☆*猫松屋☆本店*☆  

☆:蝉


刺すような暑さが過ぎて、柔らかい暑さが私を包み始めました。
何気なく見上げた空はもう秋の色でした。


   蝉声


 ふと視線を向けたら、淡いピンク色のものが横切っていった。
 目で追ってみると花びら。向かいの家、入り口の薔薇アーケード横、夏の間咲いていたピンクの花がひらり、台風を知らせる風に運ばれているところだ。
 秋だ… もうすでに夏は終っていたことを強く実感する。
 焦り… 不安… そして胸の痛み…
 日に日に酷くなるものに、秋の柔らかい風がより痛みを増してのしかかってくる。
 私は死ぬのでしょうか?
 胸の痛みは酷くなるばかり。私の体を動かす気管が悲鳴をあげる。
 せめて最後の一声を…
 せめて最後に私を残しておきたいと…
 遠くでお祭りの太鼓が聞こえる。
 私はそれを見ることなく消えていくでしょう。
 台風と秋を知らせる風よ
 どうかもうすこしだけ
 私の体を運ばないでください。

 最後の一声を…

 残したい…




☆あとがき☆

我愛しい友、るいちゃんから貰ったお題です。
季節はずれも甚だしい…
貰ったお題は「蝉」、意外に難しいの…


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: