勝手に最遊記

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Promise ―17―



漆黒の夜空に、神々しい光の月が・・・闇の世界を照らしている。

桃花は悟空がすっかり寝入っているのを確認し、部屋から抜け出した。


「・・・・気持ち良いな・・。」
天界の気候は常に一定で。
例え、夜でも底冷えするような気温にはならない。

夜風が、桜の花びらを撒き散らしているのを眺めつつ・・あの桜の木にやって来た。
そっと木の幹に手をあてる。例え、元の世界に帰れたとしても・・・。

『三蔵達は、出発したんだろうな・・。』ガックリと肩を落とす。

この世界に飛ばされてから―――2週間が過ぎている。
先を急ぐ旅なのに、忽然と姿を消した自分を、いつまでも探しているはずがない。

「・・・・毎晩、毎晩、飽きないな。」
突然の声に、弾かれたように後ろを振り返る。

「・・金蝉っ!・・気付いてたの?」
「お前が毎晩、此処に来ているのを、か?・・・気付かれてないとでも思っていたのか?」
「・・・心配性だね、金蝉は。ずっと見守ってるなんて。」
「フン。お前に何かあったら、コッチが迷惑かけられる。」
その言葉に、思わず苦笑する桃花。
「・・なんだ?」
「あはは・・ゴメン。あたしの仲間にソックリで。」
素直に心配できないところが、三蔵に似ている。

「仲間、か。・・・お前に聞きたい事がある。」
「ええ?何?」金蝉の言い方に、思わず緊張する。

「お前がこの世界に飛ばされた理由・・だ。」
「ソレは・・時空鬼が・・「そうではない。」桃花の言葉を遮り、

「時間だけなら、何もこの場所でなくても良い。お前が天界に引き寄せられた理由だ。」
「そんなの、あたしにはっ・・・。」
「お前が、元、居た世界に・・天界との接点が有るんじゃないのか?」
「天界との接点?」
「天界との関わりが有る・・存在があったのではないのか?」
「―――――!!?」

桃花はやっと思い当たった。“悟空”   悟空が存在した。自分の傍に。
自分の世界と、今居るこの世界の接点は“悟空の存在”

押し黙った桃花に、
「・・・天蓬には聞かないよう、釘を差されている。が、俺は知りたい。これからの事を。」

・・そう言われても。悟空が五百年も幽閉されるなんて、言えるわけがない。
言って、その事態を避けられるのなら――――幾らでも言えるのに。

「桃花。」金蝉が桃花に近寄る。
桃花は思わず後ろに下がる。・・・が、桜の木に阻まれ、後退できない。

「・・・頼む。」その金蝉の言葉に、桃花は目を見開いた。
『さっ三蔵と同じ顔して、そんな事言わないでよ~っ!!』
大体、“頼む”何て言葉自体、三蔵の口から聞いたことがない。

「ダッ・・ダメッ!お願いだから聞かないで・・。」思わず目を伏せる・・赤面しながら。
金蝉は構うことなく、
「どうしても、聞いておきたい。・・・頼むから。」更に近づく。
『かっ・・勘弁してよぉ~~っ!!んな眼で見ないでぇーっ!!』

桃花が心の中で悶えていると、

―――――――――――――パアアアァァッッッ―――――――――――――――

桜の木の周辺が、光に包まれた。

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