勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Separation―10





『行かなきゃ・・・。』 大桷の、元に。



あの日―――――妖怪達が暴走した日。 自分を救い、自らの命を投げ出した大桷・・・・・。


生きていた





何故?  ううん・・・・そんな事、どうでも良い。    『救わなきゃ。』




彼を救えるなら――――――何だって、する。  それが例え・・・大桷を、殺すことになっても。




あたしの命と引き替えにして、殺す。




「・・違う。」フッと笑みが浮かぶ。   大桷を殺して、自分も死ぬ。それで、ケリを付ける。あたしの人生。






この村に来た時から―――――――――何度となく、フラッシュバックした光景。




“妖怪に脅されて・・・娘を貢ぎ物に・・・・”  眼を瞑って首を振った。「・・こんなのは、もう嫌だ・・。」





思い返したくない、記憶も・・・全て、捨てて。 生まれ変われたら、良いのにね。




キュッとブーツの紐を結びあげた。



『悟空ちゃん・・・ゴメン。』 健やかな寝息を立てて眠る悟空を、覗き込んだ。

悟空と同室が一番、都合が良かったのだ。 他の三人なら、気付かれただろうから。


訳は話せない。 話したく、ない。






大桷の所へ行けば・・・・過去が、判ってしまう。 『それだけは・・。』 それだけは避けたい。





『皆が大事にしてくれてたから・・・。』 こんな、自分の事を。



裏切りたくない。 裏切れない。





一緒に旅をしていた時のまま。“桃花”だけの記憶を持っていて欲しい。 あたしの・・・我が侭を・・・・




『どうか・・許して。』すぅっと、涙が頬を伝っていった。





そして







『悟空ちゃん・・・大好き、だったよ。』
“俺が絶対、守ってやっから!” “子供扱いすんなっての!” “桃花っ!大丈夫か!?”





温かい、悟空ちゃん・・・・「本当に、大好き。」・・・・・そっと。 金鈷に、頬に。 キスを落とした。





「・・・んぅ・・・。」僅かに身じろぎした悟空に微笑んで、ドアを開け、「じゃあ、ね。」扉を閉めた。






閉めた扉の前で、一呼吸おき、『・・・悟浄君・・・・八戒ちゃん・・・。』右隣の部屋の前に立った。



一目、顔を見たいと思うが・・・『無理、だね。』苦笑した。



人や妖怪の気配に聡い、二人の部屋に入るわけには行かない。それは三蔵とて同様だ。




部屋の前の扉に手と。 額を押しあてた。




『二人とも・・・ありがとう。大好きだよ・・・。』





心配性で、過保護な保父さん。
“桃花、お嫁に行けないですよ?”“全く・・・目が離せませんねぇ。”“危ないですよ!僕の後ろに居て下さいね。”




優しくって、楽しい悪友。
“ヤバイぜ桃花~っ!”“こーゆーのは男の仕事ってヤツなワケ。桃花チャンv”“コイツに手を出すんじゃねぇよ!”


「ありがとう・・・・。」 小さく、呟いて。 扉から離れた。





徐々に明るくなっていく空間。 狭い廊下に、朝日が忍び込んできた。


なるべく足音を殺して、歩いて行く。 『この角を曲がれば・・・玄関。』 玄関の手前に、三蔵が泊まる一人部屋がある。





『三蔵、おかしく思ったかな・・。』



ハカセの事も、記憶の事も、判らないと言い張って・・・・なるべく、三蔵と目を合わせないようにしたのだ。
あの紫暗の瞳で見つめられると(睨まれると)、心を見透かされているような気になるから・・・





『ゴメンね、三蔵。』 そう思いながら、角を曲がった。





























© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: