勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Pain―Past-8












不気味なほどに静まりかえった、村。




百眼魔王の話は伝えられ―――――――村長の家にて話し合いが行われていた。





「・・結局、大人しく差し出すしか手がない・・・」

「そんな、萄花を犠牲にするなんて!」

「だったらどうする?皆殺しにされるのかっ?!」


・・・・堂々巡りの話し合い。


気立てが良くて、優しくて。
美しい萄花は、いわば向日葵の村の看板娘でもあった。

向日葵の行商で成り立っているこの村が、そんな娘を犠牲にしたと有っては
例え百眼魔王の手から逃れられたとしても・・・悪評判が立ってはその先の生活が危うい。


誰もが犠牲にはしたくない。出来ない存在なのに・・・・「・・・妹じゃ、駄目だろうか」




ポツリと。 誰かが呟いた言葉が響き渡った。




「妹って・・・夏花ちゃんをかい?!」
「ちょっと待っておくれよ!あの子じゃ・・役不足だろう?」
「百眼魔王は萄花ちゃん目当てで来るんだろうし・・」

ざわめく村人達。


「だから、萄花はもう村を出てしまってると言ったらどうだ?」
「俺達がこの話を知っている、なんて手下達は知らない・・・」
「萄花はこの村の大事な娘だ。だが、夏花は・・・」



――――――――――――――――――――何処の誰が産んだかも判らない、娘。




「だっ、だからって・・夏花は良い子なんだよ?皆、知ってるじゃないか!」
「俺達も辛いさ!だが、誰かが犠牲にならなきゃならん。それとも何かい?アンタん所の娘を差し出すのかい?」


そう問われて。・・・・・・・反対を唱える者などおらず。




「良いんだよな?それで。・・・姉妹として育てたアンタも辛いだろうが・・萄花が犠牲になるよりは、なぁ?」

ポンッ、と肩を叩かれた父も―――――――――俯いたまま。















そっと、密やかに――――――――悪夢の歯車は、・・・・・確実に廻り始める。














「・・なっ、なんだよコレっ!!なんで桃花が・・!」

「落ち着け悟空・・・コレは“過去”だろうが」


「まぁな。過去だけどよ・・おい八戒。お前、ホントに大丈夫かよ?」

「ええ、まぁ・・・」



悟浄が八戒の様子を伺う。

蒼白になった顔色を隠すように・・いや、直視できないのだろう。過去の情景から目を逸らし、項垂れた体は小刻みに震えている。


「・・・きっと、花楠が連れて行かれた時も・・・こんな感じだったんだろうな・・と思いまして」

無理に微笑んだ顔が痛々しくて、悟浄は煙草を噛んだ。
『・・・ったく、何んてモン見せるんだっつーの・・』






焦燥と、喪失と、哀しみと、



どうしようもない、過去の“事実”に。





―――――――――――恐れを感じ始めていた・・・・・


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: