勝手に最遊記

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A Rose Prison ―12―



「・・・グッ!!」
一番前に立っていた、八戒の顔色がみるみる青ざめていく。

「はっ・・八戒ちゃんっ!!」
咄嗟に悟空に庇われた桃花が、かろうじて声を上げる。


「沁紗。・・・最初は“ピアニシモ”(非常にゆっくりと)でね?」

「はい。ご主人様。」
聚楓の言葉に、沁紗が顔色ひとつ変えず、締め上げる。

「っっっ・・うぁ・・!」
八戒が膝を折る。ボタボタッと血が流れ落ちる。

桃花を庇った悟空も、悟浄も、己の血を流しながら蹌踉(よろ)めく。

「次は・・・“クレッシェンド”(段々強く)だよ。」

「はい。ご主人様。」
そして更に八戒達が苦しむ様を見て【ブチンッ】―――――桃花が切れた――――

「このっ・・・変態男おぉっ!!」
大声で叫んで、自分の体に絡まっていた蔓を引きちぎる。
棘が刺さり、血が出ているが・・怒りの余り、痛さを感じない。

「お前なんかっ・・!!」沁紗ではなく、聚楓に向かって駆け出す。
『あんなヘナチョコ美少年、人質に取ってやる!!』
人間ではない沁紗を相手にするより、勝つ算段を見越しての事である・・が。

「・・・ご主人様っ!!」
ズザアッと沁紗が蔓を伸ばし、桃花の足に絡ませる。

「あっ!?」聚楓に手が届く寸前、床に引き倒された。

「・・・フン。下品な女だね。」
聚楓が皮肉めいた顔で、
「君には薔薇なんて似合わないよ・・肥料になれるだけ光栄だと思わなきゃ。」
そう言って、桃花の頭を踏みつけた。

「・・・・桃花っ!!」悟空が悲痛な声を上げる。

グリグリと桃花の頭を踏み躙(にじ)りながら、
「最後は・・“アッチェレランド”(次第に加速)で、首でも落とそうか?」
聚楓が微笑んだ。

「っ・・は・・ないっ。」頭を踏みつけられたまま、桃花が呻いた。
「え?何か言った?」聚楓が桃花を見下ろす。

「三蔵はっ・・負けないって・・言ってんのよっ!!」
渾身の力で、頭を上げ叫んだ。
「三蔵っ!!」

再び朦朧としていた三蔵の視界に、桃花が映る。

「三蔵っ!!アンタ、何やってんのよっ!!」
『・・・煩いな。』
「アンタ“三蔵”でしょ?ンなトコで、捕まってんじゃないわよっ!!」
『・・・煩い。』
「それでも鬼畜生臭坊主なワケっ!?」
『煩い。』

聚楓が醒めた目で、
「僕の三蔵様に暴言を吐くなんて、許さないよ?」
ドゴッ・・桃花が蹴り飛ばされる。

ゲホッゲホッ・・咳き込みながらも
「・・さん・・ぞぅ!アンタ・・・情けね・・ってーのっ・・!」

「本当に下品な女だな。」聚楓が再度、桃花を蹴り飛ばそうとして―――ガウンッ
聚楓の頬を、弾丸が掠めた。

「・・・・そのバカ女には、ハリセンが丁度いいんだ。」
昇霊銃を構えて、三蔵が立っていた。


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