勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Pain―Past-3











「おいっ!菩薩っ!!俺達を過去に送り込んでどうしようってんだ!!」

夕暮れの空に向かい、三蔵が怒鳴る。


痛いほどの静けさが、暫し三蔵達を包む。




「・・・返答なし、ですか」そう八戒が呟いた途端、「―――――――っあっ?!」


周囲の風景が歪む―――――――「なっ、なんだぁっ?!」














それは、まるで映画の早送り。




一歩も動いていないのに、断片的な風景が流れていく・・・










「良いでしょ?お母さん!」「・・・可愛い赤ちゃんね・・」「名前は・・」



「良いのよ。私はもう、子供が産めないから・・・」「お母さん、私を産むのに無理して・・・」



「名前は、“夏花(カホォン)夏生まれだから!」「俺達は家族だ。誰が何を言おうとも、な・・」








「―――――えっ?桃花じゃ・・ないのか?」







戸惑いの声を悟空が上げた。






『名前が違う?』 その疑問を考える間もなく、風景がどんどん進んでいく。








“夏花”と名付けられた赤子はすくすくと育っていく。






優しい両親と姉に愛されて、兄のように少年が寄り添う。





春に笑い、夏に遊び、秋に山を駆け抜け、冬に雪を愛で・・・・赤子は、少女になった。









「・・やっぱ、桃花だ・・・」









漆黒の髪、黒曜石のような瞳・・・・・今の面影を宿す、明るい笑顔の少女。






                    “おねぇちゃーん!”









姉と、幼なじみの少年を追い掛けて、向日葵畑を駆けていく。










三人の笑い声が、山々に響く・・・・幸せな、子供時代。












「なんつーか・・・桃花の原点、って感じだよな」悟浄が嬉しそうに笑う。




あの“脳天気さ”とも言える明るさは、ここから来ているのに違いない。


自分達には与えられる事の無かった“幸せな子供時代”が、桃花には有って。
自分達がどうして桃花を側に置いておきたいのか、その一因が判ったような気がする。





――――――――――――――風景が、一転する。







「・・お母さん!お母さんっ・・!!」




元々、体の弱かった母親。




どうやら無理をして、萄花産み、二度と子供を産む事が出来なかった女性(ひと)。


萄花を愛し、また拾い子の夏花を分け隔て無く育てた母・・・・


摘まれた白百合が萎れるように・・・・・・長くはない命を終わらせる・・・


「・・二人とも、仲良く・・・夏花?萄花を・・お姉ちゃんを宜しくね?あなたより頼りないところがあるから・・」
「嫌ぁ!お母さん、お母さんっ・・!!」「お母さん・・・!」




泣き崩れる萄花。寄り添う小瑯。夏花は唇を噛み締めて、震えていた。



「最後に一目、お父さんに逢いたかった・・・」「そうよ!お父さんが帰ってくるまで待って!死なないで!」


母親は、すまなそうに笑みを浮かべた――――――――「・・ごめん、ね?」




静かに目を閉じる―――――――――――――「お母さ・・・」







―――――――――――――――少女の号泣が聞こえた。












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