勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―2



大抵は誰かと共に居るが、悟浄と悟空はまだ帰って来ず
八戒は洗濯場へ、三蔵は部屋でくつろいで居る。

もちろん、一人では外出はしないが・・・宿の裏庭だし。安全圏だと思い、気分転換に出て来たのである。

秋晴れの空に羊雲が漂い、爽やかな空気が吹き抜ける・・・うう~んと背伸びをして、深呼吸・・・・
『気持ち良いなぁ。やっぱ、秋って好き・・・。』珍しく乙女チックに感傷に浸っていると、

「ちょっと!」

キツイ女の声が、その場の空気をぶち壊した。

嫌な予感・・・桃花が後ろを振り返ると―――――――三蔵を取り囲んでいた“派手で・下品”(三蔵談)
な女の子達が、桃花を睨み付けながら立って居た。

『うはぁ・・・。』ゲンナリした。大方の察しは付く。三蔵が桃花を伴って宿へ消えた為、
腹立ちを押さえきれない女の子達が、宿まで押し掛けて来たのだろう。
この裏庭だって、入ろうと思えば幾らでも入れる・・・別に要塞でも無いのだから。

「何か・・ご用?」桃花は精一杯、愛想良く言った。下手な妖怪より、性質が悪いのは判っているから。

「何か用?じゃないわよ。アンタ、なんなワケ?」「そーよ!寄り添っちゃって・・厭らしい!」
「大体さぁ、その顔で一緒に旅してるって言うのが笑えるのよ。」「そうよ、スタイルだって最悪じゃん!」
ギャハハと嗤い声を上げながら、桃花を罵倒する女達・・・『頭、イテェ。』相手にするのも馬鹿らしい。

「それだけ?それじゃ・・。」宿へと戻る桃花へ「話は終わってないのよっ!」後ろから掴みかかる。

「ちょっ・・止めて!?」掴まれた右腕を、自ら捻って相手の手を外す桃花。
ある程度の体術は教えて貰っている・・・ソレが、仇になった。

「ナニ、このオンナッ!!」一気に女達が桃花へと――――掴みかかり、メチャクチャに乱暴を始めた。
頬を叩き、髪を引っ張り、鳩尾に蹴りを喰らわせる・・・リンチ状態である。
流石に多勢に無勢ではされるがまま、悲鳴を上げることも出来ず――――しゃがみ込む。

「その不細工な顔に、傷の一つも作ってやるっ!!」興奮したオンナの一人がナイフを取り出す。
『・・・・ヤバ。どうしよう・・。』他の女達に無理矢理立たせられ、顔にナイフを突きつけられた。

「覚悟しなっ!!」――――ナイフを振り上げて・・・・「いっ、痛いっ!!」女が悲鳴を上げた。


「こーゆーモンを、女の子が持ってちゃイケねーよなぁ?」ナイフを持った手を、悟浄が捻り上げている。

「ごじょ・・くん。」頬が腫れて、上手く喋れない桃花の顔を見て、悟浄が顔をしかめた。
「俺らの連れに、文句有るならさ・・・俺に言えっての!幾らでも相手になってやんぜ?お嬢ちゃん達。」

悟浄に睨み付けられて――――――女達は一目散に逃げ出した。
「アンタが悪いのよ!坊さんとデキてるから!」捨て台詞を残して。

解放されて、倒れ込む桃花・・「あり・・がと。ごじょ・・くん・・。」
「大丈夫かよ!?桃花っ。」悟浄が抱き上げて、宿の中へと運び入れた。


部屋へ連れていくと三蔵と八戒が地図を見ていて・・・・「どうしたんですか!桃花っ!?」
八戒が血相を変えた。
慌てて体の傷を治癒する八戒―――「まさか悟浄?貴方の所為ですか・・・!?」八戒の冷たい視線。

「バッ!?違げーよっ!三蔵の所為だろぉーがっ!!」慌てた悟浄。自分の所為にされては敵わない。
「・・・三蔵の?」―――――察しの付いた八戒。明らかに人間の爪痕とおぼしき傷まであるから。

あらかた治癒を終え・・・桃花は寝かされていたベッドから起き上がった。

「・・・っと。もう、平気。ありがとね、八戒ちゃん。」笑顔で振り向くと、八戒が三蔵を睨んでいる。
三蔵はいつも通りに新聞を読んでいる・・・それが八戒には気に入らない。

「三蔵。貴方はもう少し周りの事を考えて、行動した方が良いんじゃありませんか?」
言葉使いは丁寧だが、その目つきと言葉に含まれた棘に、三蔵が眉間に皺を寄せた。

「・・・煩せぇな。てめぇに注意される、いわれは無ぇよ。」
「良くもまぁ、ヌケヌケと仰(おっしゃ)いますね。貴方の行動が、桃花を危険に晒したんですよ?」
三蔵は桃花をチラッと一瞥し、
「フン。命に関わるような事じゃ有るまいし。大体、ソイツがフラフラ出歩いてるのが悪いんだろうが。」
「命に関わったら、どうするつもりだったんです!?元はと言えば、貴方が桃花を利用したのが・・。」
「煩いっつってんだろうが!俺に指図してんじゃねぇよっ!」バシイッ!三蔵が八戒に新聞を投げ付けた。


――――――――――床に散らばる新聞・・・八戒と三蔵がお互いを睨んだまま、動かない。


悟浄と桃花も話すどころか、声も出せない。もの凄い緊張感が部屋を包む。それは・・・・
「たっだいまーっ!!腹一杯だぁ~!!スゲーんだぜっ!?20人分喰ったら、タダっていう・・。」
思いっきりドアを開けた悟空が・・・・・・・・瞬間凍結するほどの緊張感で。

―――――それが昨日の事で・・・それから三蔵と八戒は口を利くどころか眼も合わせない。

一夜明けた今日も、冷戦状態が続いているのである。


『・・・勘弁してぇ・・・一番、恐いじゃない・・・。」よりにもよって。三蔵と八戒ちゃんだなんて。
ジープの上で、桃花は深いため息を付いた。

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