間奏



 目の前にはずらりと並んだ高層ビル。
 青空を背景に、ガラスが日光のきらめきを反射させている姿は、雄大なコンクリートの城を連想させる。

 その間を強いビル風が吹き抜けていく。

 一方、それら高層ビル群からやや離れたビルの屋上に、一人の男が立っていた。
 身体つきや雰囲気に、まだ少年の面影の残る若い男である。両目を覆うほど長い前髪が印象的だ。

 高層ビルのビル風の影響で、その場所にもかなりの強風が吹きつけていた。
 ごお、と少年の身に叩きつけてくるように風が吹く。
 その風に、一瞬少年の前髪が乱れ、隠れていた両眼がのぞいた。 しかし、固く閉じられたその瞳は何も見ていない。

────彼は盲目なのだった。

「やれやれ」
 右手で髪をなでつけながら、少年はうんざりしたような声を出した。
「あれがFOSの極東支部か──まさかこんな目立つ所に堂々と居を構えているとは思わなかったなあ」

 あきれた様子で少年は苦笑する。
 変だ。
 この少年の口振りからすると、まるで目の前の景色が見えているようだ。しかし、彼の両眼は一度も開いてはおらず、完全な失明状態にあることは間違いない。
 何も見えるはずがないのだ。
 それでも盲目の少年は、高層ビルをじっくりと上から下まで『見つめて』いる。
 観察している。
 しばらくの間そうして身動きしなかったが、やがて肩の力を抜いてため息をついた。

「ダメか──オレ程度の透視能力じゃ、ここから和美さんを探し当てるのはちょっと無理みたいだなあ」
 少年は冗談にしか聞こえないことを平然とつぶやいた。
「といって、むやみに忍び込むわけにもいかないし──せめて沢村さんがいてくれれば」

 軽く唇をかんで、思わずグチをこぼしてしまった事に肩をすくめる。
“ま、言ってもしょうがないか”
 そういった意味がその動作の中には含まれているようだ。

 彼の背後で、階段に続くスチール製のドアが開けられたのはその時だった。目付きの悪い、ごつい顔立ちの警備員がぬっと姿を現したのだ。
 手に持った警棒を、これみよがしにぶらぶら振ってみせている。
「こらあ、そんな所で何をやっとるっ!」
 じろりと少年の姿をにらみつけると、野太い声を出した。
 立入り禁止の屋上に入り込んだ人間を注意するというよりは、単に人をおびえさせるための声のかけ方であった。
 この警備員は、役職をかさに着て人を恐がらせるのが趣味であるようだ。
 クッチャクッチャと、ガムを噛むいやらしい音をさせながら警備員は背後に近寄ってきたが、少年は大して気にしていないらしい。
 彼の関心はあくまで目の前の高層ビルにあるのだ。
 並の人間ならば青ざめてしまうはずの怒声をあっさり無視され、警備員のこめかみに青スジが立つ。

「小僧、どこから入ったのか知らねえが、ここは立入り禁止なんだよ」
 思い切りドスのきいた声をかけたとき、ようやく少年は振り返った。
 その顔が緊張のかけらも示していないことに気づき、さらに警備員は不機嫌になる。
「おい小僧、名前を言え」

 警備員の不遜な物言いに、少年は薄笑いを浮かべてつぶやいた。

「笑い猫さ」

 その次の瞬間、唐突に少年の姿が消え去るのを見て警備員は硬直してしまった。
 何が起こったのか理解できず、警備員はぽかんと口を開けた。
 彼の脳裏には、消える寸前に少年が浮かべた笑みだけが印象づけられた────




         ~ 間 奏 2 ~

 そこは白い部屋であった。天井も、壁も、今自分の寝ているベッドも白い。
 目を覚ました途端に視界に入った蛍光灯の光も真っ白だ。

 まぶしくて、一度開いたまぶたをもう一度閉じる。
 暗いところに目が慣れていたので、目の奥が痛い。今度はゆっくりと開いて、二・三度まばたきをすると、部屋の中がはっきり見えるようになった。

「────」

 少女は目を開けはしたものの、まだ、意識がはっきりしていないようだ。視線は宙をさまよい、今、自分の置かれている状況が理解できていないらしい。
 だが、そのぼんやりした瞳に段々と焦点が合っていき、意思の光が宿った途端、彼女はがばっと身を起こした。
“ここは?”
 ぐるりと部屋を見回す。

 窓はなかった。エアコンの通気孔らしい金網が、天井のすみにひとつあるだけの殺風景な部屋だ。
少女──和美の顔がすっと青くなる。
“捕まっちゃったんだ!”

 瞬間、斎木学園の校庭での光景が一気に脳裏に浮かび上がる。
 その途端、頭がズキズキッと痛んだ。
「はうっ・・・」
 割れてしまいそうな頭痛に、和美は頭を抱え込んだ。全身から冷汗を流しつつ、ベッドの上をのたうつ。

 すると不意に、頭の上に誰かの手が乗せられた。すうっと激痛が消えていく。
 何か暖かい波動の様なものが、自分の身体を包み込んでいるのを和美は感じた。
「う・・・?」
 薄目を開けて、自分の頭に掌を乗せている人物の顔を見る。

 にこっ。

 金髪で青い瞳の女性が優しく笑いかけてきた。
「安心なさい、もう大丈夫よ」
 そう言って、和美の髪を軽く撫でる。

「・・・あなたは?」
 ぱちくりとまばたきして、和美は問いかけた。

「私はエレナ・ランバーソン、カズミ、あなたの仲間よ」
 和美の頭を愛しげに撫でながら、金髪の女性はささやいた。

 年齢は三十歳前後といったところだろうか、和美には無い大人の女性が持つ落ち着きが感じられる。

「でも、あなたFOSなんでしょう──?」
 和美の瞳に小さくおびえの光が見える。エレナがこくりとうなずくと、その光はより大きくなった。
 頭を撫でていたエレナの手を払いのけて、和美ははね起きた。
「ここはどこです! 学校のみんなは? あたしをどうしようっていうんですか!」

 大きく目を見開き、両手で胸を押さえてエレナを見つめる。
 しかしエレナの優しい表情は崩れない、おびえきって震える和美に対して、エレナは実に落ち着き払っていた。
 再び手を差しのべる。
「落ちついてカズミ、恐がらなくてもいいのよ何もしないから───冷静に私の話を聞いてほしいの」

 静かに話しかけてくるエレナから、何か暖かいものがにじみ出てきていることに和美は気がついた。
 さきほど、自分の頭痛を消したのと同じものであった。思わずうっとりした気持ちになって眠くなってしまいそうな優しい波動である。
 だんだんと和美は落ち着きを取り戻していった。肩の力が抜けていく。
 それがエレナにも判ったのであろう、くすっと鼻を鳴らした。
「そう、恐がることは何もないの、私たちは仲間なんだから──」
「で、でも!」

 抗議しかけた和美を、エレナの青い瞳が制した。
「聞いて、カズミ。FOSについてあなたがよくない感情を持っているのはよく判るわ、やり方があまりにも強引すぎたものね──でも、だからこそ知って欲しいの、私達の本当の目的を」
「本当の──目的?」

 エレナの落ちついた瞳が、その瞬間、熱っぽいものを浮かべた。

「そう、“地球救済計画”よ」

 その言葉を耳にして、ごくりと和美は喉を動かした。

     ☆        ☆        ☆

 暗い、コンクリートの部屋であった。セミダブルのベッドとロッキングチェアの他には家具らしい家具も見当たらない。人の住む場所というより獄中のイメージが強い。

────兵藤の部屋であった。

 室内の照明を全て消し、彼はその長身をベッドに横たえていた。身じろぎひとつしないが眠っている訳ではない、ぼんやりと窓の外に浮かぶ月を見つめているのである。
 相変わらず、感情というものを欠いた能面のような無表情ぶりであった。
 それでも月を見ている時だけはこの男の殺気がいくぶん和らいでいるようだ。四六時中全身に緊張をみなぎらせている彼が、唯一くつろげるのが、この独房のような寒々しい部屋にいる時だけなのであろう。
 誰も信じない、誰にも頼らない、誰にも心を開かない人間にとっては、己一人になれる空間に閉じ込もる時が最も平穏なひとときなのかもしれない。

 しかし、そのひとときもインターコムの呼出し音によって中断された。

 ぴくりと耳が動き、兵藤の瞳の奥にいつもの殺気をはらんだ危険な光が浮かんでくる。しなやかな動きでベッドから身を起こすと、音もなく部屋から出ていった。

     ☆        ☆        ☆ 


「ティンカーベルが目覚めました」
 TVモニターに映し出された和美の画像を見ながら、オペレーターの一人が機械的に報告した。

「ふむ、ようやく目覚めたか──」
 脂ぎった額にハンカチを押し当てながら、FOS極東支部責任者の田崎はつぶやいた。常に軍服を着込んでいる所が、なんとなくナチスを連想させる中年太りの男だ。

「捕らえてきてから丸五日間──よく眠っていましたな」
 田崎の隣に立つ科学者が眼鏡をずりあげながら言うと、手にしたファイルを田崎に手渡す。
「これが彼女について得たデータです」
 言われて、田崎は手渡された書類に目を通した。

「これによると、確かに潜在能力値はものすごいものであることがわかります。我々FOSが実戦に投入しているエスパーの平均の能力値と比較してみても、ずばぬけて優れています──ただ、少し気になることが──」
「なんだね?」
 言葉を切った科学者に、田崎が聞く。

「いえ、潜在能力値はものすごいのですが──この五日間に彼女から得たESPの数値からは、まるでそれが感じられないのです」
 ぺらりとファイルをめくって、言葉を続けた。
「例えば、この間見せたティンカーベルのサイコキネシスは、飛んでいるヘリコプターをはじきとばすほどの爆発力がありました。しかし、このデータによると今の彼女はスプーン曲げ程度の力しか出せないことになるのです」

「それはまた、ずいぶん極端だな──まさかESPが消えてしまったのか?」
 田崎はぎょっとした、苦労して捕らえたというのに使い物にならないなどということになったら・・・

「いいえ、そうではありません。確かに非常に弱くはなっていますが、消滅したわけではないのです。恐らくすぐに強力なESPを使える状態に戻るでしょう」

 眼鏡の科学者の冷静な言葉に、田崎はほっと息をついた。ハンカチで額の汗を拭う。
「それにしても、なぜそんなことになるのかね?」

「それです、彼女の能力が不安定なのは、要するにまだ未発達の段階にあることを意味しているのだと思われます。信じ難いことですが、ティンカーベルの超能力はこれからも伸びていく可能性が大です。」

 淡々と語られたその言葉に、田崎は目を見張った。

────ティンカーベルのESPはこれ以上まだ強力になるというのか!

 信じ難いことである、そんなエスパーの話は聞いたことがない。もし本当に成長していったならば、文字通り世界最強の超能力者に育つに違いない。なるほど、上層部が必死になって手に入れようとしたわけだ。今後この娘は絶対に役に立つ!
 田崎は驚きと、喜びとが混ざり合った不気味な笑みを浮かべた。 その横で科学者が、

「未完成で不安定だからこそ、その可能性もたいへん大きいというわけですな」
 と、つぶやく。

「ところで、肝心な彼女の『教育係』は誰が?」
「とりあえず、今はエレナに相手をさせておる。だがモノがモノだからな、本部から今日“ダニー”が来ることになっている」

 科学者はぎょっとしたようだ。
「──ダニー、ですか? するとティンカーベルを強制洗脳に?」

 田崎は首を振った。
「彼女がエレナの説得に応じて、自主的に我々に協力してくれたらその必要はないのだがな」
「そうなって欲しいものですね」
 くい、と眼鏡をずりあげながら、彼はTVモニターの中の和美の姿に目をやった。
 重々しくドアが開いて、音もたてずに兵藤が入ってきたのはその時だった。

「何の用だ」
 感情のこもらない声で、彼はつぶやいた。

     ☆        ☆        ☆

「地球──救済計画──?」
 和美は目をぱちくりさせて、繰り返す。
 きょとんとした和美に、エレナはやさしく微笑んだ。

「そう、文字通りこの母なる地球を救済する偉大なプロジェクトのことなの。『S計画』って私たちは呼んでいるわ。具体的には、こういうことよ───」
 そう前置きしてから、エレナは語り始めた。

「“ソロモンの環”って知ってる? つまりね、私たちははるか原始時代からこの地球で生きてきた生物なわけよ。水と土と空気、そして草木や様々な動物たち───豊かな自然に囲まれてね。で、それら雑多な動植物たちが、今日までの長い年月を共存してこれたのは全て自然界が絶妙なバランスを保っていたからなのよね。どこかで無理がかかれば、自然はそれを修正しようとする。
──例えば、草を食べるイナゴが大発生して、餌である草を全て食べ尽くしたらどうなるかしら?彼らは食べる物がなくて、逆に死に絶えてしまうことになるでしょう。自分で自分の首を絞めることになったわけ。けど、今度は食べる者がいなくなるわけだから、植物たちはすくすくと成長することができ、再び大地を覆う事になるのよ。
 こうして、自然はこの世を上手にコントロールする事ができるのよ。そして食物連鎖の点からも考えてみると、自然界は巨大な“円”を描いているシステムだと例えることができるわ。これがいわゆる“ソロモンの環”ね。その上、すごいことには、このシステムはパーフェクトだわ、自然が生み出した物には無駄がないのよ。すべては巨大な円の流れに沿って成立しているの。うまいことできてるわよね。『生あるもの土にかえる』
 私たち人間も地球上の生物であるかぎり、その大いなる“自然の摂理”に従って生活してきたわ。けれどどこかで人間は間違えたのよ!私たちはいつの間にか自然を支配するようになっていったわ。小賢しい『知恵』などというものを振り回して、自然の一部にすぎない己の身のほどもわきまえずに───
 その結果がどんなものか、カズミ、あなたも知っているでしょう?大気汚染・水質汚染・オゾン層破壊・緑地の砂漠化──挙げ句の果てには『核』よ!人間は自然に対して反逆を行っているようなものだわ。いつか、いえ、近いうちに必ず私たちは自然界から報復を受けるにちがいない。そうなってからでは遅いのよ!」

