勝手に最遊記

勝手に最遊記

A Rose Prison ―20―


脇から悟浄が突っ込む。

「くっ口説いて何かねーだろっ!?旅が終わっても、桃花の行くトコ無いんだぜ?
だったら俺達と長安に帰ればイイじゃねーかっ。」

「・・・このバカ女を長安に連れて帰るつもりか?」
頭痛いという様に、額を抑える三蔵。

「だーっ!!ナニ、勝手に話してるのっ!?旅が終わったらの話なんて
今しても、しょうがないでしょっ!?」
桃花が割って入った。

『大体・・旅が終わる頃には、死んでる確率の方が高いし・・あたしは。』

その覚悟で始めた旅。終わった後の事なんて、考えられない。

「良いんじゃないですか?終わった後のこと・・話しても。」
そっと八戒が横に立つ。
「・・・皆、無事で・・旅を終えましょうね。」柔らかく微笑んだ。

「・・・敵わないなぁ、八戒ちゃんには。」翡翠の瞳を見上げる。

「フン・・お前も向日葵も、判りやすい。」
三蔵が皮肉めいた顔で、マルボロを銜える。

「はいはい。・・どーせねっ、世の中の男性諸君は、薔薇が似合うような
美少女や、美しい女性がイイのよねーっ!」半ば、自暴自棄に桃花が喚く。

「・・・・バカ女。“桜梅桃李”だろうが。」
三蔵がポツリと呟いた。

「へっ?なに・・おうば・・?」
間抜けな顔をして、聞く桃花を尻目に、

「さっさと行くぞ!」
三蔵がスタスタと歩き出す。

「ちょ・・ちょっと、三蔵!」
「待てよ、三蔵!俺も聞きたい・・食いモンか?」
悟空と桃花が後ろを追いかける。

くすくす・・・八戒が笑いを漏らす。

「なんだよ、八戒?」
「いやぁ・・三蔵って、つくづく判り辛い人だと思いまして・・。」
なおも笑う八戒に、
「んだよ!俺にも教えろって・・さっきの、おうば・・とかナントカか?」

「ええ、そうです。“桜梅桃李”仏教用語なんですよ。意味は、
“桜には桜の美しさ、梅には梅の香り、桃には桃の彩り、李には李の味わい”
・・・つまり、人の良い処なんて人それぞれ。それが自然で、それが当然。
皆、同じ美点ばっかりだと嫌でしょう?」

「な~るっ♪つまり、薔薇が似合わなくても・・・。」
悟浄がニヤリと笑い、
「向日葵には、向日葵の良さがある・・と、言いたかったワケね、三蔵サマは。」

ウンウンと笑いを堪えながら、頷く八戒。

「・・・・判り辛ぇっ・・・。」久しぶりの青空を見ながら、悟浄が紫煙を吐く。


「このバカ猿っ、バカ女っ!!」
遠くで、ハリセンの音が2発、聞こえてきた。


               第十話   完

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: