勝手に最遊記

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Promise ―8―




とりあえず、「遠い天蓬の親戚で、(従兄弟の、又従姉妹の・・)金蝉の秘書、
という立場に収まっている。
・・・かなり、天蓬があちこちに手を回した・・・と言う話しがあるが、それも内々の話だけであって、
桃花の存在自体、公にならないように配慮されている。

「・・・ですから、貴方の“叔母様”にも言わないで下さいね?」
にっこり微笑みながら天蓬が釘を差した。

「言われるまでもない・・。」
自分の叔母――天界の五大菩薩と呼ばれる“観世音菩薩”・・・高い位の持ち主の
くせに、かなりの性格破綻者で有る。
この異常事態を知れば、喜んで引っかき回しに来るだろう。それだけは避けたい。

「それでは僕は、引き続き資料を調べますから。」
天蓬が出ていった後、金蝉は軽くため息をついた。

あの女・・・。
最初に悟空を見たとき、「悟空ちゃん。」と叫んだと聞いた。―――――悟空と。
何故、知っていた?悟空とそっくりな“友達”が居るとか言ってたとか・・。
それに俺達の顔を見た時にも、動揺していたな。一体どういう――――――

そこまで考え込んで、左右に首を振った。
考えてもどうにもならない、判っている。判っているのに・・「金蝉!!」

バンッと勢い良く扉が開かれ、悟空と桃花が飛び込んできた。

「見て見て~金蝉っ!ほらーキレイでしょ~!?」
「お姉ちゃんに教えてもらったんだっ!良くできてるだろー?」
ズボッと金蝉の頭に花冠がかけられた。
「にっ・・似合う~っ!すんごく似合ってるよっ!!」
「うん!すげー似合ってるっ!金蝉キレイだもんなぁ~!」

悟空は本気で。桃花は笑い転げながら・・金蝉の頭に飾られた花冠に喜んでいる。

「てっ・・てめぇら・・。」握り拳を震わせて、
「いい加減にしやがれ~~~っ!!」金蝉がぶち切れた。

「きゃあーっ」「わーっっ」悟空と桃花が逃げていく。
二人の笑い声と足音が遠ざかっていくのを聞いていた金蝉は、忌々しそうに
舌打ちをして、自分の頭から花冠を外したが――――「・・しょうがねぇ。」
窓辺に軽く釘を差し、花冠をかけた。

そして・・・散乱した書類をかき集め――事務仕事に没頭した。
余計な事を考えないように。   考えても、どうしようもない事だから。


「・・・・眠いなぁ。」桃花は呟いた。
悟空と散々、遊んだ後・・・・・・。
時代が繋がっているという桜の木の根本で休憩中なのだ。

悟空はスヤスヤと寝息を立てている。
そのあどけない寝顔に安堵を覚えつつ、悟空の頭を撫でてやる。
柔らかな風が、大地色の髪をかき乱していく・・・。

『抱っこしてあげたいけど・・。』悟空に付けられた枷が許さない。
こんな子供に・・!いくら吉兆の源だからとかって酷すぎる。

桃花は“神”という存在を信じていない。
天界人が、永遠の命を持ってるから・・人間にはない力が有るから・・
神というのか?では神が年端もいかない子供に、こんな仕打ちをするのか?
――――お笑いぐさだ――――

「・・ったく、ふざけんじゃねぇっての。」思わず怒りを声に出してしまう。

「・・・恐い顔してっと嫁に行けねーぞ?」
捲簾が、酒瓶をぶら下げながらやって来た。


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