勝手に最遊記

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Stay ―14―



「出発って言ったって・・じき夜になる。それに体中傷だらけじゃないか。今夜は泊まって行きなさい。」
晴掩が諭すように言う。

「こんな傷・・“勲章”ですよ!先を急いでるんで・・。」
「なーんでだよ!俺、腹減った~!!」
「桃花~。泊まって行こうぜ!酒や食い物や女の・・。」

三蔵が悟浄の頭をこづき、
「いいや!出発する。・・八戒、ジープを用意しろ。」
ハイと頷いて、八戒が村を出る。

続いて三蔵に引きずられるようにして、悟空と悟浄も村から出る。

「本当に・・もう行くのか?」
「ハイ!・・・お元気で。」桃花も村の外へ歩き出した。そして足を止め、

「あたし達、きっと昔のように人間と妖怪が暮らせるようにしますから!・・待っていて下さい!!」
そう言って駆け出していった。

その後ろ姿を見送り、晴掩は飛の傍らに立った。「・・・だってよ。信じて待つか。」

               “信じるに値する者”が言うんだから・・。


             飛の目から涙が溢れた。


村人達に見送られ、ジープが走り出す。

遠く彼方の地平線では、太陽が落ちようとしていた。

「うわっ!もう暗くなってきたよ~。腹減った~!」悟空が死にそうな顔をする。
「桃花~。何で・・・アレ?」

後部座席では桃花が既に眠り込んでいる。

「もう、寝たのか?」悟浄が煙草の煙を吐き出す。

「今日の事で一番疲れていると思いますから・・。」八戒が運転しながら、
「悟浄、ちょっかいかけないで下さいよ。」釘を差した。

「かけないっつーの!でもこんなに疲れてんなら、泊まらせてもらえば良かったんじゃねーの?」
なあ?と悟空と悟浄は頷き合う。

「・・・お人好しなんだよ。」三蔵がマルボロに火を付けた。
八戒が続いて
「あの飛さんて言う方は、まだ僕らのことを・・妖怪への憎しみをどうしたら
いいか悩んでいるようでしたから。僕らが村にとどまって歓待されていたら
彼は村に居られなくなったでしょうね・・。」

「そっか・・。それで桃花は・・。」
「・・・年上として気を使ってるってか?・・ぷ。見ろよ、悟空。」
?と、悟空と悟浄が桃花の顔を覗き込む。

「口開けて寝てるゾ。」「ま、マヌケ面・・・。」二人でコソコソ話す。


「・・・三蔵。久しぶりに気持ちの良い出発になりましたね。」
「・・・・・・。」煙草を吸っている三蔵は答えない。それにかまわず、
「彼女は、僕らにとって必要な・・人間との架け橋になってくれると思うんです。だからこれからも・・。」

「八戒。」「はい。」

「後で、アイツの傷を治してやれ。勲章何だか知らんが跡が残って、
“嫁に行けなくなった”って騒がれちゃ迷惑だ。」
「・・・はい。」八戒が柔らかく微笑む。

――――――俺なら間違いなく強行突破していたな。三蔵は紫煙を吐き出す。

余計な時間はかかるし、トラブルには巻き込まれるし・・・。
だが悪い気はしない。いつもなら助けても、妖怪とバレれば追われるように町から
飛び出していた。・・・・でも今回は違った。これがアイツの・・。

後部座席で悟空と悟浄が爆笑した。

「くっくっ・・・さ、三蔵、八戒、見て・・見てみろよ。」悟浄が笑い死にしそうな顔で言う。
悟空は笑いを越えて、声が出なくなっている。

三蔵と八戒が振り返ると・・・マジックで、ヒゲだの、ゲジ眉だの、花丸だの・・
落書きされた桃花の顔があった――が、それでも口を開けたまま眠っている。

「~ブッ!!」三蔵が珍しく吹き出しそうになる。
「ご、悟空、悟浄!そんな事して・・。」注意する八戒も笑い出しそうになる。


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