勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Decision―2




いつもなら、騒がしいはずのシートの上が――――シンッ・・静まり返っている。

三蔵や八戒はもとより・・・・悟浄も悟空も。言葉を失ったかのように、黙りこくっているのだ。


『・・・煙草でも、吸うか・・・。』ポケットを探り、ハイライトを取り出す。火を付けて、体を半分、外へと向けた。
『・・・って、何やってんのかねぇ俺は。』クッと苦笑が漏れた。

「・・・?何だよ、悟浄。」一人笑った悟浄を、悟空が怪訝そうに伺う。「別っつに~ぃ?何でもねーよ。」
金精眼から目を逸らし、スウッと肺まで煙を吸い込んだ。

―――――――狭い後部座席に三人が、無理矢理座っているのだ。煙草を吸わない桃花は煙が苦手で、
「もおぉ!匂いが付くし、火の粉が飛んだら、どーすんのよっ!」怒るので、自然と煙草を吸う時には、外へと体を出すようになっていた。

『こんなクセ、付いちゃってやんの。』よいしょっと、座席に座り直した。『・・何だか落ち着かねーな。』紫煙と共に、溜め息を吐き出した。

・・・・半日も経っただろうか――――――・・・「次の町で、ジープを止めます。」八戒の声に、三蔵が紫暗を開けた。

「・・ざけんな。昨日の話じゃ、もう一つ先の町まで走る予定だろうが。」村で僅かながらでも補給出来たのだ。
先を急ぐ身としては、少しでも距離を稼ぎたいのが本音だろう。

「ええ。でも予定は未定ってコトですよね?ジープの調子も良くありませんし、次の町で止まります。」
―――有無を言わせない、八戒の態度。にこり、ともせず。真っ直ぐ前を見たままである。

「・・・チッ!」不機嫌で顔を歪ませた三蔵。『・・ったく、性質(たち)が悪ぃっ・・!』
ジープの飼い主は八戒なのだから、強硬に出られると三蔵ですら、退かざるおえない。

激・不機嫌な三蔵の視線を感じながら・・・・『悪あがき、ですかねぇ。』密かに嘆息する。

――悟空には、ああ言ったものの。八戒自身も納得していない。
『・・・いつでも好きな時に旅から抜けて良い、って言いましたけど。』・・言わなければ良かった。いや、それよりも。

『菩薩の忠告通り・・・あの村に寄らなければ。』後悔の念が押し寄せる。少し、いや、かなり無理してでも。
先の町までジープを走らせていれば・・・・『そんな事、出来ませんでしたけどね。』

――――少しでも、桃花との距離を開けたく無い・・・その想いから、一番近い町に滞在するのだ。

『・・本当に、悪あがき ですね・・・。』無意識に、ハンドルを強く握っていた。


―――――賑やかな町並み・・・・あの村とは大違いの様子に、悟浄達も面食らう・・・。

「随分と、様子が違うんじゃねぇ?」悟浄が辺りを見回しながら、「・・ったら、・・・。」言いかけて言葉を切った。
『今さら言ったって、仕方ねぇっつーの。』思いを振り切るかのように、首を振った。
―――――あの村に寄らず、この町までジープを走らせてりゃ・・・・なんてな。


「今夜の宿はどーするよ?三蔵サマ。」不機嫌極まりない三蔵へ、顎をしゃくって問いかけた。
「その辺ので良いだろう。」煩わしい事はご免だ、と。「八戒!適当に決めて来い。」我、関せずの態度を取る。

「判りました・・・。では、あの宿にでも。」適当に。 目に付いた宿屋へ足を運んだ。

まずまず小綺麗な宿、だろうか。 受付に行って、「スミマセン。部屋を取りたいのですが・・空いてますか?」
受付の女性が、人当たりの良い笑顔を浮かべながら宿帳を差し出し、
「はい、部屋は空いています。何人、泊まられますか?」「5人何ですが。」「それなら、二人部屋と三人部屋になります。」

はい、と。鍵を差し出した宿の女性に、「っ・・スイマセン!四人なんです。」慌てて取り繕う。笑顔がいつもよりぎこちない。
「え?あ、はい。どうぞ。二人部屋が二つになります。」「・・どうも。」自然に苦笑が浮かぶ。


『・・・・いけませんね。吹っ切らなければ。』軽く頭を振りつつ、三蔵へ宿が取れました、と。報告に行く八戒。

――――――――――――そんな八戒の様子を、悟空が見つめていた。











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