勝手に最遊記

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HAPPY BIRTHDAY!―5


窓の外を見据えたまま、動かない三蔵に
「お風呂だよ~三蔵~お風呂だよ~三蔵~お風呂~三蔵だよ~お風呂~「誰が風呂だっ!!」
スッパーンッとハリセンが落とされた。

「痛っ・・ぅう。ちゃんと聞こえてんじゃん!・・ほら、お湯が冷めちゃうでしょ?」
自分の前に仁王立ちしたまま、有無を言わせない態度の桃花。
三蔵も、“こうなったらテコでも動きませんわよ”状態の桃花には何を言っても、睨んでも、
(ハリセンでどついても)効果が無いことは既に―――――「・・・チッ。」理解している。


盛大にため息を付きながら立ち上がり、風呂場へ向かう。
「ゆっくり入って来てね~んv」・・・・脳天気なかけ声に、こめかみをピクピクさせながら。

取り合えず三蔵を風呂場に行かせる事に成功した桃花は、上機嫌で髪を拭き始めた。
その階下では、八戒達が【今宵はとことこん飲み明かしまショー】を繰り広げていた。
そして――――――宿の外では。


「・・・この宿か?」「ああ、間違いない。三蔵法師が泊まってるってよ。」男達が数人、たむろしている。

「部屋は分かるのか?」「2階の一番端・・ほら、あそこだ。さっき、宿の女から聞き出した。」
「な・・バチとか当たんねーのかよ?」「何言ってやがる!神とか仏とか言ってる場合か?」
雨の中――――黒い合羽を着て、男達は三蔵が泊まっている部屋を睨み付けた。

「神の座に一番近い者・・・金目の物を持ってるに違いねぇ!!」唸る声が低く、闇にと消えた。


『・・・ふん。悪かねぇな。』三蔵には少々、狭い湯船であったが・・・体が温まるにつれて、
筋肉が緩和されていく感覚に目を閉じた。

風呂場に足を踏み入れた瞬間、湯船を見て眉間に皺が寄ったが『・・新しい湯、か?』
髪の毛一つ浮いていない綺麗な湯。『ちったぁ、気も使えるんじゃねぇか。』珍しく湯に浸かった。

桃花の推察通り――――三蔵は大概、シャワーで済ませる。
面倒くさいし、他人の入った湯など浸かる気にもなれないのだ。『たまには、な。』口元が綻んだ。

パチンッ―――桃花は部屋の電気を消した。ベットサイドのライトだけ点けておく。
三蔵が出てくる前に、寝ちゃえ!・・・ハリセンでどつかれる前に。そう考えて・・「あ。」
トイレ、トイレv『寝る前に行かないと夜中に起きちゃうモンね~。』
薄暗い中を、桃花はトイレへと入って行く。その機を窺い、部屋へ侵入する者が居るとも知らず。

そっとドアが開けられた。部屋に侵入する人影が4つ。

部屋が暗くなったのを見て・・・「どうやら眠ったらしいぞ。」勘違いして、侵入して来たのだ。

すぐにベットへ向かうが、「・・居ない?」「おい、風呂場に明かりが点いてるぞ!」
小声で囁き合う。
「・・眠っちゃいなかったらしい。好都合だ!とっとと金目の物を探すぞ!!」
男達は荷物を探り始める―――――好き勝手に散らかして、「なんだよ!?財布も無いぞ!?」

・・・八戒が三仏神のゴールドカードを持って行っている為、三蔵の荷物には財布も無いのだ。

「何だぁ?コッチの荷物は女物だぞ!?」三蔵法師が女を連れているとは、男達も思っていなかった。
「これは・・法衣、か。・・ん?」男が三蔵の法衣を探っていると「おっ・・こりゃ・・!」

【ガチャリ】桃花が悠々とトイレのドアを開け、電気が部屋の中を照らした―――「!?」

一瞬、男達が固まった。桃花も。しかし、桃花の眼に『金冠!?』男の手に、三蔵の金冠が有った。

「金冠・・・!ダメ、それは三蔵のっ・・ぅぐっ!!」慌てた男の一人が、桃花の口を押さえる。
「くっ!金目の物はコレだけかよ!?しょうがない、引き上げるぞ!!」「おい!コイツは!?」
ジタバタと抵抗する桃花を押さえつけ、「このアマッ!!」別の男が腹を蹴り上げた。

「ぐっ・・っっ!!」息が詰まり、気が遠くなる。「行くぞ!!」男達の足音が遠ざかるのを感じながら
『絶対っ・・・渡さないっ・・・!!』体を無理矢理引きずり、窓から外を見下ろした。

宿からそっと抜け出す影が4つ――――絶対、取り返す!!

         ガタンガタッ・・・窓を開く。風と共に、雨が部屋の中へと吹き込む。

2階の窓から、桃花が飛び降りた。

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