TAKE OFF

TAKE OFF

『紅い世界』(P)



広大な紅い花だけで埋め尽くされた花畑が在った。
いや、海面が夕日で染まった紅い海なのかもしれない。

とにかくあたり一面が真っ赤だった。

真っ赤な世界の中に一つだけ黒い影が伸びている。
それは人の形をしていた。
影を辿るとそこには10歳位くらいの少女がいた。

その少女は無表情にただ立っているだけだった。
しかし、まるで悪夢を見た後の子供のような、
物凄い恐怖を味わった後のような、
無表情の中にどこか分からないが不自然さがある。

まるで人が殺されるのを見ていたかのようだ。



―――その通りだった。

少女はずっと見ていたのだ。
その紅い世界―――いや大量の血で埋め尽くされた世界で。

「紅い花畑」―――
花と思われた地面の凹凸は重なり合った死体だった。
そしてそれを色付ける多量の血―――
夢でない事を告げるかのように血腥いその場所に少女は立っていた。

少女は血塗れだ。綺麗な黒髪が真っ赤な血で染まり、
赤黒く艶やかに輝いている。
そして、ぽつ、ぽつ、と血が滴る。

少女の周りの死体は酷い有様だ。
心臓を一突きにされた者は胸に赤い染みがまだ広がり続けている。
頭部を斬られた者は血や頭蓋骨の破片とぐちゃぐちゃの脳がはみ出ていた。
腹を切り裂かれた者は血で艶やかに光っている内臓が飛び出ていた。
それは真っ赤な血で染まり、痛々しくちぎれている。

見ている方が気持ち悪くなるようなその光景も少女にとっては
どうでもいい事だった。


「・・・何で・・・?」


ふいに呟く声が聞こえた。声からして10代後半の女の子だ。
だが声の主の姿は見えない。

少女は声の聞こえたほうに振り返ると、にっこりと笑い、言った。

「『何で』って・・・私は私の思う通りにしただけだよ?」

少女の目線の先には何も無いが、少女は会話を続ける。
さっきまで無表情だったとは思えないほどの笑顔で。

「だってここにいるのはみんなイケニエだもん」

少女は満足そうに言ったが、相手には意味が分からないらしい。
「イケニエ・・・?」
「うん。この子達のおかげで私は力を得るの」

死体は皆、子供だ。そして殺したのはあまり年の違わない少女だった。






飽きてきたのでまた何時か更新します~(ぉぃ





© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: