テレビの影響で子どもが寿限無を口ずさんでいる。実際にあった長い名前として知られるのは、女性なら麿女鬼久寿老八重千代子、男性なら子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥太郎か。変わった名としては前後左右、富士の高根、外交官などなど。
 日本ほど名前が多様な国はないと言う。基本的にクリスチャンネームから選ぶイギリスや聖人の名をとるフランスのような風習があるわけでもない。感字とも称される近年の名づけ傾向が拍車をかけている。2002年生まれでもっとも多い名前の読み方は「ユウキ」だが、それでも全体の数%にすぎず、あてる漢字に40種類くらいある。そのうちいちばん多い優輝で8人というから、全体の種類の多さがしのばれる。
 米国人の名前を研究した結果からは、人気のある名前の傾向はあるが、そのときの有名人と関係なく、偶然による偏りの範囲内で説明できると報告されている。名前の種類が多い日本人においては、有名人効果も無視できないことだろう。かつての美智子人気、野球の大輔人気などが知られている。
 長い目で見ると、名前の傾向も流行り廃りがある。なかでも目立つのは、男性なら昭和10年代から35年くらいまで一字名がベスト10のほとんどを占めていたのに、その後はずいぶん減ったこと、女性ならかつて一世を風靡していた「子」のつく名前が、昭和60年ごろからばったり見なくなったことなどだろう。その「子」も、もとは貴族がつけていたものが一般に広まったものだった。
 名づけほど緊張する行為はない。最近では親自身の個性を主張する側面もありそう。とはいえ、最終的にその名を抱きしめ生きていくのは子どもたち。心理学では、自分の名前に含まれる文字を、他の文字に対してより好むという、ネームレター効果として知られる特性が知られている。ぼくも確かに、「あ」という文字が好き。名づけとは、親から子に伝える、数文字の愛情なのだ。

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