ルビーのきりん

ルビーのきりん

どっちが怖い?!



 独身の頃、海外に2年ほど一人で住んでいたことがありました。

 ふつうなら家族5~6人で住むような2階建てのテラスハウスに、一人で住んでいたなんて、今思うとすごい。今、家族5人で住んでいる団地より広かったんだぞ~!!

 ある日、仕事から帰ってくると、10棟ほど並んだテラスハウスの入り口の道路標識のポールがぐんにゃり曲がっている。なんだこりゃ、と思いつつそのまま帰宅しました。

 その日の深夜、あり得ない物音で目が覚めました。
 私が寝ているリビングの奥のキッチンで、だれかが歩き回っているのです。おなべのふたをあけたり、冷蔵庫をあけたりしめたり。足音もはっきりと、お皿をガチャガチャ物色する音までしっかりと。

 私は凍り付きました。
「強盗だ!殺される!!」
 このまま寝たふりを続けようか。でも、それも恐ろしすぎる。
 玄関に走り、外に助けを求めようか。いや、それまでには相手に気づかれてしまうだろう。
 今までの人生で、こんなに恐ろしい体験をしたことがないので、本当に体が動かないし、どうしたらいいのか、まるでわからない。

 でも、結局人間って、いざとなると思い切った行動に出るもので、とうとう黙って殺されるぐらいなら、と目をつぶって起きあがり、電気をパッと付けました。

 どうなったと思います?

 台所には、誰もいなかったんです。
 逃げた形跡はおろか、気配まできれいさっぱり消えていました。

 いったい何が起こったのか。
 キツネにつままれるってこのこと?
 それでもやっぱり怖くって、朝まで電気を付けたまま寝ました。

 翌朝、同じテラスハウスの住人に聞きました。
 昨日、ここで交通事故があり、バイクに乗った男の人が一人亡くなったそうです。あの、曲がったポールは、事故の仕業だったんです。

 東南アジアって、霊が多いってよく言われるけれど。
 こんなにはっきり、リアルな体験したのは人生でこれ一度きりです。

 でも、結局何を思ったかっていうと、
「あ~…良かったぁ…」
 だって、本物の強盗の方がよっぽど怖かったから。

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