松尾大生の独り言

松尾大生の独り言

2011.07.30
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悲しい物語を一席……。

いつの時代のことか、どこの街のことか、忘れたが、このような話があった。

股夫はその時、二十九歳であった。とあるコンパで出会った二十六歳の小柄な女の子に一目惚れして、「一目惚れですッ。交際してくださいッ」と、高子に言った。

高子は股夫の言葉が嬉しかったが、股夫の学歴から身長、職業、性格や将来性を値踏みしつつ、股夫の誘いを、「ごめんなさい」と、断った。

高子は、小柄な女だったが、自分のことを美しく、頭の良い女だと考えていた。正しい人間だとも、率直に信じていた。自分には、股夫より、いまならば、若干、査定価値の高い男性が釣り合うと信じていた。高子には股夫に男の色気を感じなかったし股夫がただのバカな酔っ払いに見えた。

高子は、南の方の海岸線の町の出身だった。

幼い頃から、海産物の豊富な町であった。町民は、何もしなくても、自由に食べていける町だった。

町中、家屋や電信柱には巨大な昆布が巻きついており、住民達の日課は、定期的に海から町に攻めて来る、怪獣ほどの大きさの毛がにや、タコなどとの戦いであった。タラバガニが一番強かったが仕留めて売ると、お金になったし、食糧にもなった。

道路には、ホタテなどの貝が敷き詰められており、みんな生きていた。それを拾うだけでも、満腹になれる町だった。



股夫は、時々、高子に電話をしていた。高子は、股夫からの1ヶ月に一回ほどの乾坤一擲の思いの電話を、「洗濯機使っているから」とか、「いま、テレビ観てるから」そんな理由で、すぐに切っていた。

高子、真剣に告白した男を宙ぶらりんにさせるなよなァ、……好きじゃないなら、しっかり振りたまえ、と思う。

股夫は、ある日、高子に電話して、こういった。
「アッシーくんなら良いだろ? タクシーの代わりに俺を使ってよ」

股夫は、プライドを捨ててでも高子に逢いたかった。股夫は高子が本当に好きだったのだ。

高子には車がなかったから、股夫に興味はなかったが、ちょうど行きたい場所があったから股夫を使うことにした。

二人は市の中心のデパートなどを回った。

股夫は高子の顔ばかり見てうっとりしていたが、高子は買い物を済ませることにしか興味はなかった。

股夫は苦肉の策で、「お互いに素敵な異性を紹介しあおう」と、高子に言った。

高子は自分がモテると考えていたが、実際には交際の機会はなかったから、股夫をまた利用しようと考えて、了解した。

了解するな、高子。相手の気持ちを察すれ。



股夫は確かに、酷い酔っ払いで、アルちゅーで、どうしょうもない男だった。でも高子に対する気持ちだけは一途で真実だった。

股夫は大きな市の出身だったが、市民からすら、市民扱いされない、市の山奥のヒグマの出る住宅街に住んでいた。出かける時には、ライフルの忘れられない住宅街であった。

股夫はヒグマと戦いつつ、時々、蝦夷シカを撃って、その肉を食べて、暮らしていた。股夫は、二階建の一軒家で両親と、やはり、アル中の兄とともに暮らしていた。

時々、高子に電話すると、やはりすぐに切られた。股夫は高子に嫌われたくないので、また、1ヶ月ほど、間をおいてから電話するのだが、ようよう、やっとの思いの異性からの電話を、すぐに切ってしまう高子であった。

それから、……。



ヒグマの皮でできたビキニを着た、物凄く色白で背の高い、二十歳の女の子と股夫は知り合った。

女の子は、ロシア人と日本人のハーフで、名前を、野生児麒麟ちゃんと呼んだ。

キリンちゃんは、大変にスタイルのよい子でもあった。キリンちゃんと股夫は、交際した。股夫は三十二歳になっていた。

キリンちゃんは、申し分のない若く可愛い子だったが、一つだけ問題があった。キリンちゃんの食欲は、物凄いのだ。

毎晩、股夫は狩りで得たヒグマをトラックに積んで、市の歓楽街に出かける。

キリンちゃんは、あっという間に、ヒグマの骨と皮だけを残して、肉を平らげてしまう。そうして更にキリンちゃんは、クチバシを大きく開ける雛鳥みたいに、「おなか空いたァッ」
と、泣くの、だァ。

股夫は困った。股夫はキリンちゃんが好きだったから、毎晩、サラ金からカードでお金を借りて、キリンちゃんに様々なご飯を与えた。

しかし、そんなの、長続きするわけがない。あっという間に借金は二千万フクロウになっていた。フクロウとは、この国の通貨である。

三十二歳の股夫は、破産寸前となったし、また、アルコールの依存も限界に来ていた。ある日、股夫は、獲物の大きなヒグマの上に横たわり、森の中で、本を読んだ。

●すべては真実だった

……という題名の本だった。股夫は、アル中と借金で大変だったから、その本の内容をよく理解した。そうして、これまでの全てのことは全部、真実だったと気がついて……。
股夫は借金には弁護士を入れて整理を始めた。また、アル中は1ヶ月間、部屋にこもって自分で治した。アル中の禁断症状はものすごかった。

