勝手に最遊記

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Stay ―5―


自然の岩盤を利用したらしい。妖怪用なのか、鉄格子には丁寧なことに呪符まで張ってあった。

「あー、腹減ったっ~!」
「酒飲みてぇ!・・・可愛い娘ちゃんでも居ればな~。」
平然といつものように喋る悟空と悟浄に、牢番の男が呆れている。

「アンタ達・・捕まっているって事、分かってんのか?」
「あぁ?」
「別にぃー。コレくらいなら八戒の気で・・○●☆◎」悟浄が慌てて悟空の口を塞ぐ。
出ようと思えばいつでも出られるのを、村人に知られるのはマズイ。

八戒が牢番の男に
「僕らが乗ってきたジープはどうなりましたか?」
「ん?ああ、あの鉄の乗り物か?村の外に放置してるんだろ。」
「・・・そうですか・・。」八戒はそっと、胸をなで下ろした。
ジープが変化を解けば、妖怪の仲間と言うことで村人に殺されかねない。大人しく待っているのだろう。

「桃花、どうしてんのかなぁ~?」
「三蔵が一緒ですから・・。」
「三蔵が一緒だからヤバイんじゃねぇの?」
                   仲、悪いから・・・三人が言葉に出せなかった。


「あの女なら、明日死ぬぜ。」
 「!?」

牢に入ってきたのは眼帯を付け、飛(フェイ)と呼ばれた男だった。

「どういうことだよ?」悟浄が語気を荒くする。

「ハンッ!バカな女だよ。自分の言葉を村人に信用させる為に“証の儀式”を行うんだとよ。」
「本当かい?飛さん!まさか女があの儀式を・・。」牢番の男が目を丸くした。

「全く、頭領にも困ったもんだぜ!妖怪に肩入れする様な人間も、妖怪共々殺っちまえばいいのによー。」

「その儀式ってのは何だ!?」悟空が鉄格子を掴む。

「?・・お前・・!」牢番の男が驚く。
悟空は呪符のせいで、自分の手がシュウシュウ煙を上げているにもかかわらず、更に問いただす。

「何だよ!“儀式”って・・。危険なモノなのか?答えろよ!!」
「悟空!」「オイ!悟空、止めろって!」八戒と悟浄が悟空を鉄格子から引き離す。

「フンッ・・。教えてやるよ。“証しを立てる儀式”って言うのはな、
この村に伝わる伝統の儀式だ。男が一人前になったという証明のためのな。
大の男でさえ、一度じゃやり遂げられねぇ。まして女が挑戦するなんて、この村の歴史始まって以来だ。」

「そんな・・。」悟空が愕然とする。八戒と悟浄も心痛の面もちだ。

「安心しな。どーせ出来っこねぇ。一人で逃げ出すだろうぜ。・・・お前らを置いたままな。」

笑い声を上げながら、岩牢から出て行こうとした飛に八戒が、
「もう一つ、お聞きしたいことがあります。」「なぁんだ?」
「貴方は何故・・そんなにも妖怪を憎んでいるんですか?」飛の表情が一変した。

「妖怪が、何もかも奪っちまったからだよ!この目も・・オレの娘も!!」叫ぶように言って、出て行った。


「・・・で、晴掩さん。その儀式のやり方は?」
晴掩の家で夕食を振る舞われ、一息ついた桃花が聞いた。

「ま、明日になれば分かること・・。今、言う気はない。」

「では別に聞きたいことがある。」三蔵が晴掩を見つめ、

「悟空達を見ただけで妖怪と分かったな?どうしてだ。
そしてこの村を守る砦・・。警戒するのは分かるが、大げさすぎないか?」

晴掩が少し考え込んだが、
「・・・ボウヤ達が人間でないと分かったのは、“気”さ。人間にはない“気”・・。
長年連れ添った女房が妖怪だったんでね。それで判断できる。」

「奥さんが・・妖怪だったの?」
「20年も連れ添ったよ。・・あの日までな。」

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