勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―3



「・・何だかノンビリしてるねぇ。」桃花が言うのも当然で。

小さな村には田畑が耕され、お年寄りがゆったりと畦道(あぜみち)でお茶など啜っている。
小さな子供達が元気良く走り回り、笑い声が青空に響く。

「だなぁ。妖怪の被害に遭ってねーのか?」悟浄も首を傾げる。
「誰かに聞いてみようぜっ!」悟空が元気に走り出す。
それを見送って、
「八戒ちゃん、この村に宿ってあるのかなぁ?」ごく、普通に話し掛けた。
「そうですねぇ。無ければ・・・村の何方(どなた)かに泊めて頂きましょうか。」八戒もごく、普通に。

――――――――微笑んで見せた。三蔵の方は決して見ようともせず。

「三蔵!それで良い?」・・・少々、引きつった笑顔で三蔵に話を振って見せた桃花だが、
「・・・・・・。」此方もいつも以上に不機嫌顔で、視線を合わせずに頷く三蔵。

悟浄が“ムダだ”と首を振って見せた。『・・・やっぱり?』桃花はガックリと肩を落とした。

その日の午後・・・・ぼんやりと空を眺めていた桃花。

やはり村には宿屋が無く、村長の好意で屋敷の離れに泊めると申し出てくれた。

聞く所によると、この村は昔、邪悪な妖怪に悩まされていたのだが、
旅の高僧が妖怪を封印し結界を張った。
妖怪が居たという裏山に結界が有る為、今も暴走した妖怪の侵入を防いでいるという。
その高僧が“三蔵法師”という説もあるが、名を名乗らなかったらしく記録にも残っていない。

「それで平和なんだなっ!」悟空がウンウンと頷いた。

―――――――――――――――屋敷の離れは部屋数が多く、それぞれ個室が与えられた。


「・・コレでちょっとは気分が楽になるってモンだな。」悟浄は清々したと言う顔をしていたが、
桃花はそう喜べない。自分が原因なのだから。


考えるのは八戒と三蔵のこと。『三蔵は性格的に、ムリ。』自分から折れるような事はしない。
頼みの綱は八戒。カナリ怒っているけど、八戒ちゃんなら・・・・・
『問題は八戒ちゃんの機嫌を直すコト、だよね。』 

八戒ちゃん・・・八戒ちゃんの機嫌を直す・・・八戒ちゃんが喜んでくれるような・・「あっっ!!」 
思わず大声を上げた。
『八戒ちゃんの誕生日っ!今日だった!』自分の誕生日の時に、皆の誕生日を聞いておいたのだ。 

なにか・・・なにしよう!?ウロウロと部屋を歩き回る。
自分の誕生日は・・・地獄の花火大会で。アレはアレで面白かったのだが、今の季節では出来ないし、
相手が八戒である。あんなコトをすれば、八戒の機嫌がますます悪くなるのは見えている。

とはいえ、お金もない。あっても、この村では何も買えない・・・・『そうだっ!』はたっと立ち止まる。 
「うんっ!コレなら、おっけーでしょ!!」一人、スキップなど踏みながら、桃花は部屋を後にした。



『我ながら、子供じみたことを・・・。』膝に乗せたジープの背を撫でながら、八戒はため息を付いた。 

三蔵との関係を修復出来ないまま、時間ばかりが過ぎていく。
『僕は悪くないんですけど・・・。』つい、ムッとしてしまった。三蔵の態度があんまりで。 

三蔵の態度が悪いのはいつものこと、そう言えばそれまでなのだが。
それで被害を受けるのが、桃花と言うのは納得出来ない。一番、守らなければいけない存在なのに。

利用して、知らんフリというのは・・・あんまりじゃないですか―――――また怒りが込みげる八戒。
膝の上のジープが怯えて縮こまっていた。 



その頃・・・・桃花は鼻歌なぞ歌いながら、裏山へと足を踏み入れていた。

悟空か悟浄でも誘おうかと思ったのだが、三蔵と八戒の緊張感に疲れたらしく、部屋で伸びていた。
『ま、ありがたーい結界もあることだし。』二人のだらしない姿に苦笑しつつ、一人で出て来たのだ。

『それに・・・・自分だけの力で、八戒ちゃんへのプレゼントを見付けるんだっ。』浮かれ気分の桃花。

その地中で――――――――――・・・永き封印を破り、蠢くモノ達が居る事など、知る由もなかった。 

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