勝手に最遊記

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Blind Date ―14―


そんな顔するから、悟浄君にハゲ・・・」桃花は口を噤んだ。

既に三蔵の手に、ハリセンが握りしめられているからである。

「誰が・・・ハゲだって?」ジロリと睨む三蔵。
「なんでもないですぅ・・。」思わず首を竦める桃花。『只でさえ、今日は叩かれ過ぎだって・・くっすん。』


「俺はそろそろ寝る。出て行け。」シッシッと犬を追い払うようなポーズをする三蔵。
「ハイハイ。判ってるって。」ササッとお茶の片づけを始める。


出て行きがてら、
「・・・三蔵。明日もお祭りあるんだって!」「それが何だ。」三蔵は素知らぬ顔で新聞に目を落とす。

「明日、みんなで行こうよ。」「・・・断る。」
「えーなんでぇ~?」口を尖らす。
「観光に来てんじゃねぇ。明日は必要な物揃えたら、出発だっ。」

桃花はニィ~ッと笑い、
「お祭り中は、一般のお店って開いてないんだって!!」「なにぃ!?」三蔵が顔を上げる。

「だ・か・らっ♪結局、もう一泊しなきゃダメなんだから・・。一緒にお祭り行こう。」
はぁ~・・・とため息を付いて、
「俺が行った所で、面白いのか?」
何故、俺を連れて行きたがるんだ?不機嫌な顔をして廻るだけなんだぞ・・?

「もちろん!面白いよっ。・・・どうしてもイヤなら諦めるけど・・。」三蔵の顔を伺う桃花。

「・・・・チッ。今日みたいな事があっても、余計煩わしいしな。しょうがねぇ。」
「良かった~!悟空ちゃんも喜ぶよっ!!あ、今食べたお饅頭の事は悟空ちゃんに内緒にしててね。」
「なぜだ?」

「そのお饅頭、行かなかった三蔵の為のお土産だったから、悟空ちゃん達にはあげてないの。
・・・絶対、内緒にして。」
バレた時の事を考えると恐ろしい・・・食べ物のことだけに。

「・・・判った。」
「うんっ!・・・じゃあ明日、楽しみだねっ。お休み~!」満面の笑顔で桃花が出て行った。


遠ざかる足音を聞きながら、三蔵は残った饅頭の欠片を口に放り込んだ。
「・・・甘ぇ。」
そう言った口元は、僅かに綻(ほころ)んでいた。




                       第六話   完

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