勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Decision




明るい朝日が満ちあふれている、部屋の中。


ポツン と。


ベッドに座り込んでいる悟空。

目の前には、使われた様子のない、無人のベッド。

                           自分以外、人の気配がしない部屋の中。 『・・・っ!!』


弾かれたように、部屋から悟空が飛び出した。


【バアンッ―――――――三蔵の部屋の扉が開かれた。

既に、八戒と悟浄の姿が在った。 悟浄は煙草を吸いながら振り向きもせず、八戒は真顔で悟空に視線を向けた。


そして―――――――――――・・・・三蔵は、不機嫌面で新聞を読んでいる。


「い・・居ない、んだ・・。」青ざめて、息の荒い悟空。「居ないんだってっ・・!俺が寝てる間に浚われたのかもっ・・!!」

「悟空、落ち着いて!」尋常ではない様子の悟空に、慌てて八戒が駆け寄る。「居ないんだよっ!何でっ・・!!」




                     「――――――っ・・何でお姉ちゃんが居ないんだよっ!金蝉っ!!」 

「金蝉・・・?」八戒がハッとした顔で悟空を見る。
「“お姉ちゃん”って・・・お前・・・・。」悟浄も不審気に悟空を伺う。いくら桃花と姉弟のように仲が良くても、
そんな風に呼んだ事など無い。子供扱いされるのを嫌っているのだから。

青ざめたまま、「・・・あれ?俺・・・どうして・・・。」思わず金鈷を押さえる。「判んねぇ・・けど。でも・・。」


・・・・・・既視感(デジャ・ビュ)のように感じた光景。 一人ぼっちで。空っぽのベッド。
居るはずなのに・・・突然、居なくなったのは・・・・・「アイツは、出て行った。」 

「・・な・・なに、言ってんだよ。んなっ・・「出て行った、と。言っている。」新聞から顔を上げ、悟空を睨み付けた。
「・・八戒っ!・・悟浄っ・・!?」―――――悪い冗談だよな?・・・そう願って。二人の顔を見れば、沈痛な表情が真実だと告げていて。


「・・・僕らも・・・気が付きませんでした。」八戒が唇を噛みながら、「恐らくは・・昨日の女に関係すると思うのですが。」
――――女の記憶。自分達には“何も判らない”と言っていたが・・・桃花が出て行ったのは、その記憶が原因だとしか考えられない。


「・・・何処に、行ったんだよっ・・!」低く、吐き出すような声で。悟空が拳を握り締める。「―――東の教会・・なんじゃねぇ?」
煩そうに髪を掻き上げ、「アソコに妖怪達が居たんだろ?あの女関係っつったら、ソコしか思いつかねぇし。」
チラリ、と。三蔵に視線を送る。  

「そっか・・東の教会・・・。」悟空の顔に安堵が広がる。「じゃ、早く・・「行かねぇぞ。」バサッと新聞を畳んだ。

「・・・三蔵・・・?」さっさと荷物をまとめ、一人、扉へと向かう三蔵が「貴様らも早く支度をしろ。」言い捨てて出て行く。
「ちょっ・・三蔵っ!」背中を追った悟空に、「・・・・あの女は、自分から出て行ったんだ。自分から、な。」 

「・・だっ・・て、桃花独り・・。」言い淀んだ悟空に、「じゃあ何か?あの女が、俺達が来るのを喜ぶとでも?」皮肉に笑い、

「・・・あの女が。自分で決めて、出て行ったんだ。俺らに追っかける理由は無ぇ。」「・・・っ!」
――――バタン・・扉が、閉められた。

「・・は・・八戒・・。」縋るような瞳で悟空が振り返れば、「・・最初、旅に同行させる時に“いつでも出て行って良い”と。」
淋しい微笑を顔に浮かべながら、
「・・ですから。どんな事情が有るか判りませんが・・桃花の意志を尊重しなければ。」翡翠の目を閉じた。

「桃花が・・・選んだんだよ。俺らから離れるってな。」悟浄が自嘲的に笑い、「だから、納得しなきゃあ、ってな。」
グッと煙草を指で押し潰した。・・・熱いはずなのに。


『・・・・・桃花の意志を、尊重する・・・?桃花の為、なのか・・?』

           納得できないまま―――――・・・・ジープは出発した。




                  桃花は東へ  三蔵達は西へ と・・・・












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