☆*猫松屋☆本店*☆  

☆:風鈴




   風鈴



ヂリン…
 真夏に出来上がった俺たちの新しいスタジオには到底似合わない大きな出窓をアナタはつけた。スタッフにあわせて、俺も似合わないからやめようって言ったのに… アナタってば我侭なんだから…
 出窓からはサンサンと太陽が降り注いで… 暑いのなんのって(+へ+
 今日はそのスタジオを使うのが始めての日。
 冷房だってしっかり完備なのに、なんでつけないの?
 そりゃあ出窓から風ははいると思うけど… 暑いじゃん!
 アナタは出窓で何か作業をはじめた。
 あ…
「アナタ… まだそれ持ってたの? とっくに捨てたと思ってた。」
 出窓には見るからに安っぽい風鈴がぶら下がった。
「窓開けるぞ~♪」
 妙に上機嫌じゃない。
ヂリンヂリン
 安っぽい風鈴は安っぽい音を立てた。そりゃあね、プラスチックでできてるもんね(^^; 絵柄なんかよくわかんないし… たぶんひまわりかなんかだと思うけど… 
 それでも上機嫌なアナタに俺までなんだか嬉しくなってくる。
 ホントなつかしいね。まだ持ってたんだ。あれ俺がアナタに買ってあげたもんだよね。
 あれは10年前、まだ自分達のスタジオなんか持てなくて… 安い貸スタジオでレコーディングしてたら一台しかないクーラーが壊れちゃって、スタジオの中蒸し風呂状態。
 それでもCDの発売が遅れるのはまずいってんで作業は続行。
 暑い暑いって喚くアナタに、道端の露天で見つけた安い風鈴を買ってあげた。せめて気持ちだけ涼しい思いしてもらおうと思ってさ。
 安月給だったからいいもの買ってあげられなかったんだよね… 月末で苦しかったし(^^;
 隣には誇らしげに高くていい音の風鈴が並んでてさ…
 まいいけど…
 スタジオに帰って見せたら、アナタすっごく喜んでくれて(^^v よかった~って思ったっけ。
 でもスタジオには窓なかったんだよね~
「これじゃあ音出せないよなぁ… そうだ!」
 アナタはギターにくくりつけた。アナタがギター弾く度に安っぽい音が鳴って… でも風鈴のおかげで上機嫌のアナタの作業はスムーズに進んだ。
 ほらいいだろ~ なんて色んな人に見せまくって… 恥ずかしいじゃない…
 バチン!!
「なにニヤニヤしてんだよ!!」
 あだ~… ほっぺた叩かないでよ~(;m; 顔が命なのに~
「これ毎年自宅に吊るしてるんだぜ。」
 にやりって笑う。そうなの? どうりで使い込んでると思った。
 嬉しそうに風鈴を見るアナタ。そっか… ちょうどスタジオができるのが夏だったから出窓にこだわったんだね。風鈴のため? アナタらしいね。
ヂリンヂリン…
「ねぇ… もっといい音の風鈴、買ってあげようか?」
「え?いいのか?!」
 そんなに目をキラキラさせちゃって… ホント、年上には見えないよなぁ…
「いいよ、さっそく買いに行こうか。王様。」
「なっ誰が王様だよ! ブツブツ…」
 相変わらずだね~。売れるようになってからもアナタ変わらないね。
「おい!早くしろよ!!言い出した奴が車出すんだぞ!!」
 はいはい。今日は仕事終わりかな。どうせ喉乾いたから一件よってくぞ~ってことになるだろうし…
「さっさとしろ!!」
「は~い。」
 なんだか嬉しいよね。 アナタの笑顔が… 暑い日ざしなんかどうだっていいくらい。
「どんな風鈴が欲しいの?」
「う~~んそうだなぁ… とびっきりいい音のヤツ!! 柄も綺麗でさ♪」
 そうだね、いい音の風鈴、探しに行こうね…

チリン…
ヂリン…
 アナタは結局、ひまわり絵柄の風鈴を選んだ。
 散々悩んでたよな~(^^;
 こっちもすてがたい~なんていっちゃって…
「ねぇ、せっかく江戸前のいい音の風鈴買ったんだからその安っぽいの外そうよ。」
「いいじゃん別に。」
 二つ並んだ風鈴を見てアナタは嬉しそう。
 大きな出窓にはいい音と安っぽい音の二つが幸せそうに並んでる。
 俺たちも同じように幸せな顔して並んでるね…




あとがき

即興!!制作時間一時間半!!!
思いついたまま書きました(^^;
だからより内容薄い話になってます(^^;
あるとちゃんお題ありがとう!! とりあえず思いついたお話を書いただけなので、もしかしたら強制お題になるかも…
再開を記念して、ちょっくら書き加えなんぞしてみました!!






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