勝手に最遊記

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Family ―12―



三蔵は腰まで沼地につかりながら、悟空を取り込んでいる蔦の球体に近づいた。

「・・っ!このっ・・!!」
三蔵が素手で蔦をむしり始めた。

しかし、むしり取られた後から蔦は沼から這い出してくる。
三蔵はそれでもむしり続ける。        必死の形相で。

「悟空!・・このバカ猿!!目を覚ませっ・・・」そう叫びながら・・。


『ダレか    呼んでる   ?』

――――――――――――――混沌とした意識から、悟空が僅かに身じろぎする。

・・・・ココは・・・暗くて・・・・静かで・・・・安心していられるのに・・・


『ダレが     呼んでるの ?』
悟空の脳裏に、過去の出来事が廻り始めた。


小さな 小さな 自分

忌み嫌われる存在

金晴眼は 吉凶の 源 異端な 生き物

ただ 側に 誰か 居て 欲しかった

「何で、他の子供には“お母さん”が居るの?」―――――ダレに 問いかけたの?
「煩せぇな。・・俺に聞くな。」              
「“お母さん”ってナニ?」                  
「・・・知るか。俺にもいない。」             
「・・も、いないの?」                  
「ああ・・・。」                    


              知って  いる  このヒト を ?

「・・・とに、しょうがねぇなぁ!!」
悟浄が沼に飛び込んできた。三蔵と並んで蔦を引き千切る。

「・・・悟空!目を覚ますんです、悟空!!」
少し遅れて八戒も飛び込む。

        ナニ・・・?ウルサイ    ヨ?

悟空の目が僅かに開かれる。   光のない金晴眼が   三蔵達を見る。

悟空に目に、三蔵達は映っている。でも分からない。  ・・・・ダレ?

どこかで見たことが  アル?  微かな記憶が蘇る。

閉じこめられていた。永い 永い 時間。

         「このチビ猿!」

手を伸ばせば  届きそうな  広い世界   でも  出られない

         「しっかりしなさい!悟空!!」    

幾つもの時間を  只独りで  過ごしていた

         「・・・俺はお前の何だ!?」

悟空の眼が、開かれる。

         「俺は、お前の太陽なんだろ。」


      金糸の髪     紫暗の瞳     緋色の印


悟空の視線が、三蔵を捉える。

暗い 暗い 世界から   外へと連れだしてくれたヒト   

ずっと憧れていた  俺の  

          『俺の・・・・太陽・・・・』

「さん・・・ぞぉ・・。」悟空が手を伸ばす。太陽の手を取るために。

三蔵が悟空の手を取る。
           「連れ出してやるよ、しょうがねぇから。」

蔦の球体が、崩壊し始めた。

まるで柱を失ったかのように。


「・・早く沼からでましょう!」

三蔵は悟空を抱え、沼から這い出した。

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