勝手に最遊記

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Stay


行く手には岩山が並び、荒涼とした景色は永遠に続くかのようだった。

「なー八戒、まだ町には着かねぇの?」
悟空がウンザリした声をかける。
「そうですねー。もうしばらく我慢して下さいね。」

「もうしばらくって先刻(さっき)から言ってんじゃん!」
「悟空ちゃん、どうしたの?」
「ほっとけほっとけ!この状況に飽き飽きしてるんだろ。」

悟浄の言うことは当たっていた。
とりあえず食事はしたばかりで腹も空いていない。
でも、変わり映えのしないこの景色を見て一週間になる。
特に刺客に襲われることもなく、淡々と過ぎていく日々に正直飽きていた。

「・・・にしてもヒマだよな。」
悟空の事は言えない。悟浄も体を持て余しているのだ。

「しょうがない、ちょっと色気が足りねぇけど・・桃花、オレといいコトしない?」
「絶っっ対っイヤ!!」断固拒否されてガックリする悟浄。

「・・・お前ら良かったな。暇つぶしが出来るぞ。」

三蔵の言葉が合図だったかのように、ジープが停車した。

「!!」

目の前に妖怪の一団が姿を現した。手には武器を持ち、明らかに戦闘態勢である。

「スゴ・・・何十人って居るよ?」思わず桃花が身を乗り出した。
「これで退屈から解放される~!」悟空と悟浄が飛び出す。
「桃花さんは、ジープに乗っていて下さいね。宜しくお願いしますよ、ジープ。」
「・・・。」
八戒と三蔵がゆっくり歩き出す。

―――――――――――――――――戦闘が始まった。

嬉々として戦いにのめり込んでいく悟空と悟浄。
冷静に敵を見極め、確実に仕留めていく三蔵。
やや後方で、桃花の居るジープには決して敵を近づけないよう
気を放ちながら距離をとる八戒。

『・・・みんなスゴイよね~・・。』

一緒に旅をして10日が過ぎようとしていた。
何回か“刺客”とかっていう妖怪が来て襲われたけど、
みんな鬼のように強いから・・・(相手が可哀想なくらい)

『自分にはそんな力はないし・・。』自分の不甲斐なさを実感し、思わず項垂れてしまう。
でも・・・・。


剣を振りかざす妖怪の一撃をかわした三蔵が、銃を構え――――・・・

「みんなー!頑張れ~!!」呑気な声援に三蔵が拍子抜けする。

「何なんだ、アイツはっ!!」三蔵が怒りながら妖怪に銃を撃つ。
「・・後方支援って事じゃないですか?」八戒が苦笑する。

「おー!桃花~!俺、頑張るぞー!」これまた呑気に応える悟空の背後から、妖怪が忍び寄る・・・が。
すかさず、「三節棍!!」アッという間に妖怪をなぎ倒した。

「じゃー俺も頑張るかっ!」悟浄も負けじと錫杖を振るい、妖怪が寸断されていく。

「ホラ、効果絶大ですよ♪」八戒の言葉に三蔵が頭を抱えた。


戦闘を開始して、30分もしないうちに妖怪の一団は壊滅した。

「ふーっ・・いい退屈しのぎになったぜ。」悟浄が煙草を吸いながら、満足そうに言った。

「ホントホント!・・三蔵、腹減った!」
「・・・お前な・・・。」
「悟空ちゃんって、充電式だもんねぇ。」

「ま、悟空の充電の為にも早く町へ着かないと・・。もう、食料も底をつきますしね」
「エエッ!マジで!?」ショックな言葉を聞いて、悟空が金晴眼を見開いた。

「穀潰しが一人増えたからな・・・。」
「・・・うっ・・・。」相変わらず三蔵の皮肉がキツイ。

「三蔵!そんなこと言うなよぉ~!」悟空が本気で怒る。
「桃花さん、気にしちゃダメですよ。癖ですから。」
「三蔵ってホント、女にキツイよなー。ホモか?」

スパーンッ!・・・最後に言った悟浄にハリセンを振るい、
「とっとと出発するぞ!」いつも以上に不機嫌な顔で言った。


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