アメリカ映画と劣化ウラン弾
この間のイラクでの人質事件の折に、話題になるのではないかと期待して
いたのに結局あまり注意を払われなかった劣化ウラン弾について、ひとこ
と言いたいので。
劣化ウラン弾は、天然ウランを濃縮して原子力発電等に使おうとする時、
出るゴミである劣化ウランを利用した爆弾の事。
戦車、装甲車などを破壊するのに適していて、先の湾岸戦争で初めて使わ
れたそうです。
「劣化」というとなんだかそんなに凄いウランでない様な気がしますが、
「使えなかった」ウランというだけの話で、れっきとした放射性物質ですね。
この劣化ウランを使った爆弾はとても使い勝手が良いのだそうです。
硬いものをも貫通する力が強く、また大変燃えやすいので、戦車や装甲車
に当たった場合、内部へと貫通し、多くが燃料に引火して爆発をさせるの
だそうです。
そして最大の利点は、「ゴミ」を利用出来る、という事で、大変低コスト
であるという事です。
使い勝手が良く、低コスト。
ゴミを利用するのだから環境にも大変やさしい、訳ないじゃないですか！
劣化ウラン弾に被弾して戦車が爆発すると、酸化ウランが大量に飛び散り
ます。それは空気中にいつまでも存在していて、ヒトも呼吸と共に吸い込
みます。この状態の酸化ウランは排出されにくい肺胞などに溜り、その場
を離れてもずっと、体内で放射線を発し続けるのだそうです。
湾岸戦争の後、帰還兵の間で「湾岸戦争症候群」と言われる症状が沢山み
られたという報告があります。
大変な倦怠感、関節痛、下痢、脱毛、出血やガン、白血病、どこかで見た
ような症状の組み合わせですね。
イラクでも、湾岸戦争後、沢山の人々が苦しんでいると聞きます。
また、ボスニアやコソボの紛争からの帰還兵は「ボスニア症候群」と名づ
けられた病に苦しんでいる方が多いとか。
「×○症候群」といわれると、なんとなく落ち着く気持ちがしますよね。
「原因不明」だと不安ですが、名前がつくと、納得を覚える習性に人間は
ある様です。
けれどもそれは、劣化ウラン弾に起因する被爆、放射能障害なんじゃない
んですか？
今度のイラク戦争でも多量の劣化ウラン弾が使われたと聞きます。砂漠で
はいつまでも砂と風の中で粒子化した酸化ウランが漂い続けるのだそう
で、本当に恐ろしい事です。
ふらふらとネットを彷徨っていたらたまたまアメリカの機関のＨＰに行き当たり、
「劣化ウラン弾は核兵器ではありません！」
と明言されているのを見つけました。
「核兵器ではない」？ 放射能汚染を引き起こさせるものは核ではないの
でしょうかね？？
私はアメリカというお国は核兵器、もう一歩言うと放射能についての恐れ
をあまり抱いてないのではないかと思っています。
アメリカの映画を観ていると考えるところがたくさんありますね。
例えばシュワルツェネッガー主演『トゥルー・ライズ』でも小型ですが核
爆弾の爆発を止められず、キノコ雲が上がりました。
ベン・アフレック主演『トータル・フィアーズ』でも小型核ミサイルが爆
発していますね。
『トゥルー・ライズ』では閃光さえみなければいいというのか手で遮りな
がら、キノコ雲を背景にしてのキスシーン。
『トータル・フィアーズ』ではあれだけ爆心地を走り回ったのに、後日生
き残った主人公達は元気にピクニック。
ハッピーエンドが好まれるとは言え、なんとも不思議です。
『アイアン・ジャイアント』でも、核爆弾が出てきます。この作品では、
「当時の核に対するアメリカの認識はこれ位だったんです。ごめんね。」
というメッセージが伝わって来る様に思いますからまだしもですが、何か
と言うと核兵器を持ち出してくるのと、見えない「放射能」について
の認識があまりに安易、というよりも認識があるんだかどうだか疑わしい
と思われる事が多く、映画を観ている事を忘れて腹が立つ事が多いのです。
勿論、映画や作品として、アメリカが「核攻撃を受ける」という事はとて
もアメリカの人の心に訴えるものなのだろうと想像します。でも、それは
とりもなおさず、アメリカという国の核というものに対する捉え方の表れ
ではないでしょうか。
アメリカの方々の捉え方というのは、核爆弾がどれ位の破壊力か、という
事に集中し、それがどれ位長く人の心身を苦しめるのか、という見えな
い恐怖については勘定に入れていないのではないでしょうか。
兵器としては、確かに対象に命中し、破壊する事だけ考えればいいのかも
知れませんが、放射能がいつまでも人を蝕み、環境を汚染し、めぐり巡っ
て己の頭上も知らぬ間に汚れていくのだという事がどれだけ考えられてい
るのか、疑問に思います。
私は日本に住んでいるものとして、日本の人は劣化ウラン弾について無関
心でいてはいけないと思っています。
アメリカの歴史の授業では、第二次世界大戦での広島・長崎への原子爆弾
使用について、
「戦争を終わらせる為の手段であった。」
と教えているものが多く、また一部の教科書や授業では、
「核爆弾の実際使用により威力を誇示し確かめる」
実験であった、と述べているものもあると聞きました。
原子爆弾の使用が、戦争終結の大きな力になった事は確かだと思います。
しかし、いかに当時の日本が「東洋の暴君」であったにしても、あの夏の
日にもたらされた地獄をこの様に片付けられては、一瞬にして炭と化し、
また蒸発し、全身を焼かれ、爛れた皮膚を垂らして水を求めて彷徨った方々、
梁につぶされ、ガラスの雨を浴び、苦しみ悶えて亡くなった方々、
肉親を探して爆心地に入り被爆した方、原爆二世でガンに苦しめられる
方々、、、、。放射能に痛めつけられた方々のうめき声に対して、申し訳
ないと思うのです。
スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』のラストは次々
と応酬される核爆弾の、たくさんのキノコ雲をバックに、けだるい声で
「また逢いましょう」と歌っています。
また逢いましょう
いつか、どこかも知れないけれど、青い空の下で また
安くて使いやすいから、なんて事で、被爆者をこれ以上増やす様な愚行は
やめましょうよ。
ヒトの屍の上でお札を数えて楽しいですか？
見えないからって見ないふりをしていいのですか。
苦しみを誰が贖うのですか。
そんな事をしていたらやがて本当に「また逢えなく」なってしまうと思い
ませんか？
それともそんな時はあなた方はシェルターで安全だからいいとでも、仰る
つもりではないでしょうね？
すずめのてっぽうからはたまはでません。
みなさん、もうおうちへかえりませうよ。
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