勝手に最遊記

勝手に最遊記

Boys Meets Girl ―2―


「妖怪を庇う何てよ・・・お前も妖怪なんだろ?妖力制御装置を付けると、人間と見分けられないって
言うからな。巧く化けたもんだぜ!」

「違う・・あたしは人間よ。・・・でもこの子達を好きにはさせない!」

「なら一緒に死ねぇっ!!」男が思いっきり木材を振り下ろした。女は思わず子供を後ろ手に庇い、
目を閉じた・・・『?・・・アレ?』

「へっへー!やっと俺の出番だね!」
悟空が男の振り下ろした木材を軽々と片手で受け止めていた。

「なっなんだテメェ!離しやがれっ!!」男がジタバタと木材を動かそうとするが
悟空に捕まれた木材はビクともしない。

「んだよ?弱っちーなぁ。ホラよ!」いきなり悟空に木材を離された男は、もんどうりを打って転がった。

「・・・お前、ガキのくせにぃ~!!」転がった男が、青筋立てて怒り出す。

それを見ていた女が笑い出した。
「あはははは・・・赤くなったり、青くなったり・・・ホントにバカじゃなの?」

「このアマ!」別の男が女の背後から襲いかかった。・・・が、

「女の扱い、教えてあげようか~?」悟浄がタバコを吸いながら足を引っかけた。
「悟浄!邪魔すんなよな~。」

「いーじゃねーか。食前の運動にもなんねぇけど。オンナがらみだし♪」
「お前・・・ホント、好きだよな・・」悟空があきれて物も言えない様な顔をする。

足を引っかけられて転ばされた男が、二人のやり取りの隙をうかがい、ナイフを取り出した。

「ダメですよぉ~刃物なんか出しちゃ♪」「なっ・・いつの間に!?・・・うわっ」

背後から忍び寄っていた八戒がさっさとナイフを取り上げた。
「女性と子供相手に、大人げないですよ?」・・・・・思いっきり微笑んで見せる八戒に、男がたじろぐ。

「こっ、こいつら只者じゃねぇぞ!みんなで殺っちまえ!!」

にわかに――――――――――人垣が殺意をもって迫り始めた。

「どうするんだよ、八戒!」焦り顔の悟空。
「困りましたね~人間相手ですし・・。」ちっとも困って無さそうな顔の八戒。
「美人の相手なら喜んでするんだけどよ。」悠々とハイライトを取り出す悟浄。
・・・この状況下でまだそんなことを言うか?悟空と八戒が目で言い合った。

ガウンッガウンッガウンッ・・・・・炸裂した銃声が、人垣の動きを止め・・・皆、目を見張った。

「三蔵!」
「派手な登場の仕方ですね~。」
「アイツが一番目立ちたがり屋なんだろ。」

「おい、坊さんだ。」「坊主が銃なんかぶっ放すか?」「でもあの格好・・。」人垣が崩れ始めた。

三蔵は良く通る声で、「俺は仏道に帰依する者だ。この妖怪の子供達の処遇については、
この俺が責任を持って対処する・・・お前達はこの場から退け。」そう、言い放った。

「しかし・・。」「いくら坊さんでも・・・なぁ?」人々が口々に不安を言い始める。
このままでは収拾がつかないか・・・そう思った時、

「もしかして・・・玄奘三蔵法師様では・・・」人垣の間から、妖艶な美女が現れた。

黒衣のドレス。豊満なバスト。長い黒髪がウェーブして、華やかな顔立ちに良く似合っている。
そして体中に散りばめられた宝石の数々。見るからに、取り囲んでいる町人達とは格上の容姿である。

「・・・そうだが。」一瞥して三蔵は答えた。

「まぁやっぱり!そのいでたち・・・お噂は聞いております。」美女は嬉しそうに微笑んだ。

「陽欄(ようらん)様・・この方達は・・・?」一人が丁重に美女に聞いた。
「大丈夫ですわ。あの三蔵様がついておられるんですもの。みなさん!話は聞こえましたわよね?
私が責任を持ちます。どうかこの場から退去して下さい。」

その言葉を聞いて・・・人垣はたちまちかき消えていった。

その美女は三蔵達に
「私は陽欄と申します。亡くなった夫の代わりに町のまとめ役をしておりますの。どうぞご安心下さい。」

未亡人!!悟浄の目がキラリと光った。

「大丈夫?君たち・・。」八戒が心配そうに子供達をのぞき込んだ。
「大したケガはしてないみたい。ありがとう、助けてくれて。」まだ怯えている子供の代わりに、
庇っていた女が答えた。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: