勝手に最遊記

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Jealousy ―3―



三蔵は“激・不機嫌”だった。体の大きい悟浄が助手席に座り、三蔵は後部座席に
無理矢理座らせられたのだから無理もない。

「・・・あのさー三蔵。ちょっとの間だけなんだから、ガマンしてよね?」
三蔵の様子を窺いながら桃花が言った。
「この子が怯えるから、ねっ。」

「・・・フンッ」一瞥もせず、三蔵はマルボロを取り出す。

「ホーント、三蔵サマって心が狭いよな~。」
助手席から悟浄がからかいの言葉を投げる。

        ジャキッ・・・撃鉄を上げる音がした。
「ココからなら、外さねぇよな?」
後頭部に銃口をあてられた悟浄がホールドアップする。
「スミマセン・・。」「ケッ。」三蔵が銃をしまい、マルボロを吸い始める。


「ソイツさー。桃花に懐いてるよな~。」悟空が感心したように言った。

「そう・・だね。」確かに。喋りはしないのだが、ずっと桃花の腕を掴んだまま
離さない。今も隣に寄り添いながら、体を密着させている。

「あたしって、動物とか子供に好かれるのよね・・。」
あははと笑って見せるが、少女は反応しない。

「どうりで男にモテないはずだな。」
「・・・三蔵っ。あたしに憎まれ口きいて楽しいっ!?」
怒りで睨み付ける桃花の顔を見て、
「別に。本当のことを言ったまでだ。」クッと笑う三蔵に桃花はぶち切れ寸前。

くううぅ~~っ!・・・この男は~っ・・・はあぁぁ・・ガマンガマン。
『怯えてるこの子の前で、ケンカ出来ないしね・・・。』

今も桃花の顔を覗き込んでいる・・・・蒼い目。
その目からは感情が読みとれず、思わず目をそらしてしまう。

『・・・早く街に着いて欲しい・・。』
何だか心を覗かれているようで、落ち着かない。

少女が掴んでいる腕に、力を込めた。

ほどなくして、町に着いた三蔵一行は宿を取り
桃花と悟空が町の世話役へと少女を連れていった。


「・・・猿のお供だけでダイジョーブかよ?」
訝しげにハイライトを吸いながら悟浄が言った。

「ああ見えても、悟空はしっかりしていますから。」
ハイどーぞと、悟浄が吸い殻をその辺に捨てないように灰皿を渡す八戒。

「・・・・・・。」紫煙を揺らしながら三蔵は窓の外を見ている。

「三蔵?どうかしたんですか?」

「・・・・まだ分からん。」

「そうですね。」三蔵の一言で、全てを察したような八戒の言葉に
悟浄がハァッ?と言う顔をする。

「俺には全然話が見えないんですケド?」

「お前はイイ。馬鹿エロ河童。」
「っっだと、てめぇっ!?」悟浄がいきり立つ。
まーまーまーと、いつものように八戒が間に立ち、
「ちゃんと僕から説明しますから。」笑顔で悟浄を沈黙させた。


『ど~しよ~・・・。』はあぁ~っと桃花は大きなため息をついた。

町の世話役に少女を連れていったのだが、この町の住人ではないらしい。
地図で確認もしたが、近くに町や村もない。
どうやらドコか遠いところから連れてこられて、逃げ出したようなのだ。

「この町でしばらく預かろうか?」世話役の人が、桃花達が旅の途中だと知って
親切に申し出てくれたのだが、肝心の少女が首を振らない。

相変わらず喋ろうともしない少女を心配して、
お医者さんへと案内してくれたのだが
診断は「精神的ショックによる記憶喪失・言語障害」・・・ではなかろうか?
と言うことだった。

ハッキリしたことは医者にも分からないらしい。
只、話の内容は理解している。しかし、本人は喋らない。
ペンを持たせても文字を書くことが出来ない・・・その状況を見ての診断だった。

相変わらず桃花にベッタリの少女。嫌がる彼女を、
無理矢理世話役の家に置いてくる訳にもいかず、結局連れて帰ってきてしまった・・。

三蔵の怒りが目に見えるようだ・・桃花はまた、ため息をついた。

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