 熱弁をふるいつつ、エレナは興奮した瞳を和美に向ける。そして和美の右手を、両手でしっかりと握りしめた。

「実際、すでにその兆しは現れているわ。異常気象や謎の死病、それに傑作なのは“文明病”ね。自ら頼りとする『文明』によって己を蝕んでいるのよ、私たちは。──今の人間はイナゴと同じだわ、後のことを考えずに現在の利益だけを追い求め、その結果生きるのに必要な環境を自らの手で破壊しようとしている──誰かがやらなければ!誰かが先に立って、人類の愚かさを正さなければならないのよ!
 それをやろうとしているのが私たちFOSなの、母なる地球を滅びから救い、ひいては全人類の未来を守る計画がこの『S計画』なのよ。カズミ、お願い協力してちょうだい、私たちにはあなたのような人材がぜひとも必要なの!」

 エレナは、和美の手をぎゅっと握りしめて懇願した。熱っぽく語り続けているうちに、彼女の瞳にはうっすらと涙すら浮かんできている。そんなエレナの真剣な表情に気圧されて和美は頭の中が混乱するのを感じた。
 今、エレナの口から語られたのが真実ならば、自分は今までFOSのことを誤解していたことになるのか? まだよく理解できていないが、この人たちのやろうとしていることは、ひょっとして世の中のためになる、非常に素晴らしい事なのではないだろうか。

しかし────

「あの──それで、どうしてあたしなんかの協力が必要なんですか?」
 おずおずと、和美は聞いてみた。
 エレナは、そんな和美をじっと見つめて口を開いた。

「人類が歴史の中で犯した、一番の失敗は何だと思う?」
「え・・・?」
 いきなり問い返されて、和美はあわてた。とっさに何と答えたらいいのか判らない。

「それは『核エネルギー』に手を出したことだと思うの。実際、あれこそは自然を破壊する究極の問題物にちがいないわ、放射性廃棄物は自然の力によって浄化する事が出来ないんですもの。なによりも愚かなのは、地球全土を数回焼き尽くすことの出来るほどの核ミサイルを準備してあるという事実よ!
 そこで私たちFOSは、自然を守るためにクリアしなければならない第一の問題点として、『核』の消去を提案しているの。核ミサイルは当然として、原発も許さない。本当の意味での『消去』になるわ」
 きっぱりと、エレナは宣言した。
「けど、それを実現するには非常に大きな障害がたくさんあるわ、まず、『核』を使って世界ににらみをきかせている大国なんかは、この計画を阻止するべく必死で反撃してくるでしょうね。──彼らは強力な『力』を持っている、悔しいけれど『核兵器』は最強よ、今のところあれにかなう武器はないわ、でも私たちはそれを相手に戦い、勝利しなければならないのよ。人類が未来へ生き抜いていくために! これは革命よ!いいえ、聖戦と呼んでもいい、道を外れた人類を然るべき方向へ転換させてやるのがFOSの使命なのよ! そのために、私たちも強力な『力』を持たなければならないわ、『核兵器』に匹敵する巨大な『力』それは──」

 エレナは、ぴしりと和美を指差した。

「E・S・P・よ」
 真面目な顔で淡々と語るエレナに、和美はぞっとするものを感じた。

「──そ、そんな事・・・無理だわ・・・」
 かすれた声で、彼女はつぶやいた。
「あたしにはできません──」

 確かに、自分には他人にはない恐ろしい能力が備わっている。触らないで物を動かせるし、念じるだけで、飛んでいるヘリコプターをはじきとばしたり、戦車を叩き潰したりする事だってできる。けれどそれだけだ、それ以外は普通の女の子なのだ、地球を救済するだとか、人類全体のために革命を起こすなどという大それた話についていくことはできない。和美にはまるで縁のない、別世界の話の様に思われた。

 力なく首を振る和美の様子を見て、エレナの声は一層熱を帯びたようだ。
「無理じゃないわ、綿密な計画を立てて、慎重かつ大胆に事を進めていけば必ず成功するわよ。無理だなんて言って、いつまでも立ち止まっていたら何も変えることなどできないの。お願い、カズミ、勇気を出して『S計画』に参加してちょうだい、あなたのように優れたエスパーがFOSには必要なのよ。地球上に存在する、生きとし生けるものすべての未来のために!」
 和美の肩をつかんで、エレナは激しく揺さぶった。
 和美は怯えたような目つきで彼女を見返している。

「カズミ──」
 それに気づいて、エレナは軽く唇を噛んだ。
「あなたは、何のために生まれてきたの!」
 不意に、鋭い口調でエレナは問いかけてきた。
「あなたは人生の中で、何を成して何を残すの?」

