

「あれ?キワクにも付いてるよ」

「え?マジ?」

キワクは自分の首をさすると確かに手に金属の感触がした。

「ホントだ…何だよこれ?外れねぇのか?」

輪っかを引っ張ってみたがびくとしない。逆に首に食い込んで苦しいだけの結果に終わった。

「ねぇ、よく見ると全員に付いてるよ」

寝ている者、起きている者、全員に輪が付けられていた。

「何なんだよ……」

キワクが呟く、と同時にバキイッ!!という音が部屋中に響いた。


『え?』


二人の声が重なる。

目の前のドアが壊され、背広を着た縦バーコードヘアーの男が踏み込んで来た。
後ろにはM16とおぼしきマシンガンを持った人間が数人従っている。

「あれ?義光だ。樫原もいる!」

今の音で何人かが起き出し声を上げた。

確かに後ろに従っている人間の中には響野学園教師、義光と樫原の姿があった。
あとは知らない人間だが、おそらくは教師だろう。

「てめぇ!義光!よくも殴りやがったな!」

キワクは憤然と立ち上がると怒りに任せ義光に殴りかかった。

「…うるさいよ。僕はね~お前なんかがどうなってもいいんだよ」

義光はそう言ってマシンガンの銃口を床に向ける。
タンッと軽い音と共に床に丸い穴が空いた。
そして今度はキワクにマシンガンを向ける。

―キワクの動きが、凍り付いた。

「今ここで死にたくないでしょ~、これ本物だからね、おとなしくしててよ」

「………」

キワクは、黙ってその場に座りこむしかなかった。

「そうそう、物分かりがいいね。はい皆も静かにしててねー!」

流石に銃声で全員起きたようだが皆自分の状況が把握できずに戸惑っている。
しかし雰囲気は伝わるのか、全員義光たちの方を見上げるものの喋ろうとはしない。

ここで今まで沈黙していた背広の男が口を開いた。

「みなさん!おはようございます!
私は3-Bの新担任の藤田です!
今の状況が把握できていないと思いますが!
これから、皆さんに


― 殺し合いをしてもらいます!! 」



『は?』


全員の声がハモる。

「今言った通り皆さんには殺し合いをしてもらいます!
生き残った一人には東大への無条件合格の権利が与えられます!
棄権はできませんのであしからず!おい義光!あれを持ってこい!」

藤田がそう叫ぶと義光はうなずき部屋を出ていく。

部屋中にざわめきが広がっていく。
しかし、それも廊下から聞こえるガラガラガラという音に掻き消された。

「え?何?何!?」

折原(十番)が声を上げる。

「お待たせしました!」

義光が足の付いた担架を押して戻って来た。
担架の上には白い布がかけられていて中身は見えなかったが、布は中の何かに合わせて膨らみ、そして何故か所々に茶色い染みが出来ていた。

藤田はそれを受け取ると高らかに叫び、

「前3-Bの担任の押尾先生はこのイベント、バトルロワイアルに反対なさったので、こうなってもらいました!」


バッと布を剥がした。


それは3-B担任押尾三郎の死体だった。但し顔を見ることは叶わなかった。あるべき場所に顔はなかった。
それはもはや、形を留めていなかった。

「うげっ!まじかよ!」

「ありえねぇ!映画の撮影!?」

皆は口々に叫ぶが誰も泣き付いたりしない。いかにも3-Bといえるだろうか。
クラスの特性として皆お気楽なノリだけで生きているのだ。それを育んだのは担任である押尾その人ではあったのだが。

「詳しい説明をするのでよく聞いてください!
これから皆さんは一人一人荷物を渡します。
受け取ったら順番にこの建物から出ていってください。もちろん成績順です!
あと自分の首を見てください!多分見えないと思うので周りの人のを見てください。
それは爆弾です!
三日間で生き残りが一人にならなかったら自動的に全員爆死します!
皆さん、頑張って数を減らしましょう!」

藤田の説明が終わる。
皆、流石にその説明に動揺を隠せず、愕然として身動きが出来なかった。

「皆さん後ろを見てください!」

皆はハッと我に返りして後ろを振り向いた。
後ろには二人の人間がふて腐れたように座っていた。
大半の人間はそこにいるのが誰なのか分からず戸惑っているようだが、キワクをはじめ何人かは知り合いがそこにいることに驚いていた。

「特進科1組の飯田君と佐々木君です!彼等は成績不良者として特別に参加してもらいます!」

藤田は淡々とそう告げた。
二人の顔は泣きそうになっていた。

「はいではっ!池畑君から!荷物はランダムに持って行ってください!中身は食料と武器です!」

池畑は荷物を取り、自分のカバンを持ってしぶしぶ部屋から出ていった。

「次は10分後!手塚君!…………」




「はぁ成績順なら俺は最後だな…」

染井が呟く。


「しかし…、」

(東大無条件合格か…)


染井の目は、水を得た魚のようにギラギラと輝いていた。




  3  笑う男




4月21日7:00 バトルロワイアル開始。-残り時間72時間。


村田(四十二番)は森の中をさ迷っていた。不思議なくらい誰にも会わなかった。

村田は成績上位者として最初の方に名前が呼ばれたがもう数時間は経っている。もういい加減全員図書館から出ているはずだ。

しかし誰にも会わない。

「何だよこれ、意味分かんないし」

ぶつぶつと文句を言いながら歩く。

しかし、ふと村田はある事に気付き立ち止まった。

(そう言えば荷物のバックの中に武器が入ってるって言ってたな、なんだろう?)

バックを開いて中身を見る。

固形携帯食料と水、地図と大きめのサバイバルナイフが一本入っていた。

「マジかよ…ナイフ一本?」

村田はナイフと地図をを取り出した。

ナイフをしげしげと眺め、はぁとため息をつく。他の人がどんな武器を持ってるいるかは知らないがやはり心細い。
でも幾らなんでも殺し合いなんてことにはならないだろう。そう思って諦めることにした。

ナイフはベルトの腰に装備し、地図を開く。

「ここ島なんだ」

地図には島の大まかな地形等が載っていた。この島から脱出はできないかと思い地図を凝視するが近くに他の島はないようだ。但しこの地図が正しいものなのかはまるで確証が持てないが。


「村田くん!」


急に後ろから呼び声が聞こえた。

村田が驚いて振り向くとそこにはいつものように満面の笑顔を浮かべた加賀(十一番)が立っていた。
彼は基本的にいつでも笑顔だ。笑顔以外の表情をお目にかかることは滅多に無いといえるだろう。

「加賀ちゃん、何なのこの島は?意味分かんなくねぇ?」

村田は加賀の突然の出現に驚きながらも何とか普通に会話を切り出した。

「よく分かんないけどさ、一つだけハッキリしてんのは残れば東大に行けるって事じゃん!」

加賀はどこか嬉しそうだった。

「あれなに!?」

唐突に加賀が遠くを指差した。つられて村田は指を指された方向を見るが何も無い。


タン!!!


音と共に村田の腹に強烈な痛みが走った。
視線を落とすとワイシャツがみるみる赤く染まっていくのが見える。

「…え?」

村田は加賀の方を振り返った。
先程と変わらぬ笑顔の加賀。しかし手には銃が握られていて銃口がこちらを向いていた。

「申し訳ない!」

加賀はそう叫ぶと躊躇なく村田の頭に2発目の弾丸を撃ち込んだ。
痛い、と思う間も無く村田の意識は暗濁の底に落ちていった。

(2年間勉強したのにな…意味ないし…)

