勝手に最遊記

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Curse ―2―



「・・・・・。」無言で桃花が息を吐く。挑発したのは、バングルの力を発動させる為。そうしなければ
自分の所為で、三蔵達を危険に追い込んだだろうから。『・・・それでも。』やはり、割り切れない。

「桃花ぁ!大丈夫かっ!?」悟空が一目散に駆け寄って来る。「ん。大丈夫だよ?」
ホッとして、「そっか!良かった。」無邪気に笑う悟空につられて・・・桃花も笑顔を見せる。

妖怪の死体が、山のように転がる荒野で――――――場違いなほどの、悟空の笑顔。その笑顔に、
どれほど救われてきたか・・・・。

「んじゃ、行こうぜ?早く移動しねーと、今日も野宿だってさ!」悟空に促され、歩き出そうとしたが
「・・・・っ!?桃花っ!危ねぇ~っ!!」いきなり、悟空が桃花を押し倒した。――ザァパアンッ――
液体が。緑色の液体が、悟空に降り注ぐ。

「!?何だっ!?」ジープを変化させ、乗り込もうとしていた悟浄達が異変に気付いた。


岩山に―――――高さ30メートルは有ろうかという岩山に。女が立っていた。
灰色の長い髪。緑色の瞳。華奢な手足。ほっそりとした体を、黒い着物がますます細く見せていた。

女は薄く嗤い・・・・スッと姿を消した。跡形もなく。

「あの女・・・!?」気配を消していたのか。俺に気取られる事も無く。三蔵の眉間に皺が寄る。
―――――――――ヒトならざるモノ――――――――――で有ることには、間違いないだろう。
目的は・・・・今のところ、判らないが。

「悟空!?大丈夫ですか?」八戒が悟空の体を助け起こす。
「ん・・うん。何か、ピリピリすんだけど?」液体の所為なのか――体中を包む感覚に、顔を顰める。
「ホント・・ピリピリするね?」続いて桃花も起き上がる。
悟空に庇われたとは言え―――――少し、体にかかってしまったらしい。

「とにかく・・・あの女性のことも気になりますが。町へ急ぎましょう。川も近くにはないですし。」
「そうそう!二人して濡れてるなんて・・ヤ~ラシッvv」
――悟浄の頭に一発拳骨を落とし、(メリケンサック付きv)三蔵達は近くの町へと急いだ。


「・・・桃花?大丈夫ですか?」ミラーから後部座席の桃花を伺う。
「うん。・・早く、シャワー浴びたいよぅ。」濡れた体が気持ち悪いのか、唇を尖らせて言う桃花。
「なるべく、急ぎますね。」八戒がグッとアクセルを踏む。

見たところ・・・変わりないようですが。  かけられた液体が何なのか?あの女性は何者なのか?
目的は・・・?判らない事だらけで、不安が大きくなる。

『何も・・・無ければ良いのですけど。』祈るような気持ちで、先を急ぐ。

              その八戒の不安が――――――的中する事になる。

―――――――その日の午後。

とにかく急いで、町に辿り着いた三蔵達。

早速、宿を取り・・・落ち着いたところで、皆で昼食を取り始めた。

「あの女性・・・何者なんでしょうか?」八戒が給仕をしながら、口に出した。
「だよな?ケッコーな美人サンだったけどよ?」口に焼売を放り込みながら、悟浄がらしい台詞を言う。
「さぁな。妖怪でもない。・・・俺達に危害を加えなければ、捨て置いて先を急ぐだけだ。」
チラリ、と、三蔵が桃花と悟空に視線を向ける。

口に出さないが・・・体にかけられた液体。その液体が悟空と、僅かながら体にかかってしまった桃花。
その液体が、どのような影響を及ぼすのか?正直、三蔵にも判断が付かない。

『・・・あの女。気に入らねぇ。』思わず握った箸に力がこもった。


「悟空?どうかしましたか?」怪訝そうに八戒が伺う。
「えっ?あ、別に・・・。なんか、腹一杯なんだよなぁ?」悟空も首を傾げる。
ソレもその筈―――悟空がいつものような食欲を見せない。いや、普通の大人並に食事をしているが。
ソレは、悟空にとって少なすぎる量――――――八戒が怪訝に思うのも無理はない。

「食欲魔人の小猿ちゃんが?どうしたのヨ?」からかいながらも、悟浄が心配げに見る。
「っせーな!小猿って言うなよ!・・マジで食欲、湧かねーんだもン。」とうとう箸を置いた。
「桃花?桃花もあまり食べていないようですが・・・。」「桃花チャンも?」

「あはは・・。あの液体・・・食欲減退の効果があったりして。」それならダイエット出来てイイんだけど。
などと、笑って見せる桃花の首根っこを掴み、

「おい!悟空、コイツと一緒にもう寝ろ!」そのまま食堂から連れ出す。
「ちょ・・三蔵っ?何よ~!?ね、ネコじゃないってっ・・「黙れ、バカ女!」三蔵が、問答無用とばかりに
ズルズルと引っ張って行く・・・・その後を、悟空も慌てて付いて行く。


「・・・・三蔵も心配してるんですねぇv」お茶を啜りながら、八戒が嬉しそうに微笑んだ。
「・・すげぇ心配の仕方だよな、おい。」悟浄が半ば呆れながら、ハイライトの火を付けた。

夜も更け・・・・異変の朝が訪れた。

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