「え・・・」
 和美の目の光が、怯えから戸惑いへとその色を変えた。

「あなたが他人との接触を拒む気持ち、私にもよく判る。私自身もこんな能力があるせいで辛い目にもたくさん遇ったわ。別に望んだ訳じゃないのに──何度その問いを繰り返したことか。でもね、確かに望んだ事ではないけれど、こんな身体に生まれてしまったものはしょうがないじゃない。だったら他人にできない事を、自分にしかできない事を活かして、胸を張って精一杯生き抜いてみてこそ、命を輝かすことができる生き方ってものじゃないかしら?」

『命を輝かす生き方!』
 なんと気障な、それでいて熱い感情を込めた言い方をするのだろう。

「人が一番生きてることを実感する時、それは命をかけてまでもやり遂げようという目的を見つけ、行動している時だと私は思うわ。そして、残念なことにそれは万人が必ず手に入れることができると保証されたものではないの。一生死んだ目をして、うつむいたまま天寿を全うする人もいる。どちらの生き方を選ぶかは本人次第よ。ただ、このS計画は地球を丸ごと滅びから救おうというプロジェクイトよ、普通の人だったらまず出会うことのない大きなイベントと言えるわ、人生を賭けるだけの価値があるとは思わないかしら?」 どう返事をしたものか迷いながら、和美はエレナの必死な表情を見つめている。
「!」
 不意に、エレナの腕の中で和美の身体が硬直したのは、その時だった。
「あ──」
 見開いた瞳は、目の前のエレナを写さず、どこか別の光景を見ているようであった。

     ☆        ☆        ☆

「山猫か──」
 足音もたてずに近づいてきた兵藤に、田崎は声をかけた。

「何の用だ」
「部屋に入ってくるときにはノックぐらいしたらどうだ?」
「オレにマナーを教えるために呼び出したのか?」
 能面のような変化のない表情で、兵藤はにらみ返す。

 田崎は目をそらして、せきばらいをした。
「も、もちろん仕事の話だ。隣の部屋へ来い」
 ついてくる兵藤にびくびくしながら、田崎は部屋を出る。

 隣の部屋には、すでに四人の男たちが待機していた。
 一人だけ金髪の男がまざっているが、あとの三人は日本人のようである。

「ハーイ、山猫、待ってましたよ」
金髪───ジョニー・ハミルトンが陽気にウインクをしてみせた。しかし、兵藤はそれを無視して、他の三人に視線を走らせた。
 いずれもごつい顔つきをした男たちだ、FOS日本支部専属の暴力関係担当者である。
 兵藤の刺すような視線に、彼らは気を悪くしたらしい。目つきに敵意のようなものが感じられる。

「あ、あー全員そろったな、では話を始めよう」
 部屋の中に険悪なムードがただよい始めるのを、田崎のわざとらしい声がさえぎった。
「今回の仕事はこのメンバーであたってもらう、いいな」
 兵藤に向かって言う。

「目的はあくまでも暗殺だ、この間のように目立つことはするな、彼らはそのためのサポート役につけてやる」
「獲物は?」
 兵藤が聞く。ターゲットによって暗殺の仕方が違ってくるので、相手をよく知ることは基本である。兵藤以下、全員殺しのプロフェッショナルとしての習性が身に染みついているらしく、自然に田崎の説明に集中した。

「殺る相手は、この男だ」
 そう言って、田崎は壁に仕込まれたスクリーンを操作した。
 スクリーンに映し出された写真を見て、男たちは意外そうな声をもらす。

───スクリーン上でふてぶてしい笑みを浮かべているのは、『相沢一郎』であった。

「誰です、このガキは?」
 岩のような小男が、あごを突き出してたずねる。

「兵藤は知っているはずだな、ティンカーベルのキッドナップの時に先頭に立って邪魔をした小僧だ」
「おお、彼ならワタシも見覚えがあります。あの時山猫といい勝負をしたボーイですね」
 ジョニーが口をはさむ。

「今回の任務は、速やかにこの小僧を始末する事だ、判ったな?」
「くだらねえ!」
 長髪が吐き捨てるようにつぶやく。
 すると、他の二人の男も立ち上がってわめいた。
「こんなガキ一人殺るのに、わざわざ俺たち全員が出向くんですかい?」
「まったく、これだけのメンツを揃えるからどれほどの相手かと思えば──そんなつまらん仕事、誰か一人で充分でしょうが」
 そう言って、男たちは嘲笑した。そのバカにした態度に田崎がこめかみに青スジを立てると、さらに男たちは笑い声をあげた。

 兵藤は黙ってそれを聞いていたが、ジョニーが口を開いた。
「ところで、どうしてこのボーイを始末するんです?」
「うむ、こんな小僧一人の暗殺にこれだけのメンバーを揃えたのには理由がある」
 田崎は、額の汗をハンカチで拭いながら言った。

「理由?」
「そう、調査の結果こいつの名前は『相沢一郎』、ティンカーベルの生き別れの兄でありしかもあの、相沢乱十郎の実の息子であることが判明したのだ!」
 田崎のその言葉に、それまで無関心を装っていた兵藤の目付きが一変した。
 ぎらぎらとした光が、瞳の奥に宿る。

「それは、本当なのか」
 低い声で、ぼそりとたずねる。その兵藤から異様な殺気を感じて、田崎はたじろいだ。

「ほ、本当だ。それがどういうことか判るだろう?あの相沢乱十郎のような力の持ち主だとしたら後々必ず我々の障害となるだろう。そうなる前につぶすのだ!」
「なるほど、相沢乱十郎の息子か──」
 兵藤は底光りする瞳で、一郎の写真をにらみつけた。
「けっ、相沢だかなんだか知らねえが、まだガキじゃねえか」
 小男が言うと、また他の二人が笑う。

 そんな三人を、兵藤はぞっとするような目で見据えて、田崎につぶやいた。
「こいつらは足手まといになる、この仕事から外せ、オレ一人でやった方がマシだ」
 冷静な声であった。それゆえ、三人組の気に障ったといえよう。 目に見えて男たちが不機嫌になる。
「何だとォッ!」
「山猫よ、あんたさっきから態度悪いぞ、俺ら三人を怒らせようってのかい?」
 角刈りが言う。さすがに目がすわってきている。

 ぴりっと、部屋の中にたまらない緊張が走るのを田崎は感じた。
「やめろ、落ちつかんか」
「いえいえ、山猫の言うとおりですよ。こんな三流の連中ではサポートどころか、足をひっぱるお荷物になりかねません。はっきりいって仕事のジャマです」
 その場を丸く収めようとした田崎の言葉をひったくるようにして、ジョニーがさらにあおりたてるようなことを言い出す。
 そのせいで、完全に三人は頭に血がのぼったらしい。目付きが変わっていた。

「おい、てめえら、本部から派遣されてきたからって調子にのるのもいい加減にしろよ」
 こめかみに青スジをたてて、小男は兵藤とジョニーをにらみつけた。
「俺たちを三流呼ばわりする理由を教えてもらおうじゃねえか」
 そう言って、全身から殺気を放ちながら身構える。後の二人も椅子から立ち上がり小男の両脇にならんだ。

「やめんか、お前たち!」
 あわてて田崎は制止した。だが、暴力を商売にしている男たちは言葉だけで止められるものではない。ましてや、これだけコケにされたのである、何を言っても無駄であった。
 もはや手に負えない事を悟った田崎には、この事態を見守ることしかできなかった。
 部屋の中は殺気と緊張の入り交じった空気に満たされた。
 それを感じていないのか、ジョニーは肩をすくめて苦笑する。
「おやおや、本気で怒ってしまったみたいですネ。どうします?山猫」
 きゅうっ、とジョニ-の唇がつり上がって、邪悪とも言える笑みを浮かべた。
 青い瞳が一層その色を濃くし、凶々しい雰囲気を強調する。

「てめえら、やる気かっ!」
 角刈りの男が吼えた。途端に部屋の中の殺気が凝縮していく。
「ちょうどいい機会だ、本部直属がどれほどのモンか見せてもらおうじゃねえか」
 ぼきぼきと両手の指を鳴らして、小男が身構えた。

─────と、

 もう、その時には兵藤がすぐ目前にまで歩み寄っていた。
「!」
 ひょい、と片手で小男のこめかみを鷲掴みにする。
「ぐううっ?」
 あまりにもあっさりと接近を許してしまい、小男には何が自分の身に起こっているのかまるで理解できなかった。
 何の気負いも殺気も感じられない動作であったため、むしろゆっくりとした動きであったにも関わらず、小男は何の反応を示すこともできなかったのである。
 しかし、何気ない鷲掴みではあっても、どれほどの力が込められているのか、小男は悲鳴を上げることもできずに口をぱくぱくさせた。

「むう!」
 何が起こったのか理解できなかったのは、他の日本支部員も同様であった。ようやく、驚きの声を上げた。
 それに対し、兵藤は冷やかな視線を向ける。
「スキだらけだ、な」
 兵藤の手の中で、小男は激痛のあまり口から泡を吹き出しはじめた。

「このぐらいのことでおたおたする程度のレベルだから、貴様らはいつまでたっても使えないんだ。己の身の程をわきまえることだ」
 淡々と語ると無造作に手を振って、小男の身体を放り出す。
「うおっ」
 田崎は声を上げて身をすくませた。
 ものすごい音をさせて、小男の身体はすぐ横の壁に逆さまに叩きつけられた。その常識外れの怪力を目の当たりにして、改めて男たちの顔色が変わる。
 自分たちの目の前にいるのが、人外の存在であることを再認識したのだ。

 HAHAHA、とジョニ-が腹を抱えて大笑いする。
 それを無視して、兵藤は残る二人をにらみつけた。
「冗談抜きで、今のオレの動きに反応できなかった貴様らは話にならん。この仕事に手を出す事は許さんぞ、いいな?」
「ぐ・・・」
 明らかに年下と見える兵藤に命令され、角刈りと長髪は言葉をつまらせた。
 しかし、
「なめやがって──」
 首を押さえて、目をつり上げた小男が立ち上がってきた。
 ぎりぎりと歯を軋らせながら、隠し持っていたスイッチナイフを手にする。パチンと音がして、カミソリの鋭さを持つ刃が現れた。
「今はちっと油断してただけだ、これからが本番だぜ」

 その言葉に、兵藤のもともと小さい黒目がさらにすぼまった。

 シッ!
 歯の間から鋭い音をさせて、小男は兵藤に仕掛けた。

 一気に間合いに飛び込み、兵藤の無表情な顔に向けてナイフの切っ先を閃かす。
 狙いは目だ。
 人は目前に尖ったものが近づけば、反射的に目を閉じ、のけ反って身を守ろうとする。
 同時に意識もそこへ集中する。
 この時、足元ががら空きになりやすい、小男の最終的な目的はそれであった。
 ナイフを突き出すのとほぼ同時に、小男の足が意表をつく鋭さで動いていた。
 このやり方で相手の足を砕くのが、小男の必勝パタ-ンである。足をへし折れば自由に動けない、動けない敵ならば、もう勝ったも同然である。単純ではあるが、実戦的なコンビネ-ションであると言えた。

 ただし、並の人間が相手であるならば。

 完璧なタイミングで決まった小男の蹴りは、しかし兵藤の足を砕くことはできなかった。
 逆に、蹴った足の方がどうにかなったらしく、にぶい痛みを感じていた。

 まばたきすらしない兵藤の目に見つめられた小男の全身に、どっと冷や汗が吹き出る。
「ひ──」
 小男は反射的に両手で頭をかばった。
 その動きはもう理屈でなく、殺し屋としての本能だったろう。
 その瞬間、横から物凄いパワ-が小男を襲っていた。まるで爆発でもしたように、小柄な身体が弾け飛ぶ。
「あがががっ」
 意味をなさない声を小男はあげた。

 今のは兵藤の回し蹴りだった、が、何が起こったのか本人はまるで理解できていなかった。
 それほどの動きの早さだった。とっさに出た腕のせいで頭部への直撃は免れたものの、ブロックした腕はまるで枯れ枝のようにへし折れ、あり得ない角度に曲がっていた。
 床に倒れて呻く小男の髪を掴んで、兵藤は起き上がらせた。

「これからが本番?」
 ささやくように語りかける。
「殺し合いの実戦で、二度目があると思う点が貴様らを成長させない原因か──」
「た、助け──」
 怯えた目で、小男が見上げた。

「もうよせ、兵藤!」
 たまらず長髪が声を上げる。
 ちらっ、と兵藤が視線を上げた。
 小男の髪を放すと、ぐったりとのびてしまった。
 その途端、
 兵藤は彼の頭を、かかとで思い切り踏みつけていた。

 めかっ!

 という音がして、床に赤いものが広がっていく。
「あっ!」
 長髪の顔から血の気が引いた。

「貴様らに、ごく基本的なことを確認しておこう」
 表情も変えずに兵藤がつぶやく。
「殺しはスポ-ツじゃない、一方が死ぬまで続くリアルな勝負だ。手足が折れたり、動けなくなったからとか、ましてや負けを認めたからといって終わるものじゃない。助けを求めてもムダだというシビアさが、どうも貴様らには欠けているようだな」
「だからといって仲間まで手に掛けるのか、てめえ」
 恐れは怒りに変わった。
 長髪の全身に緊張がみなぎる。

 HAHAHA、とジョニ-がまた笑う。
 きっ、と長髪はにらみつけた。
「ダメですよ山猫、三流はどこまでも三流でス。せいぜい島国で平和ボケした素人を相手にしているぐらいの仕事しか任せられるモンじゃありませんヨ」
「何だとっ」
 もう我慢の限界であった。我を忘れて長髪は飛び掛かっていく。 薄笑いを浮かべたまま、ジョニ-は目を細めた。
 途端に長髪は立ち止まる。
「が──」
 金魚のように口をぱくぱくさせて、長髪は目を見開いた。
 両手で胸を掻きむしる。
 そのうち、どろどろと口や目や耳や鼻から、大量の血を流して長髪は倒れた。

「フフン♪」
 パチンとジョニ-が指を鳴らすと、とどめとばかりに長髪の首が音をたてて後ろへねじれて一回転した。
 びくんびくん、と全身をけいれんさせて、目を見開いたまま彼は絶命していた。
 満足そうに、ジョニ-は死の瞬間をうっとりと見つめて、残る角刈りに視線を送る。
 彼は大量の汗にまみれて、目を見開いていた。
「あなたも、かかってきますか?」
 にこっ、と笑ってジョニ-がたずねると、角刈りは慌てて顔を横に振った。

「これで話は終わりだ」
 冷たい目で田崎を一瞥すると、そのまま兵藤は部屋から出ていった。
 ふう、と小さくため息をついて田崎はハンカチで顔を押さえる。
 すると、
 突然、絶命したはずの小男と長髪がぬうっ、と立ち上がり、血まみれの顔でかちかち歯を鳴らして笑顔を浮かべた

「ひいいっ?な、なんだ!」
 あまりのおぞましさに、田崎は全身の毛を逆立たせていた。
 白目を剥き顔の骨格が歪んだ死人が二人、操り人形のようにぶらぶら立ち上がり、声を上げない大笑いをしているのである。
「じょ、ジョニ-ッ!」
 はっと気づいて、田崎は金髪の青年に叫んだ。
 見ると目に涙を浮かべて笑っている。

「ハハハハハ、ジョ-クですよジョ-ク、ハハハハハッ!」
 なんと、彼は念力で死人を操って、オモチャにしていたらしい。
 むごい。
 ハンサムな顔に太陽のように明るい笑顔を浮かべてはいても、その青い瞳の奥に悪魔のどす黒さを秘めた男であった。

    ☆         ☆         ☆

「いや・・・」
 和美はその一部始終が『見えて』いた。

 頭の中に流れ込んでくる殺人現場の強烈なイメ-ジ。

 少女の繊細な感受性にとって、とてつもないダメ-ジを与える光景だった。
 頭を抱え込んでうずくまってしまう。

「カズミ? 落ちついて、一体何を見たの?」
 エレナが落ちついた口調で問いかける。
「落ちついて、力をコントロ-ルしなさい。あなたはまず自分の巨大な能力を制御するところから始めなくてはならないわ、不安定な状態でESPを発揮するのは必ず不幸な結果を残すの。でもそれができるようになれば、また考え方も変わってくるわ──」
 そう言って、例の暖かい波動を送り込んでくる。

 しかし、今の和美には彼女の声は届かないようだった。
 目の前に広がる血塗られたイメ-ジ。笑う死体のおぞましい姿。
 全身に感じる、心地よいエナジ-。安心と信頼感を覚えるエレナという女性の優しげな雰囲気──。

 その間に横たわるギャップ。

 思考の混乱。
激しい頭痛──────。

「いや・・・」
 目を固く閉じて、和美はつぶやいた。

「カズミ、いけないわ、気持ちを落ちつかせなさい!」
 エレナは和美の肩に手をかけた。

 びくん。

感電したように、和美は身体をすくませた。そして────、
 和美はある情景を思い出していた。

 母親に言われたこと。
『斎木学園に行きなさい』
 立て続けに色々な事があって、今まで忘れていたが、とても大事なことを母は言い残したのだ。
『そこにあなたの生き別れのお兄さんがいます。名前は──』

「カズミ、カズミッ!私の声が聞こえる?」
 エレナが肩を揺さぶって、和美の思考を中断させた。
 途端にあふれる、おぞましいイメ-ジ。
「やめてっ、あなたたちは信用できないっ」
 叫ぶと同時に、髪が青く逆立っていく。

「カズミ──」
「出てって!」
 ヒステリックに叫んだとき、一瞬の閃光が迸った。
 そして、猛烈なパワ-が和美を中心に爆発を起こしたのだった。

    ☆         ☆         ☆

「な、何が起きたのだっ!」
 建物自体が揺れるような衝撃があった。田崎はミサイル攻撃を受けていると報告されても信じたであろう。

「ティンカ-ベルです。測定不能の数値が検出された途端に暴走状態になりました!」
「エレナは何をしていたのだっ」
「監視カメラが破損してしまい、様子が判りません!」
 何も写さないモニタ-からは、雑音しか聞こえてこない。
 田崎は唇を噛んだ。

    ☆         ☆         ☆

 メディカルル-ムでは、凄まじい衝撃に、和美自身が呆然としてしまっていた。
 極端な能力のパワ-の変動の波が、和美の精神状態も不安定にさせているのだろうか。びくびくと、ちょっとした物音に反応しながら和美は横たわるエレナの身体に視線を落とした。
 虫の息ではあるが、呼吸をしているようだ。
 しかし、砕けたコンクリ-トの破片や埃だらけの身体は、赤い血にまみれている。

“自分がやったのだ”
 目の前が暗くなっていく。
“呪われた化け物の力で、人を傷つけてしまった”
 ばっ、と両手で顔を覆い、和美はすすり泣いた。
 その、自分の身体が音をたてて床に倒れたが、その寸前に彼女の意識は途切れていた──────。







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