笹本敦史のブログ
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短編集「A」の表題作 舞台は戦時中の中国山東省。「私」は捕虜の「支那人」の首を切ることを命じられている。「支那人」は狂っているように見える。「私」は皇軍としての誇りにかけて狂った男を切ることはできない、と抗弁するが、上官に一蹴される。つまり部下を任せるために、人を殺して「私」が「変化」することを要求しているのだと。 わずか11ページの短編なのだが、軍が戦争を遂行していくために、人をどのように支配し変えていくのかを強い説得力を持って描いている。 「私」は「支那人」への怒りを無理やりかきたて、無惨に殺す。褒める上官に「父のような温かさを感じ」、自分を囲む部下達の笑顔に「これほど人間を愛したことがなかった」と思う件に恐ろしさを感じる。その件自体が恐ろしいわけではない。間違いなく人間にはそんなことが起こり得るのだと思えるから恐ろしいのだ。
2017.06.28
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