勝手に最遊記

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Jealousy ―13―



「ナニ・・・泣いてンだよ?」

「あ・・アレ?」知らず知らずのうちに涙が頬を伝っている。

「あぁっ!?悟浄が泣かしたのか!?」悟空が勢い込んで聞く。

「バッ・・!ちょっと黙ってろ、悟空!・・・なんだよ、らしくねーぞ?どうかしたのか??」

悟浄に優しく涙を拭われて、堰(せき)を切ったように涙が溢れ出す。

「っっっっっ~!・・・ご・ごめっ・・・。」
言葉にならない・・・唇を噛みしめて堪える桃花を静かに抱き寄せ、

「女が泣くのは苦手なんだって・・・ホラ、俺の服で拭いちまえ。なっ?」

・・・・悟浄君は優しい。
軽口を叩いたり、セクハラまがいの事もするけど、とても気を使ってくれる。
いつだって、広い心で温めてくれる。

「桃花っ!・・・どうしたんだよ、腹でも痛いのか?なんか悪いトコロでもあんのか?」

・・・・悟空ちゃんはとても大きい。一番年下だけど、いつも元気をくれる。
真っ直ぐな心と目で、あたしを見てくれる。

「・・・ジープを止めましょうか?」
・・・・八戒ちゃんはいつだって誠実だ。静かに見守っててくれる。
無茶をしないように、心配しながら。

「・・・必要ねーだろ。」

・・・・三蔵は面白い。言ってる事と、する事が反対で。
守らないって言いながら、結局守ってくれたりする。


                 【ち―――んっっっっ!!】

「あああ~ぁっ!!俺の、俺の服で鼻をかんだなああぁ~っ!!」

「あーっ!スッキリした~ぁ!!さんきゅー悟浄君!」

「さんきゅ~って・・・トホホ。」サッパリした顔の桃花とは正反対に、情けない顔の悟浄。

「だって、自分の胸で拭けって言ったじゃん?」
「そりゃ・・・「だよなー!カッコつけて言ったよな~!」
「この猿っ・・「なんだよ、エロ河童!」

またもや険悪な雰囲気を漂わせつつある二人を尻目に桃花はクスクスと笑う。

「桃花。大丈夫ですか?」         『失いたくない』

「もう、痛くないのか?」          『失いたくない』

「腹じゃねぇだろ?ったく。」        『失いたくない』

「・・・お前ら煩せぇぞ。」          『失いたくない』

「だ~いじょうぶっ!!なんかー感傷的になっちゃって!」




                  『きっと     失う』


でも、

「・・・幸せだなぁって思ったんだよ。」

「湧いてんじゃねぇよ、バカ女。」


「三蔵。」                  『今だけ   は』

「あぁ?」                  『今だけ   は』

「・・・くそハゲ。」

「ぶっ殺すっ」    スパ――――ッン!!


「いいいっった~っ!女の子に何すんのよう?」「女の子って年か、ボケ!」
「あたしの心は10代なのよっ!」「何が10代だっ!四捨五入すりゃ30代だろ!?」
「キィ~ッ!女の年齢は切り捨てなの!」
              「・・・あの・・助手席で暴れないでくれます?」
「何が切り捨てだっ!算数もできないのか?バカ女!!」
「できるわよっ!大体三蔵が・・・キキキキッッッ~ッ!!!!!

「きゃあっ!」「うっ!?」

ジープが突然停車し、後部座席で立っていた桃花が助手席に転がり込む。

「・・・八戒っ」「八戒ちゃん?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・ジープの上で、喧嘩しないでくれますか?」


史上最強の微笑みで・・・・・八戒が言った。


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