涼子の隠れ家

涼子の隠れ家

第1話


「お兄ちゃん、目を開けて。もう朝だよ?お兄ちゃん!」

さくらは言いました。
何度も何度も、お兄ちゃんの肩をゆすりながら。

ココは小さな小屋。
ある日、2人の兄弟が迷い込んで来ました。
さくらはたくさん傷ついていました。
お兄ちゃんもまた、たくさん傷ついていました。
どうしてでしょう。

2人は昨日まで、お父さんお母さんと一緒にいました。
だけど、もうココには、お父さんもお母さんもいません。
どうしてでしょう。

思い出すだけで怖いと、この時さくらは思いました。

さくらは生まれてから一度もお父さんと遊んだことがありません。
お父さんはいつもさくらの前で笑ったコトもなかったのです。
それよか、いつもいつもさくらは怒られていました。

「ねぇ、ママ?さくらは、どうして“さくら”って名前なの?」
ある時さくらはいいました。
すると、お母さんはこう答えました。

「お父さんが一番好きな花が桜の花なんだよ。」
優しく微笑みながらそういいました。
確かにそう言いました。

それなのに、どうしてでしょう。
「だけど、お父さんはいつもさくらを怒ってばっかり…」

さくらは4歳です。お兄ちゃんは6歳です。
お兄ちゃんはもうすぐ小学生になります。
いっぱい勉強して、いっぱいお友達を作りたいって言ってます。

「あ、お兄ちゃん。おきた?おはよう。」
お兄ちゃんは目を覚ましました。
「さくら…。だいじょうぶ?」
「うん、さくらはへーき。お兄ちゃんはだいじょうぶ?」
「僕もだいじょうぶ。いろんな夢を見ていたよ」
お兄ちゃんはどんな夢を見ていたのでしょうか。

「長い道があったんだ。そこにパパとママがいて、二人でこっちを見ているんだ」
お兄ちゃんは続けました。
「そしたらママは泣いていたんだ。僕が近づこうとしても跳ね返されて、ママの手をにぎれなかった。」
お兄ちゃんは涙を流しながら話しました。

「お兄ちゃん、さくら、ママに聞いたんだ。さくらの名前はパパがつけたんだって。お兄ちゃんの名前は誰が付けたんだと思う?」
「・・・・・・・」
お兄ちゃんは何も答えませんでした。

「さくら、お兄ちゃんのコト好きだよ」
さくらは目をウルウルさせながら言いました。
「ありがとう」
お兄ちゃんもまた涙を流しながらさくらの手を握りました。


この兄弟がココにいる理由(わけ)。
それは、パパとママに幸せになってもらいたいからでした。
どうしてか、分かりますか?


最後に、お兄ちゃんの名前を教えます。

「吹雪お兄ちゃん、大好きだよ」


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この話はフィクションです。登場人物の心や人間関係を想像してみよう!


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