勝手に最遊記

勝手に最遊記

Making ―9―



草が、土が、山が、空気が――・・・朝日を浴びて、本来の姿を眼に映し始める

八戒は身じろぎもせず、只眺めていた。

女は――春李という名前だった――眠っている。
昨夜、落ち着いた彼女から話を聞いた。

自分にとって、最後の契りの儀であると言う事―
想い合う相手が山猫族に居ると言う事―
それでも子孫繁栄のために、望まぬ相手の子供でも作りたかったと言う事―


「・・・もう、眠って下さい。」
一通り話を聞き終えた八戒は、彼女に布団を勧め
自分は割れた窓から一晩中月を眺めていた。




        『花喃・・・君だけを愛しているよ・・・。』

自分の体を抱き締めながら――――――――――――


「あ・・私、戻ります・・。」
布団から起き上がった春李が、八戒に会釈して出て行った。

「もう、朝なんですね・・。」
一人部屋に残された八戒は、軽く目を瞑り、眠りへと落ちていった―――・・・。








「ふぁあ~あっ・・・。ちょー眠てぇ~っ!」
夜も明けきらぬうちから叩き起こされた悟浄が、特大の欠伸をする。

悟空に至っては、立ち上がったものの、アッチにぶつかり、コッチにぶつかって、
フラフラと夢遊病者の体たらくである。

三蔵は至って平然と、銃の手入れをしている。


「みんなー!朝ご飯の準備が出来たよ~っ!」
桃花が他の山猫族の少女と共に、食事を運んでくる。

「・・!メシだメシ~っ!!」
眠気はどこへやら、悟空が初めて覚醒したかのように飛び上がる。

「うーん。俺はコーヒーだけでイイかも?」
早く起きすぎて、食欲の湧かない悟浄が困った顔をする。

「だぁめっ!今日は大変なんだよ?朝食はシッカリ取らないと。
ホラ、三蔵も朝ご飯食べて。」

「・・・いらん。」一瞥もせず、三蔵が言う。
「ダメって言ったでしょ!?そんな細っちー体して!」
「羨ましいのか?」
「・・っ!う、羨ましいわよ!って、んな事言ってるんじゃなくって・・!」
「俺はお前のように、ムニムニムニムニと肉が付くのか不思議でならんがな。」
「うきゃーっ!言ってはならない事を・・・っ!」
桃花と三蔵の不毛な言い争いに、山猫族の少女達も笑いを堪えている。

その事に気付いた桃花が
「ま、まー・・とにかく朝食を食べて?
この女の子達も一緒に作ってくれたんだよ。」
そう言われれば、三蔵としても箸を付けない訳にはいかない。

「・・・・・・。」無言で食べ始めた三蔵。

「じゃーまー俺も食うか。」
少女達にウィンク一つ飛ばして、悟浄も食べ始める。

悟空は・・・とっくに食べ始めていて、もう終わろうとしていた。

『・・・はぁ。八戒ちゃんが居ればな~。』心で秘かにため息を付く。
八戒ちゃんが居てくれたら、もっと簡単に三蔵達を丸め込められるのに。

『八戒ちゃん・・大丈夫かな。』
未だ姿を見せない八戒に、桃花は不安が募った。

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