「勉強しないで東大行けるんだよ!最高じゃん!ってもう死んじゃったか、じゃあね!」

加賀はそう言い残すと森の奥へと消えていった。


―数分後
島全土に放送が流れた。
『藤田です!記念すべき最初の犠牲者が出ました!村田君です!!皆さんも頑張って数を減らしましょう!!!』

島全体に動揺が走った。震え出す者、祈る者、そして悦びの表情を浮かべる者も。しかしこの放送によって全員の理性の箍が外れたことは間違いなかった。


【村田正和(四十二番) 死亡】


-残り48人-




    4  修羅




長森(二十九番)と夜神(四十三番)は共に森の奥深くを歩いていた。
二人は隠れるために森の奥に向かったのだがそれは最も危険な行為なのだという事を彼等は認識できていなかった。
森は隠れるところが数多くある、逆にそれは敵がいても見付けにくいという事も意味している。

ぷっという間の抜けた音が微かに聞こえ、突然夜神が倒れた。

「えっ!?夜神さん!?」

長森が夜神に駆け寄る。揺り動かすが反応はない、既に息は無かった。

「えっ…」

よく見ると首、正確には延髄に深々と太い針が刺さっていた。
長森は辺りを見渡す。腰の拳銃を引き抜き警戒態勢をとった。
誰の姿も見えない、しかし気配はする。
おそらく敵はこちらの位置を把握しているだろう。木を背にして音を探る。
先に撃たないと…長森の身体に緊張が走る。

ガサッ!

右斜め前方で音がした。長森は即座に音源めがけて乱射する。しかし手応えはなかった。

「あれ…?っつ!」

呟く暇も無く首に痛みが走った。身体が痙攣して動かない。

「残念、さっきのは石を投げただけ。悪いな」

無音で現れたのは全身を泥で汚した梅迫(五番)だった。
しかし、それを見えた人はもうこの世にはいなかった。



【夜神月(四十三番) 死亡】
【長森雅史(二十九番) 死亡】


-残り46人-




    6  扇動




『橋本の反応も消えたな、今までで何人死んだ?』
『4人です』

藤田の問いに吉光が答える。
ここは最初に生徒のいた図書館の別室。壁にはモニターが並びコンピューターは生徒の生存状況を表示し続けている。

『49人中4人か、まだまだだな。』
『そうですね、このままでは3日以内に片が付かない可能性も』

義満がうなずく

『よし、もしこの調子が続くようなら発破をかけよう』
『発破とは…?』

義満は首をかしげた。

『放送でこのペースで進むようならランダムに何人かの爆弾を作動させると流すんだ』
『なるほど。良い案だ』

梶も賛同する。


『さあ頑張れよ…自分たちの未来のために…』

藤田はそう呟くと目を閉じた。




    7  




金正日(十八番)は自分のバックを漁ってみた。幸運な事に出てきた武器は44口径のマグナム。
これはかすっただけで相手はショック死することもあるかなり強力な銃だ。
ただし使う方も並々ならぬ力が要るが。

「使えるかな?」

弾を込めて弄ぶ。
しばらくすると飽きて銃を腰にさしてそこら辺を散策することにした。
適当に歩いていると広い草原に出た。

「あれ?」

よく見ると遠くに二人の人間らしき人影が見えた。

「おお~い!」

声を張り上げ手を上げる。すると向こうの二人も気付いたらしく手を振り返して走ってきた。
陽ノ下(三十四番)と藤林(三十六番)だった。

「こんな所にいたんだ。僕誰にも会わなくて」

金が言った。

「俺達も俺達以外の人に会ったのは将軍が初めてだ、な?」
「あ?ああ……」

陽ノ下の問いに藤林はどうでもよさそうに返した。

「将軍の武器なに?俺なんて鞭だよ、使えないっつーの。そんで藤林はシャーペン。笑えないな」

陽ノ下は笑いながら言った。

「僕はこれだよ」

と言って金は腰の銃を引き抜いて陽ノ下に見せた。

「へ~マグナム!かっこいいじゃん」

陽ノ下は銃を珍しそうにいじくり回す。
カチッ

「え?」

ボンッ!!!
突如銃が暴発して陽ノ下は悲鳴を上げる間もなく地面に倒れ込んだ。
まともに命中したため頭の半分以上が吹っ飛んでしまった。

「ひっ陽ノ下!?」

藤林が驚きの声を上げる。

「え?僕知らないよ」

金はそう言ってその場を離れようとした。しかし藤林がそれより早く金の胸倉を掴む。

「知らないよじゃねーだろ!てめぇの銃のせいじゃねーか!!」
「落ち着いた方がいいよ藤林君。今のはどう見ても事故だって」

金は丁寧に言ったが逆にそれは藤林の精神を逆なでした。

「てめぇぶっ殺す!」

藤林は叫ぶと同時にシャーペンを金に突き立てる。

―だが。

「藤林君ごめん」

金はそれより早く銃の引き金を引いていた。

藤林の頭は割れた卵のようにぐちゃぐちゃになった。

「えっ僕…知ってるよ」

金はニヤリと笑うとその場に静かに腰を降ろす。


金の中で何かが目覚め成長しつつあった。


【陽ノ下光(三十四番) 死亡】
【藤林涼(三十六番) 死亡】


-残り43人-




    8




カタカタカタ

キーボードに指が走る。
ディスプレイには次々と移り変わるプログラムが表示されている。

「終わったか?」
「いやまだ、これを入れたら終わりだからちょっと待ってくれ」

薄暗い部屋の中に声が響いた。
ここは既に廃墟と化した民家の中だ。
壁も天井も朽ち果て、台風でも来たら跡形も無く吹き飛んでしまうだろう。

「よし!出来た!稲穂!流してくれ!」

男の声、涼宮の声だ。

「OK、井ノ頭も準備いいか!?」

稲穂が叫ぶ

「おう!」

井ノ頭がその声に応えた。
民家の中には井ノ頭(四番)、涼宮(二十三番)そして稲穂(三番)の3人がいた。
それぞれ目の前にノートパソコンを広げ、涼宮と稲穂のパソコンからはコードが伸び各自の携帯電話に繋がっていて、井ノ頭のパソコンから伸びた2本のコードは他の2台のパソコンに接続されている。
パソコンは各自が常に持ち歩いているものだ。

「それじゃ井ノ頭サポート頼むぞぉ!」
「任しとけ!」

井ノ頭は軽く応えるが、その顔は緊張がみなぎり額は汗で光っている。
それが、彼等がこれからやろうとしている事はいかに失敗を許されないかということを如実に物語っていた。


「カウントするぞ、同時に侵入してくれ」
「よし、頼む」

稲穂の返事に応えて井上がカウントを始め指を折る。

「5、4、3……」

稲穂と涼宮の顔が真剣なものへと変わる。

「…2!1!行け!」

二人は憑かれたようにキーボードを叩き始める。
井ノ頭はディスプレイを眺め指示を出す。

「いいか、一つ一つプログラムを解除していくんだ。それが出来たらこのナンバーを入力しろ。
響野の中枢に飛ぶ、そして藤田達のパソコンに飛ぶんだ、リンクしてるはずだからな。
後はそこでこの個人の位置探査システムと爆弾の起動のプログラム破壊のデータを流すだけだ。」

井ノ頭はそう言うと一枚の真っ赤なCD-Rを取り出す。

『OK』

二人はうなずくと作業を続けた。



「…ん?稲穂ちょっとストップ?」

しばらくすると涼宮が声を上げた。

「ん?なに?」

稲穂が顔を上げると涼宮が真剣な眼差しでディスプレイを見つめている。

「これは…誰かが先に侵入した形跡がある。既にいくつかプログラムが解除されて…」
「え?」

井ノ頭がカタカタとキーボードを叩く、ふとその手が止まり目が丸くなった。

「マジだ…このバトルロワイヤルに関する項目に侵入にした跡がある、一体
誰が…?」

井ノ頭が呟いた。

「うちらの他にパソコン強いやついないよな、せいぜい賀里くらいだけどハッキングは出来ないだろ」

稲穂も目を丸くして応えた。




「一体誰が……?」



涼宮の呟きに応えられた者は誰もいなかった。







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