そうこうしているうちに、キリンちゃんはお腹を空かしてトーキョーという名前の遠い別の国に旅立ってしまった。股夫はキリンちゃんと結婚したかったが、アル中でビンボーだったから、仕方がなかった、ん、だァ。

股夫は猟師をやめて、借金を返す為に様々な仕事をした。土方から大学の教師、歓楽街のスカウトマンまでやっていた。

股夫が三十四歳の時に、股夫は、アル中の体験談の短編小説を書いて、賞を受けた。

受賞式には高子を呼んだ。久しぶりに高子に逢ったら、高子も三十歳を超えていた。
「随分、高子さん、老けたなァ」

と股夫は思ったが、もう、女性との交際を諦めていたから、股夫は、今度は本当に、高子に良い男を紹介した。

しかし、なにせ、高子である。キリンちゃんは、性格は良かったしスタイルも抜群だったが、食欲は凄かった。高子は、とにかく、プライドが高かった、の、だァッ。

高子は、股夫が紹介した男に相手にされなかった。もう、三十二歳の高子は昔と違い、ふっくらと太り、昔の妖精みたいな魅力は無くなっていたから。

高子は股夫に目をつけた。酒を止めた股夫は、よく見ればスキッとして、かっこう良かった。股夫は身長が180センチあり、スラリとした三十六歳。これからが男盛りの年齢に達していた。股夫は大学を出ていたし、資格も沢山もっていたから、妥協して結婚するには申し分ない男だと高子が考えた時には、高子は三十四歳になっていた。

ある日、高子は三十七歳の股夫を街中に呼びつけて、結婚を迫った。高子は早く巣を作り子供を産みたい女の本能にとりつかれていた。

股夫は、逃げ出した。さすがに三十四歳のオバサンとは、キリンちゃんを知ってからは交際できなかった。股夫は若い子が好きだった。

股夫がトラックに乗って逃げると、「行かないでッ!」と、高子が走って追って来た。高子は何時も全身に昆布を巻いているスタイルで、昔はそれが愛らしく似合っていたのだが、今は、昆布からダシが出てしまってるふうだった。昆布には賞味期限切れと書かれた札が、ぶら下がって風になびいている。

高子が物凄いスピードで走って来るので、股夫は自分の家にむけて、トラックのスピードを百キロまで上げた。それなのに、運転席の窓を見ると、外を高子が走りながら、「私のこと、好きだって言っていたでしょうッ!」高子は運転席の窓を割って、股夫のクビを両手で絞めながら、そう叫んだ。

股夫は、怖くなって、トラックのスピードを更に上げて逃げた。

ミラーをみると、高子が四つ足となり、泣きじゃくり脱糞しながら、追ってきた。もう、人間ではないッ。

獣のような姿の高子は、素早く走り、トラックの前に出た。命がけである。

さすがに昔は、心から愛した女性。股夫は、ひき殺すことが出来ずに急ブレーキを踏んで、トラックを止めた。外に出て走って逃げた。

高子が大蛇に変身した。

巨大な白い蛇が、「子種を、よ~こ~せ~」と、赤い舌を、ぬめらせながら、叫んでいる。

股夫は自宅近くの寺の敷地に逃げた。住職や小坊主さん達が、白い大蛇を目撃すると、寺の大きな釣り鐘の紐を切り、股夫を鐘の中に隠してくれたが、……。

大蛇は、大きな鐘をはねのけるや、股夫の身体に巻きついて、股夫の股から、子種を抜いた。

そうして、満足して、空を飛んで帰っていった。

それから、……。

間もなく股夫の自宅に、高子が訪ねてきた。何時もの賞味期限ぎれの昆布ルックだが、胸に赤ん坊を抱いている。可愛い男の赤ん坊。
「あなたの子よ、股夫さん」と、高子はいった。

高子に案内されるままに、高子が同じ町内に建てたという家に、股夫が行くと、なんと、高子の家の表札には股夫の名前が大きく書いてあった。

股夫は観念した。

股夫、三十七歳、高子、三十四歳、入籍、……結婚。


それから、高子の街中の元のアパートに行くと、高子の押し入れから、次から次に、長年の独身生活で余った物が出てきた。

何回トラックでかよっても、山奥の一軒家には入りきらない量である。

あれから十年、股夫は、今も、高子の元のアパートに通って狭い押し入れから荷物をトラックで運んでいる。高子は整理が得意だから、押し入れには運びきれない荷物が今も残っている。一万回も往復しているうちに股夫は疲れてノイローゼである。運びきれないッ、のッ、だァッ……。

股夫の子供も、今、小学校二年生。

そう、もうじき、子供が帰ってくる時間だ。確かに、子供は可愛い。うん、子宝に勝る宝なし、と股夫は思う。

どこの街の、いつの時代の話かは分からないのだが、そんな可愛いそうな男が一人、いたとさ。


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Last updated  2011.10.09 02:03:12


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