勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Separation







                 襲いかかる刺客達を薙ぎ払い、無数の罠をかいくぐり・・三蔵達は、ひたすら西へ進む。



ジープの助手席で、三蔵は紫暗を瞑り・・・・・考えを巡らせていた。



『・・・・・ハカセ、か。』知らず知らずのうちに眉間に皺が寄る。





悟浄が、カマキリ女に栄養源としてカプセルに閉じ込められた時―――――――

「あ゛~っ!!腹減ったぁ!!」「ホント・・・お腹空いたよね・・・。」「俺もヤニ切れで死にそう。」
「煙草?悟浄君は禁煙できてイイじゃん、ね?」「桃花・・ソレって慰めてんのか?」





サクラと呼んだ少女が、式神と科学の融合体で桃花を襲った時――――――――

「なっなっ!八戒!!もうすぐなのか?」「悟空ちゃん。ずーっと、それバッカりだね・・。」
「猿は脳みそが足りねーから。」「なんだとぉ!エロ河童!!てめぇだって腹減ってるクセに!」
「あぁ!?泣かさてーのか!?」「も~っ!!止めてよぉ!イライラしてんのは判るから!」






悟浄と桃花を襲った“人間”が、妖怪に変化した時―――――――――――――

「だって桃花!悟浄が・・「んだよ?ホントの事言われて怒るからだろ?」「悟浄君!またケンカ・・。」
「あっったまきた!!今日こそぶっ飛ばす!!」「ヘッ!やれるモンならやってみろっての!」
「あたしを挟んでケンカするなっっつーのっ!!」「うわっ!桃花が怒ったぁ!」






樹の精と呼ばれる姉妹に汚呪を施し、実験材料として扱った――――――ハカセ。

「イライラしてるのは、あたしもだってーのよっ!?」「俺じゃねー!猿が小さい事を・・。」
「だから猿猿言うなって!この赤ゴキブリ!触覚持ち!!」「てめっ!ヒトが大人しくしてりゃ・・。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【ぶちん】




「煩ってぇんだよっ!!てめぇらああ!!!」ガウンガウンガウンガウンガウンッガウンッ
「「「きゃあーっ!!」」」

「いやぁ。今日も賑やかですねぇv」一人、八戒が穏やかな笑みを浮かべた。次の瞬間、


【キキキキキキキィッ――――――――――――「「「「!!?」」」」






突然のフルブレーキに、三蔵が勢い余って後部座席に転がり込み、桃花が押し潰された。
「ぎゃっ!!痛いっ・・三蔵!どいてよっ!」「俺だってなっ・・好きで・・クソッ!八戒!!」

ぎゃあぎゃあと騒がしいのは桃花と三蔵だけ。見れば悟浄と悟空がポカーンと口を開けて呆けている。


「・・・これはこれは・・・。随分とお久しぶりですねぇ。」八戒の口調が些か固い。
「・・あぁ?」体制を立て直した三蔵が前を見れば、ジープの前にヒトが立ちはだかって居る。


「・・・・・・・・・・よぉ。」 




ジープの前に立つ、そのヒトは。

素晴らしく美形で。長く艶やかな黒髪を結い上げている。
体に纏(まと)った黄金の装飾から、かなり高い地位の身分で有る事が伺い知れる。
・・・・上半身は、 裸同然だが。




三蔵が眉間に皺を寄せつつ、「八戒。知り合いか?あの露出狂。」事も無げに言い放った。
「あはは。三蔵、確かに露出狂に近いですけど、あの方は観世音菩薩様ですよ。」
「アレがか?」三蔵と八戒の失礼極まりない会話に、


「・・・相変わらずな対応だなっ。」菩薩が握り拳を固め、
「こっこの無礼者がっ!」後ろに控えている次郎神が真っ赤になって怒鳴った。


「な、悟浄。アレが神様ってヤツか?」「おーよ。お前は・・見てなかったんだよな?」
ジープから皆がゾロゾロと降りて来る。
特に桃花と悟空は、興味深そうに菩薩を(何となく)遠巻きに観察している。
以前、悟空の暴走を食い止め、三蔵の命を救った菩薩の話は聞いていたが、見るのは初めてである。


「本当に・・・あのヒトが“神様”なの??」信じられないと言った様子の桃花に、
「マジだって。確か・・・“自愛と淫猥”の象徴だっけかな?」答えながら首を捻った悟浄に
「ソコッ!!誰が自愛と淫猥だっ!!」菩薩のツッコミが入った。


「ごほん・・~とにかくっ!!畏れ多くも、天界の五大菩薩で有らせられる観世音菩薩様であるぞっ。
皆の者、頭が高い!!控え・・ぃいっ?」次郎神がここぞとばかりに口上を並べ立てたのだが、
既に三蔵が片膝をつけて、頭(こうべ)を垂れていたのに驚いた。

「東亜玄奘三蔵法師で御座います。お目にかかれて光栄至極の極み・・・・。」
三蔵の口からスラスラでる口上に、菩薩が苦笑した。
「止めろって!お前の口から、思ってもいない口上なんざ聞きたくもねぇよ。普段通りに話せ。
その方が“らしい”だろ?金蝉・・じゃねぇ、三蔵?」

フフンと、不敵な笑みを浮かべる菩薩の顔をジッと見ていた三蔵だが、
「・・・・判った。で?俺達に何の用があるってんだ?」ガンを飛ばさんばかりの眼で睨み付けた。

ぼっ菩薩様に何て口のききかたを~っ!!後ろで右往左往する次郎神に構わず、

「なーに。“忠告”ってヤツをしに来てやっただけだ。」ニヤリと菩薩が笑った。













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