勝手に最遊記

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Curse ―6―


いつの間にか―――――――昨日、液体をかけた女がベッド脇に立って居た。

女がゆっくりと桃花に近づく。

間近で見ると・・・綺麗なヒト。 素直に思える。・・・でも。

長い灰色の髪には艶が無く。 肌の色は白いと言うより青ざめてて。 緑色の瞳には力も光もない。


「・・・・逃げないの?」 初めて聞く女の声は、か細く、弱い。
「逃げても無駄だし、それに・・・。」
「それに?」
桃花が一息ついて、
「・・・・まだ。マシな死に方・・・だと思う。」

このまま死ぬというのは―――――――大いに不本意だ。『だけど。』迷惑は掛けたくない。
今、死ねば・・・迷惑をかけることは少ない。『・・・呪われそうだけど。』恐い四人の顔が浮かんで
思わず顔に笑みが浮かぶ。 その様子を、女が不思議そうに見ている。

「・・・私は、あなたの命を奪いに来たのよ。」女が、桃花の顔に手を翳す。
「覚悟は出来ているから。・・・でも、最後に聞きたい事があるの。」
「死んでいくのに・・何を聞きたいって言うの?」女が眼を細めた。
「死ぬから。死んで逝くからこそ・・・・理由を知りたいの。」そっと桃花が女の手を掴んだ。

            「あたしの命で・・・・あなたの“何が”救われるの?」

女の手が、ピクッと反応して・・・・小刻みに震えだした。

「・・・大丈夫?」桃花が上体を起こし、女に問いかける。
「離して・・・離してっ!!」女が手を振り払おうとするが、桃花が必死に掴む。
「何がっ・・何が苦しいの!?」揉み合いになり、ベッドから落ちてしまう。

「きゃっ・・・!」細身の女の上に、のし掛かるような体勢で落下した桃花。そこへ、
「桃花っ!肉まん買ってきてやったぞっ・・・」勢い良く、扉を開けて悟空が帰って来た。
「お前っ!?」状況を見て、瞬時に理解した悟空が、
「許さねぇっ!!」肉まんを放り投げ(もちろん、テーブルの上に)如意棒を具現化させる。

ハッと女が体を起こして、戦闘態勢を取ろうとした・・・「悟空ちゃんっ!待ってっ!!」
桃花が悟空の前に立ちはだかる。女を背中に庇って。

「何、庇ってんだよっ!桃花っ!?」混乱した様子で悟空が叫ぶ。「ソイツは桃花を・・!」
「判ってるよ!悟空ちゃんっ!」そう、桃花の髪は・・・・既に全部が白髪と化していて。

「でも・・・・でも。話を聞いてあげても良いでしょ?」
「・・・桃花。」

桃花に庇われている女を見れば・・・・唖然としていて。その様子からは殺気も感じられない。
悟空が軽く息を吐いた。
「判った。・・でも、如意棒はこのまんま出しておくからな?」
「ありがと、悟空ちゃんっ!」破顔し女に振り返った。「話しをして?殺し合うだけが方法じゃないよ。」

女が・・・・微かに頷いた。
「私の名は、樹來(ジュライ)。人間ではありません。人間が言うところの、木の精です。」
女の言葉に、桃花と悟空が驚愕した。




「・・・・ドコまで行くんだよ?三蔵サマ!」
連立する岩山の群を抜け・・・・・深い、森の奥へと足を踏み入れた三蔵達。
さほど長く歩いている訳ではないが、急ぐ気持ちが苛立ちを募らせている。

三蔵は何も応えず、只・・・・足を進めて行くのみ。悟浄はハ~ッとため息を付いて、黙り込んだ。
こんな三蔵に何を言っても無駄だと判っているから。

「キューッ!」八戒の肩に留まっていたジープが突然、鳴き声を上げた。
それと同時に、三蔵が歩みを止めた。

「・・・三蔵?」三蔵の背中に八戒が声を掛けた。

「・・・・・・気にいらねぇな、全く。」三蔵が独り言のように呟く。

その視線の先にある光景を、八戒と悟浄が見て―――――――息を呑んだ。

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