勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―4



もう、こんな時間か・・。そっと三蔵を見ると、相変わらずの仏頂面で新聞を読んで(睨んで)いる。

隣の部屋から気配が感じられない所を見ると、悟空達はまだ食堂に居るのだろう。
『・・ま、悟空ちゃんと悟浄君ってすぐケンカしちゃうから。』
例え隣の部屋でも―――――騒ぎが始まれば、三蔵がキレるだろう。

『良かった良かったv』足取りも軽く、桃花は風呂場に向かった。


風呂場はユニットでは無かった。小さいながらもちゃんと浴槽がある。
『いやーんv嬉しいぃv』嬉々として湯を溜め始める桃花。

荒野をジープで疾走する毎日。妖怪との戦闘。泥や埃や汗やら・・・とにかく、体が汚れる。
野宿が続けば・・・顔を洗うことさえ、ままならなくなる事も多い。
嫁に行く気が無いとは言え、それではイカンと自分でも思う日々―――上機嫌で服を脱ぎだした。


鼻歌が風呂場から聞こえて来る。



『・・・・何を浮かれてやがる・・。』微かに漏れてくる鼻歌に、三蔵が顔を上げた。
バサバサッと新聞を折り畳み、眼鏡を外す。長時間読んでいた所為か、目頭を押さえ息を吐く。

『エロ河童や、バカ猿よりマシだがな。』
自分と居て妙に気を使ったり、ビクついている事も無く。かと言って、何かと構うわけでも無く。
桃花と同室だと言う事とが、思ったより不快でない事に正直驚いていた。『・・見ていて飽きねぇしな。』

外を見ると、雨は心なしか降りが弱くなってきている。
『明日は出発できるか・・。』マルボロを取り出し、火を付けた。

窓に映った暗い闇の中―――――――白い煙がか細く漂い、消えていく・・・・。
三蔵は紫暗を閉じ、微かに聞こえる雨の音に聞き入った。


『お師匠様・・・・。』

“神は信じなくても 自分を信じられる”

                  ・・・・その自分が唯一、師と認めた“光明三蔵法師”

三仏神の命により、天竺を目指しているが・・・正直、そんなモノはどうでも良い。

師が自分に遺した“聖天経文”が利用されているから。己が所有物を、取り返したいが為―――
ただ、それだけ。

『もうじき・・・天竺、だ。』最終決戦の場が、近づいて来ている。紫暗を開き、闇を睨んだ。



「さーってとvこんなモンかなぁ?」とっくに風呂から上がっていたのだが、また新しく湯を溜めた。
『三蔵ってば、絶対にシャワーで済ませてそうなんだモン。』

別にシャワーでだけでもイイとは思う。思うが、『疲れを取るには湯船につかるのが一番なんだから。』
そう確信している。『あーんなに眉間にシワ寄せて・・・ちっとはリラックスしろっちゅーの。』

少々、勿体ない気はしたが、他人とのスキンシップを嫌う三蔵。自分が入った後の湯では、入浴する気になれないだろう。
『手間暇掛けさせるよなぁ。・・しょうがないけど。』
三蔵が不機嫌なのは判る。皆の過去は聞いているから―――――――でも、さ。

・・・・ゆっくり、くつろいだって 『罰(バチ)は当たんないって。三蔵。』

丁寧に入浴剤まで入れ、桃花は満足げに微笑んだ。

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